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第1章 事業の概要
 
1. 本事業の背景と目的
 わが国では、トラック運送事業が貨物輸送を支える基幹産業として、経済発展や国民生活の向上に大きな役割を果たしている。一方、地球温暖化や大気汚染の問題が依然深刻な状態が続いており、平成14年3月には「地球温暖化対策推進大綱」が決定された。その中で、各業界における積極的な環境保全活動が強く求められており、運送事業者におけるグリーン経営(環境負荷の少ない事業運営)の推進が、運輸部門における重要な温暖化対策のひとつに位置づけられている。
こうした状況に先駆けて、(社)全日本トラック協会では、「環境基本行動計画」を策定し、総合的な環境保全への取組みを積極的に推進している。環境保全活動を進めるための手法として、ISO14001(環境マネジメントシステムに関する国際規格)があるが、中小規模の事業者が大半を占めるトラック運送業界においては、経済的・人的負担が大きいISO14001の認証取得は容易ではない。
 そこで、平成12、13年度の2年間に渡り、交通エコロジー・モビリティ財団では日本財団からの助成金を受けて、(社)全日本トラック協会および各都道府県トラック協会の協力を得ながら、トラック運送事業者の自主的な環境保全への取組を支援・推進するための「トラック運送事業におけるグリーン経営推進マニュアル」を作成した。このマニュアルはISO14031(環境パフォーマンス評価に関する国際規格)の考え方に基づき、取組むべき環境保全項目の各々について、その具体的取組内容を明らかにするとともに、目標の設定と評価が容易にでき、これを通じて経営のグリーン化が進められるようになっている。
 本事業は、このグリーン経営推進マニュアルに基づく環境保全活動を更に推進するため、平成15年度での導入を目指しグリーン経営認証制度を検討するものである。この制度は、マニュアルに基づいて一定のレベル以上の取り組みを行っている事業者に対して、審査の上認証・登録を行うものであり、事業者の環境改善の努力を客観的に証明することにより、事業者の取組み意欲の向上につなげるとともに、トラック業界の環境問題への熱心な取組みを周知するツールとしても使用していく。
 また、制度の一環として単なる認証の実施に止まらず、財団からの指導、支援をあわせ行って、より実効ある取組みの推進を図り、運送業界における環境負荷の低減につなげるものである。
 
2. グリーン経営認証制度の基本的考え方
 グリーン経営認証制度の検討にあたっては、下記の基本的な考え方に基づき検討をした。
 (1) ISO14001(環境マネジメントシステムに関する国際規格)認証取得に較べ負担が少ないものとし、中小規模の事業者にとっても実施・継続できるものとする。
 (2) マニュアルに基づいて環境保全活動に取組んでいる事業者を審査のうえ認証を付与する方式とする。
 (3) 環境保全活動は継続的に取組むことが必要であり、その実効性を担保するために、認証は一定期間による更新制とする。
 (4) 制度の一環として単なる認証の実施に止まらず、財団からの指導、支援をあわせ行って、より実効ある取組みの推進(パフォーマンスの継続的向上)が図れるものとする。
 
3. 検討項目
(1)具体的検討項目
1)認証制度の検討
(1)類似の認証制度事例の調査
 ISO14001以外の認証制度を調査し、「グリーン経営認証制度」検討の参考とした。
(2)認証制度の内容の検討
ア. 認証付与方式
イ. 認証基準の検討
ウ. 認証の更新制
エ. 認証手順及びその手続き
オ. 認証の取消し
カ. 認証料金体系
 
2)運営体制の検討
 認証制度を運営するために必要な組織、体制について検討した。
(1)審査体制
(2)運営委員会
(3)異議申立て処理委員会
(4)運営組織
(5)ISO9001認証取得の必要性
 
3)普及方策の検討
 制度を広く事業者に普及させるためのインセンティブについて検討した。
 
(2)日程
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4. 実施体制
 本事業は、学識経験者、トラック運送事業者団体、トラック運送事業者及び行政機関で構成する「グリーン経営認証制度検討委員会」を設置し検討を行った。
 本委員会では、グリーン経営認証制度の基本的な事項に関して審議したものであり、今後、検討が必要な事項(運営の詳細など)は、平成15年度に立ち上げる「運営委員会」で検討していく。
 
「グリーン経営認証制度検討委員会」委員名簿
(敬称略)
委員長 石谷 久 慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授
委員 安藤 寛男 有限会社安藤興運 代表取締役
後藤 敏彦 環境監査研究会代表幹事
小林 章 日本通運(株)作業管理部品質保証・教育・安全管理専任課長(前任)
平川 学 日本通運(株)作業管理部品質保証・教育・安全管理専任課長(後任)
瀬川 幸一 上智大学理工学部化学科教授
大聖 泰弘 早稲田大学理工学部教授
豊田 榮次 (社)全日本トラック協会 専務理事
牧野 良一 (社)東京都トラック協会 専務理事
真下 芳隆 (株)すみれ 代表取締役
横山 宏 (株)日立製作所 環境本部主管技師長
(以上五十音順)
関口 幸一 国土交通省総合政策局環境・海洋課長
五十嵐 一美 国土交通省総合政策局複合貨物流通課長(前任)
坂場 正保 国土交通省総合政策局複合貨物流通課長(後任)
神谷 俊広 国土交通省自動車交通局貨物課長
森崎 一彦 国土交通省自動車交通局技術安全部環境課長
辻村 邦康 国土交通省政策統括官付政策調整官
事務局 金丸 純一 交通エコロジー・モビリティ財団理事長
佐藤 将彦 交通エコロジー・モビリティ財団常務理事
加藤 信次 交通エコロジー・モビリティ財団交通環境対策部長
反町 泰雄 交通エコロジー・モビリティ財団交通環境対策部担当企画課長
調査 小林 正 (株)UFJ総合研究所マネジメントシステム部シニアコンサルタント
協力 三村 等 (株)UFJ総合研究所マネジメントシステム部チーフコンサルタント







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