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III 中山間地域等直接支払制度の成果
 2001年度の実績の取りまとめによれば、予算面積は90万haに対し、協定面積は63万2,000haと7割の進捗率であり、市町村が対象としている基本方針の面積と比べると80%の進捗率になっている。また、面積率ではなく、集落協定数で見てみると、日本国内に13万5,000の集落のうち、およそ3万1,000の集落において協定が締結されている。(なお、集落数については、調査によってばらつきがあり、正確な数字は不明)
 さらに、地域間格差もあり、畑作集落の多い徳島県、宮崎県及び鹿児島県では、進捗率が低く、水田集落の多い北陸においては、進捗率が高い。中でも新潟県では、この協定をつくると同時に、集落活性化プランをつくることを県の独自の施策として義務付けている。単に集落協定を、国の雛形に書き込むだけではなく、自分たちの集落をどのように活性化するのか、そのスローガン、具体的な手法及び手順をつくることを考えた上で、全集落が集落協定に書き込みを行っている。そういう独自農政の展開が、集落活性化プランとの連鎖となって表れる。
 この直接支払制度は、集落活性化基金として機能し、さらには集落のビジョンを築き上げるという役割も担っている。
 
IV 中山間地域等直接支払制度の課題
 本来、このような交付金は、とりわけ基礎体力が落ちた限界集落に機能することが求められているが、結果的には、こうした限界集落には交付金が入ってこない状況がある。
 下記のグラフは、山口県の中山間地域の統計分析であり、横軸が集落単位での壮年人口の絶対数であり、集落の基礎体力というのは、集落内に残っている壮年人口、30歳から64歳の人々の残存状況によってほぼ規定できることが確認されている。
 
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 これは、集落内にリーダーとなるような人々が男女問わず何人いるのかによって集落の基礎体力が維持されているかどうかをとらえることができる。点線が高齢化率であり、この壮年人口の絶対数が小さくなればなるほど高齢化率が高い。また、太い実線の左メモリは寄り合いの回数を示し、年間に寄り合いが何回ぐらい行われているのかを見るものだが、壮年人口が20〜30人以上いれば、どういう集落でも5回以上の寄り合いが行われるの対し、0〜4人の集落では、4回を切っているという実態になっている。
 そして、最後の細い実線は集落協定の締結率を見ているが、この締結率も、0〜4人集落では2割水準まで落ちている実態である。集落協定の締結率は、集落の壮年人口の基準で見た規模が大きければ大きいほど、やはり導入の割合が高く、このような実態まで至るとかなり低いという結果が出ているので、限界集落にこの制度の導入がままならない実態が発生しているということが確認できる。
 
V 中山間地域等直接支払制度の事例について(宮崎県及び島根県六日市町)
○ 宮崎県における平成12年度中山間地域等直接支払制度の実施状況は、44市町村中約6割の26の市町村において実施しており、集落協定が407、個別協定が1という状況である。その集落協定の内容は、共同取り組み活動における交付金の使用方法といった方から見ると、集落活動報酬を出捐するという形のものが98%、それから水路・農道等の維持管理といったものが8割を超すというような状況になっている。
   また、一面、農用地に関する事項の取り組み内容で見ると、適正な農業生産活動というものはすべて入ってきて、賃借権の設定や農作業の委託といったものが75%。それから、法面等の点検といったようなものが同じく75%程度となっている。
   次に、多面的機能を増進する活動の取り組み内容については、周辺林地の下草刈りというのが7割弱ということで一番多く、次いで景観作物の植えつけといったような内容がある。
   最後に、生産性・収益の向上の取り組み内容においては、農作業の受委託の推進が64%ということで一番多く、次いで農作業の共同化が3割弱、それから機械施設の共同購入、また共同利用といったものが3割弱というような状況である。
   
○ 島根県六日市町では、平成14年現在で集落協定数は40あり、平成15年度予算で約2,800万円であり、一番小さいところで20万円、大きいところが280万円ということで、かなりばらつきがある。多面的な活動とはいいながらも、実は一般的な草刈り作業等々が主で、水路・農道等の維持管理、周辺林地の草刈り、いわゆる多面的活動ということが主であるが、集落によっては転作の大豆を生産するところだとか、いかにおいしい米をみんなでつくるかといったようなところを努力している。
   町では、13年度に地区の連合組織の形で、直接払いの連絡協議会を設立して、その中で頻繁に連絡会議だとか、管内で行われる研修会にも代表参加をするような取り組みを行って、年に1回は講演会を開催しているといったような動きがある。具体的な例として、田んぼを使った泥んこサッカー大会、バレーボール、焼肉といったイベント等の交流がある。若いリーダーがいるところはそういった他に、1級河川の水源ということで、これにまつわる伝説の藤棚をつくったり、公園の整備をしてシバザクラの公園、それが波及して畦畔のシバザクラがあちこちで増えてきている。
   鳥獣被害はどこでも悩んでいるが、イノシシのフェンスの設置であるとか、ヤギの放牧試験を1年やってみたら意外に評価が高く、継続しているとか、ハヤ、コイ、フナ、エビを養殖して放流するといったビオトープ的な意味合いで田んぼを守っているところもある。また、休耕田の復活による大豆、ソバの作付け、食を中心にした地域の伝統食を見直そうというような動きで、とち餅だとか弁当を中心に集落を挙げたイベントに取り組んでいるところも出てきた。先日は、転作大豆を使ったトウフだとかオカラクッキーを、町内の小学校でそのリーダーが講演会をやって、子供たちと体験、いろいろな意味で積極性だとか元気が出たというか、他集落との交流、みんなで考えるようになった。
   一番多く目立って言えることは、集落がやはりきれいになったということで、草がよく刈ってあることから、耕作放棄地だとか荒廃地を防いでいるということ、共同作業だとか話し合いの場を持つことによってコミュニティの醸成、世代間の交流が結構集落間でもできるようになった。







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