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3. 法人ハイヤー・タクシー事業における評価項目体系およびチェックリストの検討
(1)法人ハイヤー・タクシー事業における評価項目体系およびチェックリストの検討にあたっての留意事項
(1)タクシーの運行形態や公共交通機関としての役割等に配慮する。
運行形態等: 流し/無線配車/駅待ち、乗客の快適性・安全性への配慮等
交通機関としての役割: タクシー事業の公共性(鉄道・バス等の大量輸送機関の補完)、環境保全上の役割(運行の効率化等による環境負荷の削減)等
 
(2)地域特性やそれに基づく車両や運行形態等については、評価項目、チェックリストとしては配慮しない。
 
(2)法人ハイヤー・タクシー事業における評価項目体系およびチェックリストの作成
 検討委員会での検討や業界団体における自主行動計画、事業者の取組事例を踏まえ、法人ハイヤー・タクシー事業における評価項目体系を以下のように作成した(チェックリストの内容については、巻末の「法人ハイヤー・タクシー事業におけるグリーン経営推進チェックリストと記入の手引き」参照)。
 また、検討にあたっては、自動車単体に関する取組は、平成13年度に作成したトラック事業(以下、トラックという)の場合のチェックリストを参考に行った。以下にトラックにおける項目との主要な相違点(評価項目の追加や変更を行った経緯)などを示す。
 
表3−1 評価項目の体系およびチェックリストとして取り上げた理由とトラックとの相違点
評価項目 チェックリストとして取り上げた理由とトラックとの相違点
大項目 小項目
1. 環境保全のための
仕組み・体制の整備
○環境方針

○推進体制

○従業員に対する環境教育
 (社)全国乗用自動車連合会(以下、全乗連)では、自主行動計画において取組方針、目標の設定、従業員教育の実施を定めている。企業等のヒアリング結果からは、環境保全全体の取組についての体制等を整備している例は少ないが、企業が環境保全の取組を一体となって進めるためには、まず、環境に関する方針を明確に示したうえで、責任者を決め、従業員教育を進めるなどの計画的な取組が必要であるので小項目はトラック、バスと同様の項目とした。
 具体的な取組内容については、以下の事項を追加した。

(従業員に対する環境教育)
・バスと同様に、事業者からの教育の実施だけではなく、従業員からの標語や提言の募集を行うなどにより、従業員と一体となった取組を進めることが重要との観点から、従業員からの標語や提言を募集に関する取組を追加した。
2. エコドライブの実施 ○燃費に関する定量的な目標の設定等

○エコドライブのための実施体制

○アイドリングストップの励行

○推進手段等の整備
 全乗連は適正運転の実施を自主行動計画で示している。また、ヒアリング結果では、各社とも重要な取組として位置づけ、様々な取組が進められている。「エコドライブ」は、燃費の向上、NOx・PMの排出削減や、安全管理や事故防止という面でも効果がある取組である。運輸業界で緊急の課題となっている燃費の向上、自動車排出ガス対策などを通じて環境と経営の両立を図るうえで基本となる項目であるので、小項目はトラックの場合と同様とした。
 具体的な取組内容については、以下のように変更、追加を行った。

(燃費に関する定量的な目標の設定)
・トラックの場合は、燃費および燃料使用量の両項目についての目標の設定を想定したが、タクシー場合は燃費管理が通常であるので、小項目の「燃費等」を「燃費」に改め、合わせて燃料使用量による目標設定欄を削除した。
・走行距離および燃費の使用状況、定量的目標の記入表の車種区分をタクシーの車両に合わせて変更した。

(エコドライブのための実施体制)
・エコドライブに関する基礎的知識に関する教育・指導の内容は、(社)東京乗用旅客自動車協会の取組およびNOx・PM法の自動車管理計画書作成のための「事業者の判断基準」を参考に作成した。
・実技講習会への参加によるエコドライブの講習については、ハイヤー・タクシー業界では取組実績がないので、取組内容から除外した。
・燃費管理に結果に基づく指導、表彰は、ドライバーだけでなくグループ別で行う場合も多いので、グループ別の場合を追加した。

(アイドリングストップの励行)
・バスと同様に、エコドライブを実施するに際して、利用客の理解を得ることが重要であるので、そのためのステッカー等の車内掲示を取組に追加した。

