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2. 作業・安全マニュアル
 
2.1. 超高圧水の特徴
 超高圧水を安全かつ上手に使用していただくためには、超高圧水の性質や破壊力を知っておく必要があります。
 
2.1.1 性質
 超高圧水の持っている破壊力(エネルギー)は、剥離・洗浄、切断、はつりといった形で利用されています。破壊力を増すには、吐出流量、圧力などを増加させますが、これにともない危険度も大きくなります。
 
2.1.2 破壊力
 圧力245〜343MPaの超高圧水は、ウォータノズルから約700〜800m/sの速度で噴射されます。この速度は、ライフル銃の弾丸とほぼ同じである。
 超高圧水は連続的に流れているため、水噴流の速度の危険性を作業者は感じにくい。
 
2.1.3 人体への影響
 圧力25MPa以上で皮膚や筋肉を超高圧水が貫通し、100MPa以上で骨をも貫通します。よって、超高圧水が人体に触れますと大変大きな事故となりますので十分認識しておく必要があります。
 
2.2. 安全対策
 超高圧水に関する事故の原因は、作業内容が多岐にわたっているため、複雑である。安全確保のための対策も、それぞれの作業現場の実状に即したものを適宜選択して、立てる必要があります。
 主な項目としては、
1)日常管理(教育、訓練、保護具など)
2)作業前段階(機器の配置、配線・配管時、始動前の確認項目など)
3)作業中(作業中の厳守事項、作業合図など)
4)作業中断時、修理時(修理手順、復帰手順など)
 
2.2.1 日常管理
 
i)教育訓練
 先ず作業員やその管理を担当する人々が、個々の作業現場で正しく適用しなければ、全く役に立たないものとなります。この「正しく適用する」ために最も有効な方法が、種々の実地訓練を含む「安全教育」である。
 安全教育を修了した人だけが機器を操作できる、また新人の訓練も監督できる体制にしなければならない。
 その教育訓練には、一般的には以下のような全般的知識ならびに技能があげられる。
1)機器の取扱方法に関する知識・技能
2)手順に関する知識・技能
3)機器の保守、点検、修理に関する知識・技能
4)機器故障時の対応処置に関する知識・技能
5)安全衛生に関する基礎知識
6)流体に関する基礎知識
 
・人体に対する危険性の明示 超高圧水が人体に触れた場合の危険性を視覚教材(ビデオ等)、できれば機器を実際に使して説明する。
・保護具の装着 作業現場で必要な保護具の使用方法を、装着訓練伴う方法で説明する。装着しない場合の危険性についても、できるだけ具体的に説明する。
・機器やシステムの説明 使用する機器の正しい使用方法について、保守点検の重要性や緊急時の対処法を含め説明する。
・技能や知識の確認 熟知した指導者が、作業員が必要な知識及び技能を保有していることを確認する。
 
 以上の安全教育により、関係者がそれぞれの立場で対策を立て、事故に際しても適切に対応することが可能となる。
 
ii)保護具
 通常、作業員が適切な保護具を使用することは、効果的かつ経済的な災害防止法である。管理者並びに経営者は、過度に作業効率を優先するあまり、作業員が必要な保護具を着用していない事態を見逃すことは、絶対にすべきでない。
 作業内容により保護具の種類は異なるが、一般的には保護帽、手袋、安全靴は着用を義務つける必要がある。特殊として保護面、保護メガネ、耳栓、防塵マスクを作業内容に応じて着用する。
 
2.2.2 作業前段階
 
i)機器の配置
・水平度を保って設置
・第三者が近付かない対策
・作業者の合図などが見えるところに設置
・点検表を目につきやすいところに付けるなどを配慮する。
 
ii)配線・配管
・配線
 電線は、被覆部に劣化損傷が無いことや絶縁抵抗が基準値を充分満足しているものを使用する。接続は電気工事士等、配線に必要な資格を有している作業員が行い、漏電ブレーカがOFFになっていることを確認する。
 
・配管
 超高圧配管は、折れ曲がったり劣化損傷していないことを確認してから使用する。
 配管は、できる限り人が近寄らない場所に設置する。どうしても人に近づくところに設置する場合は、必ず踏み台等による防護を行う。また、角部に直接接触しないよう養生する。
 
iii)始動前の確認項目
 各機器の据え付けが完了した後、機器毎の取扱説明書に従って、始動前の確認を行う。各々の機器が所定の通り作動することを確認する。
 下記に確認項目の例を挙げる。
 
作業者 作業者は、心身ともに健康であること。
作業内容、作業手順が理解されていること。
作業担当が明確になっていること。
作業に見合った服装、保護具を保持していること。
噴射孔背面に人がいないこと。
機器 電線類の接続部が緩んでいないか。
配管類の接続部が緩んでいないか。
配管のバルブが開いているか。
ノズルが噴射装置に固定されているか。
不用意にノズルの出口を覗いたり、手をだしていないか。
電動機の回転方向は良いか。
エンジンに燃料が入っているか。
機器が所定の動作をスムーズに行えるか。
超高圧水発生装置のON、OFFが行えるか。
水がスムーズに噴射するか。
超高圧配管の干渉、無理な力がかかっていないか。
低圧で噴射して、噴射形状に異常がないか。
 
2.2.3 作業中
 始動前の点検を行った後、高圧水発生装置を約10〜20分程度運転し、配管部からの水漏れ、異常音発生、急激な温度上昇がないことを確認する。 運転時、オペレータは絶対に操作盤から離れないようにする。
 下記に作業中の確認項目の例を挙げる。
 
・各機器の操作は、安全を確認した後に行う。
・作業者は、必要な保護具を着用すること。
・噴射装置側と超高圧発生側との合図を的確に行うこと。
・操作員以外の人は、ノズル部に近づかないこと。
・噴射背面に近づかないこと。
・噴射方向には注意を払う。
・オンオフバルブを使用している場合、オフ時にノズルの交換、ホースの脱着、装置の移動等は絶対に行わない。(0MPaに下げて実施)
・作業者は、持ち場を離れないこと。
・トラブル発生時は、必ず0MPaになるまで圧抜きを行うこと。
 
2.2.4 作業中断時、修理時
 
i)非常停止
 作業中、各機器に異常音の発生や緊急事態が生じた場合、直ちに『非常停止』ボタンを押し、運転を止めることができるようにする。『非常停止』ボタンを押した後、数秒間超高圧水が噴射することがあるので充分注意などの他、以下のような対策を考慮しておく必要がある。
・ポンプ停止、圧抜きの実施
・監視員指示の厳守
・表示器の設置
・トランシーバによる伝達
 復帰する場合、異常の原因を把握し、問題点が解決されたことを確認する。安全確認後、再開する。
 
ii)保守・点検
 保守・点検を行う場合は、必ず圧抜き作業を実施して、0MPaになっているのを確認後行うこと。
 機構や構造の知識を有する人が取扱説明書に従っておこなうこと。第三者の点検、操作により不意に超高圧が発生しないようにする。
 また、保守・点検を行った時は、点検リストを作成し保管しておく。







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