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■代表者に訊く
宮前 心山さん
●ハート・テンプル代表
●団体の特徴
 現代の混迷の要因は二つあります。一つは科学の発達、経済優先の考え方が人間生活を自然なあり方からより遠く、子どもを人工的飼育環境に追いやった事。もう一つは人間が陥っている相対観念の大きな錯覚。以上の観点から自然の考え方、自然の生き方、自然の食べ物という三つの基礎理念のもとに、禅の悟りを応用した独自の自立指導をしています。
 スタッフは自然農法・健康食・心身治療・パソコン・土木・動物訓練等の専門知識を有し、寮生と寝食を共にしています。イギリスのパブリックスクールや日本の禅堂生活に範をとった共同生活の中で、糧を自らが獲得するという、人間が生きるための基本姿勢を重視し、全員が何らかの役割分担をしています。その中で自然に自立の気風が育ち、生活技術が身に付き、適応力が増します。
【可愛い子には、旅をさせよ】
 作物を作るとき、本来持っている成長力を引き出し芽を育てていくには、苗が次第に大きく育ち、やがて実をつける結果を期待しつつも、成長の状態を観察しながら対処していく作業それ自体に楽しみを見出し、効果的な養分肥料を少しずつ、そして根気よく施すべきで、無理な矯正を試みると失敗します。子どもも同様で、あくまでも本来持っている成長力を待つ受容の精神が肝要で、子ども自身の変化を手助けする立場に徹する必要があります。うちに秘めている成長力は全ての苗が同じなのに、環境や育て方の誤りから通常とは異なった特殊な育ち方をしている苗木を扱うには、豊富な経験と知識を持つ、専門分野が自ずと生じてまいります。どんなに枝があばれている木でも育て方によっては、それなりの持ち味の木に仕立てることが可能です。大切な成長期において扱い方を知らずに大変な混乱をまき起こしている家庭及び学校が元凶なのではないでしょうか。
 
