日本財団 図書館


はじめに
 
 このマニュアルは、公共交通機関などを利用するときに困難を感じている障害者がいる時に、適切な介助技術を持っているボランティアや介助者が私たちの住んでいる地域にもっとたくさんいて欲しいと願って作成されたものです。
 適切な介助や援助を行うためには、障害者に対する正しい知識と介助技術が必要となります。そのため、このマニュアルでは基本的な知識に加え具体的な介助方法を出来るだけ分かりやすくするためイラストによる説明を多くしました。
 そして、本書が移動に困っている人に出会った時に気軽に介助や手助けが出来るボランティアや、介助サービス業務に携わる方にも読んで頂きたいと願っています。
 なお、本書の作成あたって日本財団のご支援があったことを報告させていただきます。
 
1 介助をする前に
(1)ノーマライゼーションとは
 障害を持つ人でも地域社会で普通に暮らせるようにすることを意味します。もともとは、1959年に北欧デンマークで「知的障害者ができるだけノーマルな生活を送ることができるように」と提唱された理念です。それまで施設に閉じ込められがちであった知的障害者が脱施設化し、地域社会で暮らすことを目指しました。日本においても1981年の国際障害者年を契機に障害者の社会参加が叫ばれ、同年から毎年5月に開催されているサンサン祭りもこの理念による啓発活動として開催されています。
 
(2)バリアフリーとは
 ノーマライゼーションの理念を実現するために社会が取り組まなければならない具体的な施策や行動をバリアフリーと言います。
 バリアフリーの意味は、障害をもった人が社会参加をするうえで障壁から解放されることで、当初は建築物や道路などの物理的障害をなくすことを意味しました。最近ではそれだけでなく性別、人種、年齢などによって起こる差別偏見等によって社会参加を困難にしているすべてを取り除く意味にまで広く使われています。
 
バリアフリー運動の歴史
 アメリカで1950年代後半からバリアフリーデザインの推進運動が始まり、物理的な障害を取り除いた建築設計が始まりました。1970年代には国連から「バリアフリーデザイン」という報告書が発表され、広くバリアフリーという言葉が普及しました。
 日本では、2000年5月に交通バリアフリー法が国会で成立し、同年11月に施行されました。
 香川県では、平成8年に「香川県福祉のまちづくり条例」が制定されました。障害をもつ方や高齢者をはじめすべての人が住み慣れた地域で安心して生活でき、積極的に社会参加できるように主要な公共施設や新しく建設する公共交通機関にバリアフリー化を義務づけている条例です。
 
(3)介助を受ける障害者を理解する
 知らないことは偏見や間違いを生む一番怖いことです。しかし、マザーテレサの「私は不親切で冷淡でありながら奇跡を行うよりは、むしろ親切で慈しみのうちに間違いを行うことを選びたい」という言葉も忘れてはならないことです。
 介助する相手に人としての尊厳をもって接することは、人が出会う場面で最も大事なことです。
(1)人は、ひとりひとり個性をもち、かけがえのない存在として生きており、一人として同じ人はなく、1度きりの人生を生きているということ。
(2)人はさまざまな経験を積むことにより死ぬまで発達し続ける存在です。特に身体的にも知的な面でも機能低下をきたした障害者の場合、残っている能力だけでなく新たに獲得する能力があるということ。
などが大切な点です。
 そして、相手を理解するには、
 
(1)自己理解
 自分は○○な癖があるということを意識していることを自己理解といいます。個人的な感情や価値観が加わると、自分の好みで対象者の行動や場所によっては存在までを拒否する危険があります。人と人の関係を自分がどう理解しているか、自分のコミュニケーションに関する癖や感情的なパターンを自覚しておくことが相手を理解する上で大切です。
 
(2)受容
 相手の話す事実や行動を認めるだけでなく、何を感じ何を考えているかをその人の立場に立って受けとめることです。少なくとも相手の気持ちだけは基本的に受け入れることです。
 
(3)共感的理解
 相手の話す悩みや苦しみ、喜びを相手が感じるように共に感じること。自分の感情や評価を加えて相手を気の毒に思ったり、同情したりせずに悩みを訴える人と同じ立場で存在を共有することです。
 
(4)基本的な介助方法とエチケットを学ぼう
 車いす操作もちょっとした配慮で、介助される人・する人両方が安全で安心感のある介助ができます。
 しかし、車いす操作が出来るから「やればいい」ということではなく、最低限のエチケットは守りたいものです。
 
(1)何をして欲しいかを、まず聞きましょう!
 「車いす」だからといって、必ずしもすべて介助が必要なわけではありません。相手の気持ちをよく確かめてから・・・
 
(2)どのように介助して欲しいか、本人の意思を尊重して!
 見かけは同じであっても、障害の種類や程度は十人十色です。
 
(3)わからないことはやらない、無理をしない!
 危険(ケガ)につながります。安全を第一に・・・
 
(4)服装に注意して!
 介助の時には出来るだけ軽装で・・・。スカート、アクセリー(指輪、ブローチなど)、ハイヒールなどを避け、腕時計も外しておいた方がいいでしょう。
 
(5)介助する人の姿勢に注意!
 腰が引けた無理な姿勢は腰痛のもとになります。腰を入れた正しい姿勢で・・・
 
(5)バリアフリーの情報を得る
 自分の身近なバリアフリー情報を知っていることは、介助したり案内するときに役立ちます。
 
移動するときに必要なバリアフリー情報とは
(1)家から最寄りの交通機関までのアクセス情報
(2)交通機関で移動する時の駅などのバリアフリー情報
(3)降車地から目的地までのアクセス情報
(4)目的地(建物等)のバリアフリーの情報
などです。
 
 香川県では、誰もが安心して利用できる施設に申請に基づいて適合証を交付しています。適合を受けた公共施設や大型ショッピングセンターでは車いす利用者向けの駐車場や身障対応トイレやエレベーターなどが設置されています。
 一方、公共交通機関では、交通バリアフリー法が施行され、路線バスでは、車椅子でも乗り降りできるワンステップバスや乗降口に階段のないノンステップバスを一部導入し始めています。新しく出来たJR高松駅は、中央広場からホームまで段差のないバリアフリーモデル駅となっています。
 具体的なバリアフリーの情報収集の方法として県および各市町が福祉マップ(香川県健康福祉部障害福祉課発行「おでかけマップかがわ」等)を作成しているところもあります。近くの役所にお問い合わせ下さい。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION