■代表者に訊く
添田 隆昭さん
●高野山高等学校校長
●団体の特徴
不登校問題がクローズアップされ始めたため、本校でも気をつけて観察してみると、中学校では長期欠席者であった生徒が本校では普通に通学しており、同級生は全く気付かないという状況がありました。このような劇的な変化が生徒に起こっているのに驚き、その理由を考えてみました。明確な解答は得られませんでしたが、可能性があるものとして次のようなことが考えられるのではないかと思います。
1. 生徒が遠方から来て、高野山内にホームステイしたり、寄宿生活をしている。中学校での人間関係が、この遠さによって遮断され、全く新しいキャラクターを打ち出し、別の人間に生まれ変われる。
2. 学校の規模が小さく(在校生300人以内)、生徒一人ひとりに教員の目が行き届く。
3. 自分に対する甘えから不登校になった生徒にとって、寄宿舎や寺院での生活は、わがままを抑え、協調性を持たなくてはやっていけないため、甘えの放棄につながる。
4. 全国から集まった生徒は、偏差値で輪切りにできない多様な能力を持っている。従って、学力に応じたきめ細かい授業がなされ、不登校による学力不足に対応できる。
5. 「身のこなし美しく、口にいつもありがとう、心に思いやりの優しさあり」という校訓を人間的目標とする生徒たちの優しさが不登校を受け入れやすくしている。
硬直した日本の学校システムが不登校の原因になったと思われる生徒のために、1年間の海外留学コースを用意し、海外の大学に進学することを可能にしています。また、不登校時の苦しかった体験は、社会福祉活動の中で必ず他人への優しさとして発露するものと考え、この苦しさを社会に活かせるように、国際福祉のコースも準備しています。また、僧侶となって困っている人の役に立てるよう、宗教科を全国で唯一持っています。
食事風景・・・大きな食堂でセルフサービス。食事は業者に委託している。 |
女子寮の寮監・・・お声と笑顔のやさしい尼さんです。女子は少ないですが、女子にも良い学校だと思った。 |
野球部グラウンド・・・山々に囲まれた広いグラウンド。他にもサッカーグラウンドが別にある。 |
本校は全日制高校で、不登校のための特別な学校ではありませんので、今、不登校で家庭にひきこもっている生徒を家庭から引きずり出すことはできませんが、もし、家庭・学校という全生活環境を変えたいと思い立ったら、迷わず扉を叩いて欲しいと思います。また、高校入学後に不登校になる生徒も多いので、転編入の制度を緩和し、1・2年生は学年の初めから12月20日まで、3年生は学年の初めから9月14日まで転編入を受付、不登校の長期化を避けることができるように配慮しています。但し、高野山内には心療内科の医療機関がないため、心療内科等で継続的な治療を必要とされる生徒は残念ながらお引き受けできません。
本校は高野山真言宗により設立された仏教系学校として、不登校の生徒を引き受け、社会復帰のお手伝いをすることは、本校に課せられた社会的使命に応えることであると考えております。
●卒設の基準
全日制普通科高校であるため、1年次30単位、2年次30単位、3年次30単位の習得が必要。
●施設における自立の定義
卒業への意欲を持ち、他人の手助けなしに日常生活が送れること。
●在籍生の就職状況とその支援体制
3年卒業生の内、61%が大学へ進学し、7%が専門学校、32%が就職をしました。
●在籍生のアルバイトの可否 その状況と支援体制
学校の許可があればアルバイトは可能。
●作業(有償/無償)の有無 その内容と状況
駅、公園の便所掃除等のボランティア活動を不定期で行っています。
●教科学習の必要性とサポート体制
週4日は教員が寮に出向し補習授業を行っています。
●在籍生の心理的サポート体制
専任のカウンセラーはいないが、保健室を開放し、美術科及び家庭科の講師が常駐しています。
●外部医療機関との連携
高野町立高野山病院の院長を校医として相談している。但し、この病院には心療内科がないため、心療内科で継続的治療の必要な生徒はお引き受けできません。
●在籍生の保護者へのサポート体制
毎学期三者面談を行うが、適宜、家庭訪問も行っています。
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