本堂・・・ここでの坐禅が朝夕の日課である。寮生は本人の自由意志による坐禅参加となる。朝早くから私も坐禅をさせていただき、良い経験となった。
 
 その子の味方になってあげようとはせずに、少年の心理を何も分からないまま固まっていて、変化を期待できない親を対象に無益で効果の上がらない親指導を業としている人があります。だが、実際に親がお手上げになった子どもを自分の懐に入れて育てていないから、親の痛みも、子の痛みも肌で感じる本当の痛さを分かっていません。それぞれが全く違う生き物である子ども達に対して、口先だけのカウンセリングや、向こう受けをねらって誇張した例え話などをいくら聞かされても、わが子の場合に当てはまる筈もありません。こんな人たちの、「わが子を他人に預けてはならない」という女性的感情論に惑わされていると、家庭の破壊ばかりではなく、大切な子どもの人格までが破壊されてしまい、ついには手をつけられなくなってしまうケースもあります。
 ある種の作物は畑を変えることによって良好な結果を得られることはよく知られています。人間教育も同様「可愛い子には旅をさせろ」の古い諺にみる通り、家庭を離れて、他人同士のなかで一時期を生活する経験は、いろんな出来事や考え方にぶつかり、視野が広くなるとともに、他人を知り自分を見つめ、親を眺めなおすよい機会なのです。指導理念が明瞭な団体共同生活にはさまざまな利点があると申したのはこの部分です。
【親子関係の回復のために】
 私達は親子関係の回復を待つために、一時保護者の肩代わりをするのです。十人十色それぞれ性情も能力も状態も異なる子どもに、自分が一個の人間として、どう関わり合ってあげられるかを、より効果的な方法をまさぐりつつ、親御さんになり変わって面倒をみるわけです。目的はあくまでも反抗期の難しい時期を無事に乗り越えるため、自己主張を健全にのばせるよう、大人社会の無理解、押しつけなどの阻害から守り、自立意識を引き出すことにあります。登校拒否、家庭内暴力、ひきこもりなどの対応にお困りの家庭は、ご相談下さい。
●卒寮の基準
 境内における共同作業や外でのアルバイトを数ヶ月以上にわたり持続して行えるようになること。学校や社会に出ても何とかやっていけるレベルにまで適応能力が向上したと判断されること。
●年代別目標
 [10代]基本的な生活技術を身につける。学校への復帰・進学・就職への道筋を明確にし、環境の変化にも動じない忍耐力を培う。[20代]社会に復帰後もしっかりとやってゆける適応能力を身に付ける。[30代]長年の人生経験で凝り固まってしまった自我を解きほぐし、柔軟な思考に基づいて、社会生活ができるようになる。
●施設における自立の定義
 親の援助に頼ることなく、己の糧は自分で稼ぐことができるようになること。
●在籍生の進学、及び就職状況とその支援体制
 3名中2名は就職しています。残りの1名は自閉症のため就職は困難ですが、寺院内でできる範囲の作業を分担させてみたところ、効果がでてきましたので、将来は作業所での労働従事を目標としています。
 就職の斡旋は積極的に行っており、その場その場で必要と思われる支援(車やバィク免許の取得、職探しや面接に同行するなど)や、採用後のアドバイス、ケアを綿密にしています。
●在籍生のアルバイトの可否・その状況と支援体制
 アルバイトについても就職同様、積極的に斡旋しています。採用された場合は、少しでも長い期間持続できるようにバックアップしますが、止むを得ない事情により解雇になった場合でも、新たな職探しに協力しています。
 一人ひとりの生きる道を探させることが目的であるので、初めから固定的に考えず、多くのことを経験させることに重点を置いています。実際に社会へ出ることで多くのことを学んでいるようです。
●作業(有償/無償)の有無・その内容と状況
 入寮したばかりの者に寺院内の作業を強制することはありませんが、馴染んできたら徐々に作業を手伝わせるようにしています。
 作業報酬については、本人の状況や親との話し合いの上、報酬を与えた方が意欲的になると見受けられる場合に相応のものを与え、労働意欲を引き出します。
 作業内容は農業や土木建築、パソコンを使った事務処理など、多岐にわたりできるだけ道具や機械を使わせています。また、情操を養う意味で犬の世話などもさせています。
●教科学習の必要性とサポート体制
 親がどんなに望んでも、本人が勉強する気を起こさなければ、強制的に勉強の時間を設けても効果は上がりません。それよりも、実社会に出てから役立つ生活技術を作業を通して身につけさせることのほうが大切と考えています。
 但し、大検受験など本人が目的意識を持って勉強する場合は、自らの意志でするようになります。当校では内部指導も行いますが、必要であれば学習塾や学校に通う体制をとっています。
●在籍生の心理的サポート体制
 専門知識・技術を持っているスタッフが仏教の教えに基づく禅カウンセリングを行っています。大家族主義の下、スタッフ・生徒と明確に区別することなく、家庭的な雰囲気の中で健全な精神を培っています。
●外部医療機関との連携
 ○○症といわれる心身症については、精神面の改善によって治る可能性が高く、得意としていますので、外部医療機関には頼らず独自の禅カウンセリング手法によって本人の自覚を促しています。但し、発作の抑制剤などが必要な場合には、定期的に診療を受けたり薬をもらうなど、医療機関と連携を取っています。
●在籍生の保護者へのサポート体制
 保護者との連絡を緊密にしており、本人との連絡や面会見学も自由です。但し、本人の自立が目的であるため自立を妨げないよう、本人との接し方についてはいろいろアドバイスをしています。また、費用面の相談についても応じています。
 
■スタッフに訊く・・・1
村田 朋彦さん
●56歳 男性 正規スタッフ 勤続年数1年
●施設と関わるようになった理由
 禅の修業のために来寺しました。
●施設について
 新しい試みを種々おこなっている関係で、施設では常に不足が生じているのが現状です。
●在籍生の変化に気づくとき
 日々の営みの中に変化が見られますので、毎日新しい発見があります。
●在籍生との関わりで注意している点
 観察を絶えずすることです。変化を見逃さないようにしています。
●ここで働いて喜びを感じるとき
 禅の修業のポイントは心を動かさないことにありますので、喜びや苦しみに反応することは修行ができていないことになります。特に喜び、辛さについて考えることはありません。
●辛いと感じるとき
 同上。
●施設での自分のポジション(役割)
 雑務全体であり、その中で自分が主となって動いています。
●施設の今後について
 先のことは分かりませんが、問題を抱えた青少年がますます増えると予想されますので、いつでも誰でも受け入れる準備をしておく必要があります。
●代表・その他のスタッフについて
 スタッフの質の向上が、これからの全てのカギとなると考えています。
 