(推進手段等の整備)
 タクシー事業の取組実態を勘案し、取組内容の一部を変更した。
・エコドライブを着実に実施するためには、エコドライブの重要性や取組姿勢をドライバーを教育・指導していくことが重要であるので、まず、ステッカー・等の車内掲示によるドライバーへの教育を取組項目とした。
・次いで、より積極的な取組として、手引の作成とそれを用いた教育・指導に関する取組を追加した。
・推進装置については、トラック、バス事業では、導入実績が一定以上あるものを取り上げたが、タクシー事業ではほとんど実績がないことから、導入が進みつつあるアイドリングストップ装置、今後の取組を期待するものとしてエンジン回転数警報装置を例示し、先進的な取組項目とした。トラックで例示したデジタルタコグラフは導入例が見られないこと、キー抜きロープは一部事業者で取組は見られたが、乗客乗降時の乗客への補助業務等を鑑み事業実態に合わないため対象から除外した。
3. 低公害車の導入 ○低公害車等:導入目標の設定と取組  低公害車は、CO2や大気汚染物質の排出削減などについて大きな環境改善効果が得られる。このため国土交通省、環境省、経済産業省における「低公害車開発普及アクションプラン」での取組、排出ガス規制の動向を考慮し、ハイヤー・タクシー業界でも率先して取り組むことが必要な項目である。
 小項目は、タクシーでのディーゼル車の導入実績が少なく、今後ディーゼル乗用車の生産も減少していくため、トラックにおける最新規制ディーゼル車に関する項目は除外し、「低公害車等:導入目標の設定と取組」のみとした。
 低公害車の範囲については、NOx・PM法での「自動車使用管理計画書」で、低公害車として位置づけられて、また、地方公共団体での助成対象としている国や地方自治体で低排出ガス車として認定されているLPG車も低公害車等とした。その結果、低公害車等は以下のとおりである。
 ・低燃費かつ低排出ガス自動車 ・・・燃費基準(トップランナー基準)達成車および低排出ガス認定車
 ・ハイブリッド自動車
 ・天然ガス自動車
 ・メタノール自動車
 ・電気自動車
 ・低排出ガス認定車(LPG車) ・・・国の低排出ガス認定車、および七都県市指定低公害車、京阪神六府県市指定低排出ガス車、山梨県指定低公害車、札幌市指定低公害車等の地方公共団体で定める低公害車
 ・ディーゼル自動車から代替したガソリン車およびLPG自動車
4. 自動車の点検・整備 ○点検・整備のための実施体制

○車両の状態に基づく適切な点検整備

○法定点検に加えて環境に配慮した独自の基準による点検・整備の実施
 ハイヤー・タクシー事業者においては、法定点検の実施率が高く、また、1ヶ月点検の実施や独自の点検整備基準による点検整備など独自の取組が行われている。
 このため、小項目は、車両の使用状況等を見ながら適切な時期に、適切な点検・整備を進める体制を構築することを念頭において、ドライバーや整備員に対する教育や情報の提供を内容とする「点検・整備のための実施体制」、日常の運行における車両の異常に対応した「車両の状態に基づく適切な点検・整備」および「法定点検に加えて環境に配慮した独自の基準による点検・整備の実施」とした。
 *トラックにおける考え方については、バス事業の「評価項目4:自動車の点検・整備」を参照のこと。
 具体的な取組内容については、バス事業の場合と同様、トラックの内容を大幅に変更するとともに、新たな項目を付け加えた。

(点検・整備のための実施体制)
 タクシー事業の場合は法定点検の実施率が高く、点検・整備も自社工場で行っている場合も多いこと、整備管理者に加えて整備員も設置されているなど体制が整備されている。このためドライバー、整備員の役割に応じた整備に関する情報提供、教育の実施を取組内容とした。
・ドライバーに対する教育項目は、日常業務の中で車両の異常を判断し、的確に整備員や整備管理者に伝達することに必要な項目とした。
・整備員に対しては、環境面に着目した点検整備に関する教育の実施を取組項目とし、(社)東京乗用旅客自動車協会資料を参考に、環境面からの具体的な事項を例示した。

(車両の状態に基づく適切な点検。整備)
 トラックの場合には、整備事業者への委託が多いことから、整備事業者への情報提供など密接な連携を進めるための取組を対象としたが、タクシー事業者の場合には、自社での整備が多いことから、整備事業者に委託することに限定せず、広く車両の使用状況等を見ながら迅速な点検・整備を実施することを取組項目とした。
・環境への負荷の増加原因となる恐れがあり、迅速な対応が必要と考えられる現象を整理し、LPG車の臭気の悪化(燃料の異常燃焼)、燃費の悪化(原動機や走行装置の異状による燃料消費量やCO2の増加)、エアコンの効果の低下(エアコンガスの漏洩)、異常音の発生を追加し、具体的に例示した。

