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ヤドカリがヤドカリをつかむ理由(りゆう)
貝殼(かいがら)をめぐるヤドカリのけんか
 ヤドカリにとって気に入った貝殻を見つけることはとても重要(じゅうよう)で、ときには別のヤドカリがせおっている貝殻を奪い(うばい)、自分のものにしようとすることもあります。このとき、自分のせおっていける貝殻を激しく(はげしく)相手の貝殻にぶつけるなどの方法で、相手を貝殻おから追い(おい)出し、その貝殼に入ります。追い出されたほうのヤドカリは、追い出したほうがそれまで使っていた貝殼に入ります。そのため、この行動(こうどう)は「貝殻の交換(こうかん)」ともよばれています。
 
貝殻から相手をつまみ出したホンヤドカリ(写真提供/今福道夫)
 
交尾前(こうびまえ)ガーディング
 主に(おもに)冬(ふゆ)の間(あいだ)の潮(しお)だまりで、大きなヤドカリが小さなヤドカリをはさみでつかんだまま歩きまわっている姿(すがた)を目にすることがあります。これは「交尾前(こうびまえ)ガーディング」とよばれる行動(こうどう)で、大きな方がオス、小さな方がメスです。つかまれているメスはすでに別のオスのこどもをみごもっています。メスが卵(たまご)から幼生(ようせい)を出したあと、すぐに交尾(こうび)をすることによって、オスは確実(かくじつ)に自分のこどもを作ることができます。そのため、メスをつれ歩きながら待って(まって)いるのです。
 
ホンヤドカリの交尾前ガーディング
 
陸(おか)にすむヤドカリ
 ヤドカリがすんでいるのは海の中ばかりではありません。オカヤドカリやヤシガニは海辺(うみべ)の石の下や草むらなどにすんでいるヤドカリです。これらのヤドカリは乾燥(かんそう)に強く、空気の中から酸素(さんそ)を取り込んで(とりこんで)呼吸(こきゅう)ができる、特殊(とくしゅ)な鰓(えら)をもっています。これらのヤドカリも海の中のヤドカリ同様(どうよう)、幼生(ようせい)の時期(じき)は海中で生活する必要があります。このため、親(おや)は幼生を放つ(はなつ)ために海にいかなければなりません。オカヤドカリやヤシガニが海からはなれた場所で暮らせ(くらせ)ないのは、そのためです。
 日本にすむオカヤドカリとその近似種(きんじしゅ)は全部で6種類です。昭和45年11月に日本に分布するオカヤドカリの仲間(なかま)は国の天然記念物(てんねんきねんぶつ)に指定(してい)されました。オカヤドカリの仲間は簡単(かんたん)に飼育(しいく)でき、大きさも、手ごろなので、かつて縁日(えんにち)などで売られていました。天然記念物になり、採集(さいしゅう)が禁止(きんし)されたことで、近ごろでは縁日でオカヤドカリを見かける機会がほとんどなくなってしまいました。
 
ムラサキオカヤドカリ Coenobita purpureus(写真提供/串本海中公園センター)
ヤシガニ Birgus latro.貝殼をせおわないオカヤドカリの仲間(写真提供/串本海中公園センター)
 
▼天然記念物になっているオカヤドカリの仲間
和名 学名 日本での分布
オオナキオカヤドカリ Coenobita brevimanus 宮古群島、八重山群島(沖縄県)
オカヤドカリ Coenobita cavipes 小笠原諸島、琉球列島
コムラサキオカヤドカリ Coenobita violascens 八重山群島(沖縄県)
サキシマオカヤトカリ Coenobita perlatus 小笠原諸島、八重山群島(沖縄県)
ナキオカヤドカリ Coenobita rugosus 八丈島以南の南日本
ムラサキオカヤドカリ Coenobita purpureus 八丈島以南の南日本
(仲宗根、1983を改編)







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