■スタッフに訊く・・・2
加藤 仁司さん
●37歳 男性 正規スタッフ 勤続年数3年
●施設と関わるようになった理由
 きっかけは禅の本で長期滞在可能な禅修業道場として紹介されていたからです。
●施設について
 日々の修行で、青少年との共同生活も修行の一環と考えています。
 いろいろな目的を持っている人が往来する、人の出入りが多い中で生活していくことは、彼らにとっては初めての経験で、この状況から学ぶことも多く、意義深いことと言えます。
●在籍生の変化に気づくとき
 当初は人の和に入ろうとしませんが、人と接することに抵抗もなくなり、しかも自分から進んで手伝いをするようになったときに変化を感じます。
●在籍生との関わりで注意している点
 多少の非常識には目をつぶり、あまり細かいことを言わないようにしています。彼らから話しかけられたら、たとえくだらない話でも聞くようにしています。
●ここで働いて喜びを感じるとき
 禅修業においては、喜びや悲しみなど人間的感情には振り回されないようにしていかなければならないので、目の前のやるべきことを集中してこなしています。
●辛いと感じるとき
 あえて言うならば、世代が違うので何を考えているのかつかめず、対応に苦慮することがあることです。
●施設での自分のポジション(役割)
 住職不在時の代理ではありますが、年齢が若いので、青少年の指導については他のスタッフが中心に動いています。
●施設の今後について
 生活技術、知識を持った定年退職者と若者たちのグループホームになればと思っています。その中で修行をしつつ心と身体のケアをしていくのが当施設の未来像です。
●代表・その他のスタッフについて
 各人様々な役割分担があるため、青少年の指導ばかりに集中できない面があります。指導専任スタッフがいればもっと在籍生を受け入れられると思います。
 
▼団体詳細
団体名称●ハート・テンプル(旧リッツ・ライフ・スクール)
代表者名●宮前 心山(ミヤマエ シンザン)
所在地●〒501−3203 岐阜県関市神野1603−1 玉龍寺内(セキシカミノギョクリュウジナイ)
電話番号●0575−29−0480 FAX●0575−29−0348
URL●http://www4.ocn.ne.jp/~heart-mt E−MAIL●heart−mt@gaea.ocn.ne.jp
設立年度●1965年 在籍生平均在籍年数●1年半
入寮生数●男・・・3人 女・・・1人(平均年齢・・・23歳)入寮定員●男・・・―人 女・・・―人
通所生数●男・・・0人 女・・・0人(平均年齢・・・―歳)通所定員●男・・・―人 女・・・―人
年齢制限●無し 性別制限●無し 相談業務●有り(謝礼) 家庭訪問●有り(謝礼)
親の会●無し 会報発行●有り(年4回)
特記事項●入寮、通所共に定員は設けていない。
スタッフ状況●日中・夜間・・・スタッフは全員住み込みで寮生と寝食を共にしているので、昼夜を問わず常勤している。
スタッフ●正規・・・男3人・女―人/ボランティア・・・男―人・女―人/その他・・・男2人・女1人
 
▼通所費・入寮費
通所生●―
入寮生●入舎費・・・300,000円/月額負担金・・・130,000円(内訳・・・食事・部屋代80,000円、指導料50,000円)。
※上記金額はあくまでも基準となるもので、本人の指導内容や家庭の経済状況などを考慮して、ご家族との話合いで費用を決定する。
 
▼生活
日課スケジュール●[午前]5:30・・・起床/5:50・・・読経、坐禅/7:00・・・朝食、掃除/8:30・・・作業、学習[午後]12:00・・・昼食/1:30・・・作業・勉強など/6:00・・・夕食、入浴随時/7:30・・・読経、坐禅/10:00・・・消灯。
週末・休日●休日は毎週火曜日。但し、アルバイトに従事している場合は仕事先の規定に従う。
食事●1日3食決まった時間にとる。畑で採れた野菜中心の手造り自然食。
清掃●公共場所については分担して行う。個人の部屋は各人に任せているが、あまりにも汚い場合は強制的に清掃させる。
年間スケジュール●1月・・・上旬は冬休み/8月・・・中旬はお盆休み/12月・・・下旬は冬休み
※その他に不定期でキャンプや旅行、宿泊研修会などを行っている。







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