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■代表者に訊く
吉田 比登志さん
●美麻遊学塾代表
●団体の特徴
 
 「共に暮らし、共に創る、農に根ざしたオーガニックコミュニティー」というテーマを掲げて、美麻遊学塾を2003年4月より開講します。その母体となった美麻遊学舎は、信州アルプスの眺めのよい美麻村の校舎を使って23年前に始まりました。4年前の火事で建物を焼失しましたが、来年の春から120坪の建物を塾生とともに建設していきます。遊学塾は、(1)自然との感応と野生の身体の回復、(2)有機的生活に必要な基礎技術の修得、(3)オーガニックコミュニティー講座を3本の柱にして、1年間ともに暮らし、ともに創ってく場です。1年を3期に分け、4〜7月頃は体と心を軸とした期間、8〜11月頃は関係と社会を軸とした期間、12〜3月頃はそれぞれのやりたいことを探す期間と考えています。
 
左側が鶏小屋で右側が土蔵。2階には代表者の吉田さんの住居。他に犬2匹、猫6匹が家族として暮らす。
 
手作り味噌。会員の方には通信販売もするそうだ。
 
八百屋さんの内部。囲炉裏やカウンターなどもあり、催し物などの会場や仲間との団欒場所にも使われている。
 
民家に隣接する畑では様々な野菜を栽培している。オーガニックコミュニティーの原点になりえるのだろう。
 
遊学舎の八百屋さんでは地域通貨が使える。手作りの味噌や醤油も販売している。
 
遊学舎で飼っているヤギたち。寮生も乳搾りを体験できる。搾った乳は食卓にも上る。
 
 このプログラムの一番の目的は、野生の身体性と、互いが感応しあえる体を回復することです。私たちの社会では、やりたくない事も出来る自制心が必要だといわれています。このように本当にやりたいことを感じなくさせる教育が、今の社会の沈滞を作っているのではないでしょうか。現代の不況はバブルの後遺症といわれますが、そこにあるのは私たちの方向喪失感ではないでしょうか。遊学塾は音楽、カヌー、キャンプなどを通して、自分の体を開き、自発的に生きる道を求める意欲を培う場でありたいと思っています。
 次に(2)の基礎技術の修得としては、有機農業、建築、料理、編集、造園、ソフトエネルギー、動物飼育、染織、会計などを行います。生活を自前でするという、今では失われた能力を取り戻すことです。例えば料理の内容としては、調理の基本技術、包丁の研ぎ方、魚のおろし方、漬け物、豆腐、パン焼き、野外料理、燻製などいろいろなことをやります。
 (3)のオーガニックコミュニティー講座は、一人ひとりの生き方を自分の力で考える場です。1.自立と共生の両立、2.依存と勝手といいかげん、3.野生の身体の回復、4.笑いとは?、5.手を合わす、6.コミュニティー論、7.もうけとは?、8.構造安定性、9.最小限の技術、10.自給・循環型社会、11.地域通貨・フェアトレード、12.〜14.コミュニティー企業、15.まとめ・今後の進路、といった内容を考えています。
 
誰が呼びかけるでもなく、自然と人が集まってくる薪ストーブ周辺。薪は自分たちで割っている。
 
神戸震災のときに使われたテントを運び、自分たちで組み立てたもの。キャンプのときに利用したりもしている。
 
2003年春よりこの土地で美麻遊学塾がスタートする。元々は古い学校があった場所でこれから宿泊所を作る。
 
 もう一つの特徴は、単に学ぶ場ということではなく、生活し、生産する場を塾生とともに共同で設立するコミュニティー企業という形で運営していくことです。研修生の作業によって収益が上がった場合は、その配分をプールしておきます。終了後コミュニティー企業=遊学舎に参加する場合は、その人の持ち寄り原資に充当し、参加しない場合は生産支払または物産を送ります。
 そうして研修生の中から順次参加メンバーを増やしていきます。もちろん、やりたいことが他にある場合は、希望に合った場所を紹介します。このように学ぶ場と生きる場が一つになる場を考えていきたいと思っています。







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