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有限会社 徳弘会
トクヒロカイ
代表者名●松岡秀暢[マツオカヒデノブ]
所在地●〒889−3204 宮崎県那珂郡南郷町中村乙7051−160
電話番号●0987−21−9835 FAX番号●0987−21−9836
URL●無し E−mail●無し
 
生涯学習講座やマリンスポーツ
選択の幅の多い新しい施設
●報告―星野 佳美
[HRリーダー]
 
 日本の南、宮崎の徳弘会に調査に行った。宮崎というと九州の南、随分と遠い気もするが、羽田空港からは1時間45分程。帰りはさらに早く1時間強である。冬到来で束京も寒くなっており、宮崎は暖かいのでは?と半ば期待をして訪れたのだが、あいにくの雨で気温も東京とそれほど変わりはなかった。日が出ると暖かいが、海も近いので寒い日もあるそうだ。南とはいえ日本国内そんなに遠いわけではない。むしろ近くなったと言える。
 宮崎空港からバスで1時間30分、日南海岸を通り、徳弘会寮のある南郷に到着。観光名所であり、海は非常にきれいだ。以前は民宿だったという寮は広く、のびのびとできる場所である。周囲には広大な土地が続き、寮のすぐ目の前には社会福祉協議会、老人施設があり、ボランティアなどができる。すぐ裏手にはカルチャーセンターのハートフルセンターがある。自然に恵まれ、ハイキングやサーフィンなどを満喫するにはもってこいの環境だと思う。しばし心の休暇を取るにもとても楽しめる所だろう。
 
徳弘会寮全体・・・中央が入り口で、右側が食堂になっている。左側に各部屋がある。もともと民宿であったために、とても広い。
 
入り口を入ってすぐ左側にある事務所。中原さんの妻が事務を担当している。
 
左右に各部屋があり、それぞれ個室である。8〜10人が宿泊できる。将来は2階建てにする計画もある。
 
 調査当日は代表の松岡さんが家庭訪問で不在だったため、取締役兼指導官の中原さんからお話を伺った。中原さんは現在66歳で、第二の人生をひきこもり支援にかけたいという。中原さんの妻も賛同し、今年の7月より施設の事務・経理などを手伝っておられる。まだ新しい施設で、寮生も現在は2名と寂しい気もするが、今後は生活の仕切り直しや、自立支援を必要としている人々が、すばらしい自然の中で、のびのび心を癒せる場所となることを願ってやまない。[調査日―2002.11]
 
■代表者に訊く
松岡 秀暢さん
●有限会社 徳弘会代表
 
※代表取締役社長であられる松岡さんが家庭訪問のため、取締役で指導官の中原さんから話を聞きました。
●団体の特徴
 太平洋の黒潮の流れを眼前に臨み、どこまでも広がる青い海、年中温暖な気候に恵まれた緑一色の山並み、人情味あふれる人々、「日本一住みやすい町」と自慢している南郷の地に、心を閉ざして来た若者達の心を癒し、過去を忘れ新たな人生、自立に向けて挑戦する旅立ちの場所「徳弘会寮」を設立いたしました。
【寮生活のモットー】
 社会復帰をめざした社会人としての知識、趣味の育成及びボランティア活動を通して自然に親しみ、「豊かな心」「助け合いの精神」を養うと共に、個性を伸ばし、何事に対しても自信を持って行動できる自分を作る。
 
