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巻頭言
小特集号によせて*
志摩政幸**
 
 
 本号は、平成14年度「YME(Young Marine Engineers)使節員海外派遣事業」で派遣されたYMEの報告と、去る3月26日に東京商船大学越中島会館で開催された帰朝報告・討論会の概要を載せている。当年度は、前年度と同様、「研究等調査交流」と「海外研究集会派遣」の2つの形態の海外派遣が実施され、前者ではそれぞれの調査項目を携えてEU諸国へ、また後者ではマリンエンジニアリングとその境界領域の国際会議等での研究発表を直接の目的として米国、メキシコ、韓国等へ派遣された。派遣員数は、夫々4名づつであり、前者の平均年齢は33.5才、後者は更に若く、学生員を含む平均年齢29才のYMEである。
 当学会活性化の長期戦略の柱の1つとして、日本財団の助成を得て平成12年度から開始された本事業も今回で3年目となり、派遣者の総数は20名にのぼる。この数は、仮に40才未満をYMEと定義すると、全YME会員の約3.5%に相当する。今年度はYME派遣事業の1つの節目の年でもあり、現在、葉山会長、畔津前国際交流委員長にご指導を頂きながら、国際交流委員会に於いて3年間の成果に関する評価と、派遣者のもつ成果と経験を如何に学会活性化につなげて行くか、そのためにはどのような具体的方策を採っていくべきかを鋭意検討している。言うまでも無く、若い内に海外での調査交流あるいは研究発表を行い、異文化に直に触れることは、それ自体派遣された本人にとって貴重な経験であり、将来の財産になるものであるが、学会としてもYME海外派遣者に期待するところは大きなものがある。その1つは、研究委員会活動活性化への寄与・貢献である。研究委員会を通しての学術活動は当学会の大きな特徴の一つであり、その活性化にYME派遣経験者の活躍が期待される。また、学会国際化への寄与・貢献として、国際感覚、人脈を生かして、マリンエンジニアリングに関する国際シンポジウム(ISME)への参画、英国舶用機関学会(IMarEST)をはじめとする海外から当学会への派遣者の技術的窓口等々の分野での活躍も期待できるところである。そのためには、YME派遣経験者の活躍できる環境の整備が重要であることは言うまでもない。
 昨年5月に、第一期、二期YME派遣者により、「YMEネットワーク」が作られ、相互の交流を密にすると共に、YME懇談会開催等の活動を開始している。これは海外派遣事業の目に見えた一つの成果であり、今後、このネットワークの拡充を図ることにより、学会活動の中核をなすような体制が構築されることが期待される。今回のパネル討論会においても、第一期使節員リーダー幅田 望氏及び第二期使節員リーダー段 智久氏にもパネリストに加わっていただき、「YMEネットワーク」の紹介と今後の活用方法、また関連して、派遣者のもつ成果物の共有と有機的結合の重要性等についての議論がなされている。その詳細については、本誌の「平成14年度YME使節員帰朝報告・討論会」をご覧いただきたい。昨今、当学会に限らず、どの学会もその存続を賭けて学会活性化の議論がなされている。この事業が、真に当学会の活性化の一翼を担うことを願って止まない。
 終わりに、YME使節員海外派遣事業にご援助いただきました日本財団に、心から御礼申し上げます。また、本事業の実施に当たりご尽力いただきましたマリンエンジニアリング学会関係各位、並びにコーディネータとしてYMEをご指導いただきました青木前会長に厚く御礼申し上げます。
 
*原稿受付 平成15年4月7日
**正会員 東京商船大学(江東区越中島2−1−6)







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