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第4部 ロープワーク編
 
1 ロープワーク
(1)ロープワークとは
 紐や縄をむすぶのに、いろいろのやりかたがあることを知っているでしょう。そのむすび方をロープワーク(結索法)といいます。索はヒモとかナワとかいう意味です。みなさんが、毎朝、靴の紐をむすぶのもロープワークの一つです。
 ふだんの生活でも、小包の荷づくりをしたり、薪をたばねたりするのにロープワークを知っておくことは必要ですが、船の上で作業をおおくやる海洋少年団にとっては正確に、しかも手早くむすぶ方法を、よく覚え、よく練習しておくことが、一層必要になります。
 ロープワークの知識に欠けていたり、いいかげんなむすびかたをしていたために思わぬ災難をまねいた例はいくらもあります。
 ある坑内で実際に起ったことです。坑内で働いていた人が、空気の具合が悪くなり、危険を感じたので、合図をして助けを求めました。さっそく上から救命索とよぶふとい、縄が降ろされました。こうした場合、縄の端に輪をつくるか、むすんで節をつくるかするのが正しいのですが、そのとき、上にいた人たちは、あわてたためか、あるいは、知識が欠けていたためか、輪も節もこしらえずに降ろしてしまいました。
 坑内にいた人は、縄にとりつき、合図をおくって、しずかにひきあげられていきました。ところが、縄には、何も手がかりになるものがつくられていなかったので、途中まできたとき、どうしても持ちこたえられず、とうとう手をはなしてしまいました。せっかく助けあげられながら、もうすこしのところで、まっさかさまに底へ落ちこみ、その場で死んでしまいました。
 これなど、ロープワークを正しくやっておけば、尊い人命を失なわずにすんだ一つの例です。
 
(2)どんなところに使うか
 ロープワークをよく知っておくことが、どんなに大切であるかは、前の例でよくわかります。では、私たちの生活のうえで、どんなところに多く用いられるでしょうか。およそ、つぎのように分けて考えられます。
1. 小包、中包、大包、荷物の包装。
2. 建築作業、架橋(橋をかける)、櫓、いかだ、などをつくるとき。
3. 船やボートをつなぐとき、また舷やマストなどで作業するとき。
4. テントを張ったり、垣根をつくったりするとき。
5. 登山や坑内作業のとき。
6. 人命救助の場合。
 
 なお国旗をかかげる際は、かならず二重接という方法でむすびます。こうしないと、風の強いときは、ばたばたあおられて、むすんだ紐が解けてしまいます。国旗が飛ばされては大変でしょう。
 すべてロープワークは、いちどむすんだら、途中で、決して解けないこと、それでいて用事がすんだら、たやすく解くことができるのを特色とします。
 
(3)ロープと団体組織
 どんなにふといロープ(索)でも、よく見ると、細いものがいく本もいく百本もあつまって出来ているのがわかります。これは団体組織によく似ています。
 団体の教育や訓練で一番大切なものは一致協力の精神です。あらゆる行動が立派におこなわれるためには、全員の精神が一つになることをなによりも必要とします。われわれの海洋少年団は、班制組織に重きをおき、常に力をあわせて事にあたる精神をやしなうようにつとめています。
 一隻のボートには、漕ぎ手が6人、舵手が1人、艇の指揮をする人が1人乗ります。この8名を一班とし三班以上で一隊をつくり、さらに隊をいくつかあつめて団と呼びます。これはロープのつくりかたとおなじです。
 ロープは、はじめ、ごく細い繊維をあわせますが、これは団体の人員一人一人に当り、ヤーンと呼ばれます。ヤーンが集まって細縄すなわちストランドとなり、これが隊です。ストランドがあつまり、より合せられて、ロープつまりわれわれの団が出来あがるわけです。
 一本一本の繊維は、爪先でひっぱればすぐ切れてしまう。まことに弱いものです。それが、何百本とまとまれば、数十トンの重さのものでも、容易に動かしたり、吊ったりすることのできるのは、一人ずつでは力の弱い人間も大ぜいあつまって一致協力すれば、すばらしい仕事をしあげられるのと同じでしよう。
 
(4)ロープワークの要件
 ロープワークによる結びといわれるためには、次の要件を備えていなければなりません。
(1)結び易いこと。(同じ用途を目的とする結び方には、数多くの方法があります。その中から結び易いものが選ばれています。)
(2)解こうとしない限り、絶対に解けないこと。(結ぶ行為は、人間が結び人間が解くものです。波や風で解けてしまうような結びは、ロープワークとは言えません。)
(3)解こうとする場合には、簡単に解けること。(解きたいと思うとき解けないものは、ロープワークでは用いません。)
(4)仕上がりが整って美しいこと。(大きな団子のように仕上ったり、必要以上に余分な結びを繰返すような結びは、ロープワークには入りません。必要最少限度の結びで、十分に目的を達するものが選ばれています。)
 
(5)ロープワークの原理
 ロープはよりによってつくられている。ヤーンのより、ストランドのより、ロープのよりの積重ねによって、ロープは丈夫になり、摩擦に耐え、切断し難くできています。ロープワークでもこのよりは大きな効果を発揮します。3本のストランドのよりは、ロープ独得の山や谷の螺旋模様をつくり、摩擦抵抗を大きくし、ロープに張力が加わるとよりは益々よりを強めて、ロープとロープの間・固形物とロープの間の間隙を狭めていきます。この間隙を狭めることが、ロープワークの原理です。張力つまり押えこむ力によって、はさみつけられ、解けないのです。
 
(6)ロープワークの効果
 どれほどこみいったロープワークでも、そのもとは、かんたんな「止め結び」からはじまります。ただ、その端が、左にいくか、右にいくか、また上になるか、下になるか、前にかわすか、後にかわすか、あるいは輪の中を通すかなどによって、いろいろなむすびかたが出来るのです。
 はじめに、元となるむすび方をしっかり覚え、だんだんにこみいったものを練習するようにしましょう。これをよく知っておけば、家庭で干し物をするとか、虫干しをするとかいうときにも、紐がとけて、せっかく洗ったものを泥だらけにしてしまうなどのことはなくなります。
 しかし、ロープワークをおぼえる利益は、そうした実際的のものばかりではありません。第一に、一致協力の心がまえを学びます。それから整頓の習慣をつけ、責任感を強めるのに役だち、根気をよくし、記憶力をたかめます。団体組織の大事なことを知り、人命救助の役にたつことは、いうまでもありません。物や時間の無駄がはぶけるのも、大きい利益です。







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