(法定点検に加えて環境に配慮した独自の基準による点検整備の実施)
 トラック事業においては、法定点検に加えて厳しい使われ方等も考慮したとしていたが、内容がわかりづらいとの委員の意見を受け、「環境に配慮した」と表現を変更した。
・3ヶ月ごとの法定点検に加えて、より短い期間で、独自に点検項目を定め、自主的に点検を実施している例が多く、環境面からも効果があると考えられるので積極的な取組項目とした。
・環境に配慮した独自の点検・整備の個所としては、タイヤの空気圧の点検・調整、エンジンオイルの交換、エンジンオイルフィルタの交換を例示した。
・環境に配慮した独自の点検・整備基準を設定している事例が見られるので、具体的例示項目以外の独自の基準を記入できる項目を追加した。
5. 廃棄物の適正処理
およびリサイクルの推進
○廃棄物の適正処理  車両の走行に伴う環境保全対策だけでなく、廃車や整備時の二次公害の防止や、資源の有効活用等も事業者にとって重要な取組である。廃車にともなう主な廃棄物であるフロン、エアバック、シュレッダーダストは自動車リサイクル法の対象となるため、ここでは、整備等に伴って生じる廃油、廃タイヤ、廃バッテリーに関する項目とした。
 「処理やリサイクルを適切に実施している業者に委託している」という項目が、具体的にどうするかわかりにくいという指摘があったため、記入の手引きに「購入、整備している事業者に廃棄物処理を依頼すること」と明確にした。
6. 空車走行距離の削減
および効率的走行の推進
○空車走行距離の削減

○効率的走行の推進
 空車走行距離の削減や効率的な走行の推進は、営業の効率化を主要な目的とした取組であるが、結果的には走行距離の削減等による環境対策に資するものであるので評価項目とした。
 全乗連の自主行動計画では、衛星を利用した配車システム(GPS−AVMシステム)の導入について数値目標が設定されている。また、事業者においてGPS配車や乗合タクシーの導入等タクシーの実車率を上げる努力が行われており、空車走行距離の削減や効率的な走行は業界の重点的な取組となっている。

(空車走行距離の削減)
タクシーの運行形態から見みて空車走行距離の削減のためには、如何に効率よく乗客の確保を行うかが重要である。このため、無線配車やGPS−AVMシステムの活用、顧客の集中情報のドライバーへの伝達による実車率の向上等の取組を対象とした。

(効率的走行の推進)
車両の稼働率向上の観点から繁忙期、閑散期にあわせた稼動計画の策定と実施、乗合タクシーの導入による乗車効率の向上を取組項目とした。
 なお、タクシーの利用促進を図る施策をおこない、実車率を向上させ、環境負荷を低減するという観点から、福祉タクシーの導入や運賃・料金の多様化を取組項目とするかを検討したが、福祉タクシーはバリアフリー対策であり、運賃の多様化は経営上の取組という側面が強いため、取組項目としないこととした。
A. 事業所における
環境保全
○グリーン購入の実施

○エネルギー・資源の節約

○ごみの排出抑制

○周辺環境への配慮
 営業所における環境保全の取組は、管理部門における事務処理等に際しての取組と操車場などでの車両に関する取組がある。前者には、グリーン購入やエネルギー、紙、水等の節約、ごみの発生抑制、分別等がある。後者には、アイドリングや扉の開閉時などの騒音による周辺への影響、洗車水の節約などがある。
 こうした取組は、事業者が明確な方針を示すことによって容易に取組が可能であり、既に、多くの企業が取組を行っている事項である。このため、マニュアルでは各事業者が様々な工夫を行い、独自の取組として進められることを期待して任意項目とした。
B. 社会との
コミュニケーション
○社会への取組のアピール

○住民からの苦情への対応
 事業活動を進めるうえで、地域社会と良好な関係を保つことが重要である。そのための取組として、事業者の環境保全活動の状況の公表、地域と協働した取組の実施等が考えられる。また、排ガスや騒音等の苦情に対し素早く対応できる体制を作ることも必要である。
 こうした取組は、タクシー事業だけでなく全ての企業に要求される事項であり、各企業とも何らかの形で既に取組でいる事項だと考えられる。このため、このマニュアルでは各事業者が様々な工夫を行い、独自の取組として進められることを期待して任意項目とした。







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