入り口を入ってすぐ右側にある食堂。食事は全員で食べる。非常に広い。
 
個人の部屋にテレビは置かない。そのためテレビを見るために談話室に自然と集まる。
 
寮のすぐ裏手、カルチャーセンターのハートフルセンター。ここのカリキュラムから興味あるものを見つけ通う。
 
現在は空いている部屋。入寮してきた寮生には、このような個室が与えられる。
 
指導官の中原さんと奥さん。奥さんもこの7月より事務、経理の仕事を手伝っている。
 
日南海岸は非常にきれいな海で、観光名所にもなっている。夏になると、この海でアクティビティーを行う。
 
【入寮者の日課】
 強要しない自由な日課を設定し、南郷町が開催する41種類の生涯学習講座の中より自由に選択し、参加させる。また、夏には水上スキー・スキューバダイビング、釣り、海水浴、磯遊びなどマリンスポーツを楽しみ、春・秋には山菜採りや山野歩きで英気を養い、農業・漁業・農園・福祉施設等を見学し、好みの職場が出来たらボランティア活動を行う。
【寮生活の目的】
1. 大きな声が出るようになる。
2. 笑顔が出るようになる。
3. 集団行動が出来るようになる。
4. 集中力を持って、作業等が出来るようになる。
5. 将来を考えるようになる。
6. 規則正しい生活ができる。
 入寮してから最初の2週間は自由にします。ホッとする人や、あまり来たいと思って来ていない人もいるからです。食事だけは必ずスタッフ、寮生全員で食べます。そして昼夜逆転の生活を改善し、リズムを取り戻します。散歩やスポーツ、そして週一回は生涯学習ハートフルセンターの講座より興味のある講座を見つけます。その後はボランティアなどを行っていきます。その間にも、海水浴や山登り、観光などのイベントもあります。とにかく本人のやる気が起こって来ることが大切ですから、こちらからは強制せず、本人の好きなことが見つかるまで待ちます。6ヶ月が寮滞在の期限です。それ以上は親御さんの寮費負担も大変ですし、だいたいみんなやりたいことが見つかって元気になります。
 これまでに退寮した人も、学校へ行ったり、就職したりと元気になりました。6ヶ月経っても元気にならないようであれば、一旦は退寮して、再利用という形になります。
 
食事風景・・・この日は東京から見学に来ちれた親子が一組いた。 写真奥の2人は心癒士の方々。
 
 現在では臨床心癒士という制度を作り、ひきこもりの人たちを支援する会を作っています。すでに3回の講座を行い、30人程度が受講し、その内10名が登録しています。今後はこの制度を九州全域に広めていく予定です。また、社会福祉法人にするための陳情も行っており、今後は短期間の自立支援施設を開設したいと考えています。
●卒設の基準
 1. 目の輝きが見えて来て、他人と会話の中で自己主張をし、他人の主張を理解したとき。2. 甘やかすと甘えさせるとの違いが本当に分かったとき。3. 自立できたとき。
●年代別目標
[10代]1. 親が自分の子はひきこもりであっても、やはり自分に愛情をそそいでいると思うようになる。2. 親が自分は自慢の子供だと認識するようになる。[20代]1. 社会では自分に対する目などないと理解する。2. 何事にも自分の特徴を出す。
[30代]1. 自分に合った職業を見つける。2. 自分には多くの支援者がいることに気づく。
●施設における自立の定義
 1. 自分がマイペースでできることを探す。2. まず手をつけてみる。3. 過去ときっぱり手を切る。
●在籍生の就職状況とその支援体制
 ある場所に独立した小さな店を開いた子もいます。支援としては、ボランティアを繰り返し行うことで、自分の性格、特徴に合った場所を見つけられれば、その職種に就くように支援しています。また、90%の子供は就職をしていますので、今も彼らとコンタクトを取りながら後方支援をしています。
●在籍生のアルバイトの可否・その状況と支援体制
 本人がやりたければアルバイトは自由です。
●作業(有償/無償)の有無・その内容と状況
 ボランティアとして農作業や漁港の仕事があります。町の「道の駅」という特産品や民芸品を売る場所でボランティアができます。そのような場所にもひきこもりを理解してもらい、対応をしていただいています。開拓していけば、いくらでも作業をする場所はあります。
●教科学習の必要性とサポート体制
 6ヶ月で退寮としているため、学習はどこででもできる通信教育を勧めています。自動車教習所やパソコン教室に通いたいのであれば、条件にあった場所を探します。こちらからは、何をやりたいかを本人に自覚させることが大切で、「こういうのは?」「ああいうのは?」といろいろ勧めています。
●在籍生の心理的サポート体制
 週に1回、個人面接を行っています。そして、ひきこもってしまった原因を探していきます。罪悪感を抱いているのであれば、そうではないということを伝え、本人の心理的サポートをしていきます。立派に立ち直れるだけの条件を持っているのだからと、本人の特性を見つけ、生かしていきます。
●外部医療機関との連携
 2箇所のひきこもりに関して理解のある精神科医と連携があります。
●在籍生の保護者へのサポート体制
 相談があったときは、その都度相談に乗ります。連絡もこまめに取るようにしています。







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