1. 排他的経済水域および大陸棚は国土管理に準じた最重要課題として国が管理すべきである
国土や沿岸域は、国と地方公共団体の適正な役割分担のもとに管理されるものであるが、排他的経済水域および大陸棚は、国土管理に準じた最重要課題として国が管理すべきである。
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わが国の有する200海里排他的経済水域は、国土面積約38万平方キロメートルのおよそ12倍にあたる約447万平方キロメートルにおよび、その広さは世界第6位である。
さらに、国連海洋法条約に基づいて200海里を超えて最大350海里までの延長が認められる大陸棚は、わが国の領海約43万平方キロメートルのおよそ1.5倍にあたる約65万平方キロメートルの海底にその可能性があることが判明している(下図のオレンジ部分が可能性のある海域)。
利用可能な国土が限られ、かつ陸上資源に乏しいわが国では、これら排他的経済水域および大陸棚について、国土管理に準じた最重要課題として国が責任を持って管理すべきである。
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○離島の振興・活用
また、北方四島や南西諸島など沿岸国と排他的経済水域を接する島嶼地域や、南鳥島、沖ノ鳥島、小笠原諸島、大東諸島などの排他的経済水域の基点となる遠隔離島は、わが国の排他的経済水域および大陸棚を管理する上で重要な領土であり、これら離島の振興・活用も積極的に図るべきである。
○大陸棚調査の推進
さらに、大陸棚調査はわが国の権益を拡大するための最重要課題であり、大学や民間が保有する人材、船舶などを最大限に活用するネットワークを構築して、「国連の大陸棚の限界に関する委員会」に提出する科学的な根拠資料の作成に必要となる調査の前倒しや評価作業の推進を図る必要がある。
2. 海洋管理に係る基本法制整備のためのネットワークづくりが必要である
わが国の海洋政策を戦略的に企画・立案するための関係機関のネットワークづくりが必要である。
その第一段階として、5年以内に排他的経済水域および大陸棚の開発・利用・保全の国家戦略を定める基本法制を整備することを目標として、行政・学界・産業界・研究機関・関係団体などの関係者(stakeholders)によるネットワークを構築してこれにあたるとともに、これを推進し海洋管理のネットワーク構築の要としての役割を主たる業務とする海洋政策統括室(仮称)を内閣府に設置することを提案する。
3. 海洋管理基本計画(仮称)を策定することが必要である
国土の総合的・計画的な利用の基本方針を定める国土利用計画に相当する「海洋管理基本計画(仮称)」を策定することが必要である。
この基本計画は、2.で提言した基本法制を根拠として、わが国の排他的経済水域および大陸棚の開発・利用・保全の基本方針等を定めるものとして、基本法制の施行後数年以内に策定し、「海洋国家日本」の海洋政策の柱として内外にアピールのうえ、実行に移すべきである。
4. 海洋管理の礎(いしずえ)となる海洋情報整備に直ちに着手するべきである
海洋管理を行うためには、管理の対象となる排他的経済水域および大陸棚の環境情報や資源の賦存状況、海面・海中・海底の利用状況等の海洋情報を正確に把握することが不可欠であることから、海洋情報整備に直ちに着手するべきである。
(1)海洋情報整備の推進
国土利用計画を策定する上で、土地利用状況等を把握するための国土情報整備は不可欠のものである。現在、国土情報整備の中核をなす地理情報システム(GIS)については、GIS関係省庁連絡会議やGIS関連法制度研究会などが設置され、関係省庁の連携のもとに推進されている。
国土利用計画と同様、3.において提言した「海洋管理基本計画(仮称)」を策定するためには、沿岸域(領海)を含むわが国の排他的経済水域および大陸棚に係る海洋情報の収集が不可欠である。広大な排他的経済水域および大陸棚の調査には、多大な時間と労力、費用が必要となるため、関係省庁が連携して直ちに海洋情報の整備に着手するべきである。
さらに、収集した海洋情報の評価システムを整備することも重要であり、行政・学界・産業界・関係団体などのネットワークを構築してこれに取り組むべきである。
(2)海洋調査のネットワーク化
排他的経済水域および大陸棚の環境情報や資源の賦存状況などを正確に把握するためには、現在の調査・観測体制では不十分であり、関係省庁や試験研究機関、大学、民間が保有する人材・船舶・観測機器・施設などあらゆるものを動員し、効率的な海洋調査・観測を行なう必要がある。
そのためには、これまで一部データの提供にとどまっていた防衛庁も積極的に海洋調査・観測に参加するとともに、その役割を広く国民にアピールするべきである。
(3)海洋情報整備のためのインフラ整備
広大な排他的経済水域および大陸棚を対象として効率的な海洋情報整備を行うためには、新たな技術開発、インフラ整備などを推進する必要がある。
特に、高速かつ大容量のデータ通信に対応する情報通信基盤の整備や、広域・多点・同時観測が可能なリアルタイムモニタリングシステムなどの開発・整備を一層推進することが必要である。
この場合、商用(通信用)の海底ケーブルを海洋情報整備のインフラとして開放・利用することは、緊急性・経済性などの観点から有効である。
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