2. エコドライブの実施
(1)取組のポイント
○燃費に関する定量的目標の設定やエコドライブの計画的な実施
○エコドライブのための実施体制の整備や指導・表彰の実施
○アイドリングストップ*の励行と取組の見直し
○推進手段としての手引きや装置等の整備
○利用者の理解を得るための働きかけ
* アイドリングストップは、アイドルストップやエンジンカットと呼ばれる場合もあります。
「エコドライブ」(省燃費運転)とは、急発進・急加速・急ブレーキを控える、経済速度で走る、タイヤの空気圧を適切にするなど効率的な走行によって、走行中の燃料消費量を抑える経済的な運転方法です。
エコドライブを会社として実施し、燃費の改善を図ることはコストの削減につながります。リッター当たりの走行距離が仮に3.0km/lから5%に相当する3.15km/lに伸びた場合、年間で5万km走行する車両1台につき約5万円のコスト削減が見込まれます(軽油価格:65円/lとして算出)。同様に20%に相当する3.6km/lに燃費が伸びれば、コスト削減額は約18万円にものぼります。
また、地球環境保全の観点からはCO2の削減、沿道における大気汚染や騒音の低減にも効果があります。エコドライブへの取組を通じてドライバーの意識が向上すれば、安全管理や事故防止という面でも効果が期待できるため、バス事業者にとって重要な取組といえます。
エコドライブによって燃費の改善や環境負荷の低減を図るためには、まず、日頃から燃費管理を徹底して行い燃費の現状を把握した上でそれをもとに燃費の改善目標を設定します。また、エコドライブを計画的に進めるためには、推進のための責任者を設置することが必要です。さらに、実際にエコドライブに取り組むドライバーへの教育や指導、ドライバーの励みになるような表彰制度なども有効です。また、会社としてエコドライブの結果を把握したり、ドライバーがエコドライブに取り組みやすいような装置等の導入も望まれます。
(2)チェック項目の解説と関連資料
(1)燃費に関する定量的目標の設定等
チェック項目
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解説
会社としてエコドライブを体系的に進めるためには、まず現状の燃費を把握する必要があります。
まず、会社(事業所等)全体での燃費を把握し、次に車両別に把握していきます。車両別に燃費が把握できれば、それをもとに、用途別(乗合、高速、貸切等)や路線別、車種別、年式別、型式別、同一車両に乗務するグループ別、あるいは車両の担当者を決めている場合にはドライバー別等のように、様々な切り口で細かく把握することが可能となります。
チェック項目
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解説
エコドライブによる燃費削減効果を活用して、会社(事業所等)として燃料使用量の総量を削減するための目標を設定します。車種別やグループ別、ドライバー別などの小さな単位で把握した燃費を踏まえ、それぞれの単位ごとに目標を設定したり、会社(事業所等)全体での目標を設定します。
定量的な目標値は、燃費を経年で把握したうえで、目標燃費の変化量や改善率などを、基準となる年の値との比較(基準年比)、前年の値との比較(前年比)、前年の同期や同月との比較といった形で設定します。
○燃費に着目した目標設定
・目標燃費の設定:○○km/・ など
・改善率の設定:○%改善 など
チェック項目
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解説
エコドライブの燃費削減効果を、燃料使用量の削減に結びつけるためには、エコドライブを会社(事業所等)全体で継続的・計画的に進めることが必要です。そのためには、会社(事業所等)全体で取り組むための推進計画を策定します。
エコドライブ推進計画に盛り込む事項としては、次のものが考えられます。
・目標値、目標達成期間、目標達成のスケジュール
・エコドライブ実施責任者
・エコドライブ実施のための手順
エコドライブの重点項目、アイドリングストップの実施基準、エコドライブ実施状況の報告・チェック方法、日常・定期の指導及び教育の実施方法
・アイドリングストップの推進について特に必要な事項
・エコドライブ推進月間等、エコドライブの必要性をドライバーに喚起するための全社的な取組等
チェック項目
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解説
取組結果をもとに、目標の達成状況を把握し、必要であれば見直しを行います。見直しのためには、あらかじめ見直しのための仕組みを設けておく必要があります。
見直しの仕組みとは、取組結果の把握、結果の評価をもとに、目標が達成できなかった場合には、なぜ達成できなかったのかその原因を探り、また、より一層の向上が必要な場合には、次の目標や計画を策定するための手順をいいます。
見直しの仕組みとして定めておく事項には次のものがあります。
・見直しのための組織や責任者
・取組結果の整理方法と責任者への報告の手順(報告様式、報告時期等)
・見直しの期間
・ドライバーからの意見の収集方法等
例えば、燃費データの整理や評価の仕方としては、次の方法があります。
○結果の確認
・営業所・支店単位等の実施状況の整理
・車両運行月報等でのデータの整理
・車両別走行距離および使用燃料の対前年比較表の整理
○結果の評価
・目標達成状況の解析と評価
・グループ別の燃費管理の評価
取組の改善、見直しには、これらのデータを関係者に周知し、経営層、エコドライブ責任者、ドライバー等がそれぞれの立場で意見を出し合い、工夫することが必要です。
関連資料
a. 燃費を把握する方法の例
燃費を継続的に把握し、燃費管理へ活用することが、環境保全と経営改善につながります。燃費の把握に必要な走行距離、燃料の給油量について、次のような様式を活用して把握します。
まず、車両別に把握します。そのデータをもとに、車両の型式別や年式別、用途別(乗合、高速乗合、貸切等)、営業所別やグループ別、ドライバー別に加工して把握していきます。例えばアイドリングストップ装置付き車両のみのデータを抽出することも可能となります。
また、毎月のデータが把握可能な場合には、四半期や半期、年間といった集計単位でデータ取りまとめて比較することも可能です。
車両別 燃費実績表 (月間集計)
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型式別 燃費実績表 (年間集計)
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営業所別 燃費実績表 (年間集計)
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b. エコドライブによるコスト削減効果
仮に、年間の走行距離を5万km、軽油価格を65円/l、エコドライブによる燃費向上率を5%、10%、20%と想定し試算してみました。これによって、次のようなコスト削減が見込まれます。
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通常運転 |
エコドライブによる燃費向上率 |
5%向上 |
10%向上 |
20%向上 |
リッター当たり走行距離 |
3.0km/l |
3.15km/l |
3.3km/l |
3.6km/l |
年間の燃料消費量 |
約16,667l |
約15,873l |
約15,152l |
約13,889l |
年間の燃料費 |
約108万円 |
約103万円 |
約98万円 |
約90万円 |
コスト削減額 |
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約5万円 |
約10万円 |
約18万円 |
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(注)年間走行距離:5万km、軽油価格:65円/lとして算出した。 |
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