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会員のひとりごと
会員A様の投稿より
 
 私は船を持ってかれこれ12年、日曜日が釣り曜日と自他共に認めている者です。
 このほど、家内から私の釣り道楽に対して思いもよらぬ文句を受け、又その後の釣りでの出来事から、私自身の反省や小安協に対して色々感じることがありましたので、少しでも会員の皆様に参考になればと恥を忍んで投稿させていただきます。
 
【家内の文句】
 仕事が一区切りついたことから、明日は存分に釣りが楽しめると、馴染みの居酒屋で明日の釣果の期待などを話したところ、飲み仲間が「定年で暇ができた一緒に連れて行け」、「俺も俺も」と大変な持てようでした。帰宅後、得意になって家内に話すと、即座に「いい加減にしんさい!」と興奮気味に反対された。こちらも「なんでや、どうしていけんのや、お前に迷惑かきゃせんわい!」と切り返しました。ところが「何を云うとるんね、あんたが釣りにいっとる間中、まだ帰らんのか、事故したんじゃなかろうか、何かあったんじゃなかろうか、と心配ばかりしとるんよ、何ねそれに今度は友達をつれて行く、これ以上ひやひやさせなさんな、人様を乗せて何かあったらどうするんね、あんたの船であんただけ行ってや、どうせ安全運転なんかしやせんでしょうが、そうよ今度釣りに行く前にえっと保険に入っとって、死んだら、えっと金が掛かるんでしょうが、人のごうまで責任は持てんよ、まあ死ぬとは限らんが、絶対に人を連れていきんさんなよ」と喧しく言われ、余りにも激しい応酬にたじたじした次第です。
 
【その後の釣りの出来事】
 家内に文句を言われ、モヤモヤしたものの、やっぱり釣りの誘惑に勝てず一人で釣りに出かけました。前夜から準備万端、早朝から何時ものガソリン、餌、弁当、氷などを仕入れ、目的の釣り場に急航した。心ははやり、前夜のモヤモヤなどすっかり忘れ夢中になってメバルを釣り始める。思ったとおりすぐにいい当たりがあり、形の良いのがダブルで続けざまに4回来たところで、当たりが遠のいたので、船を元に戻す、同じ事を5回繰り返した。突然エンジンが起動しなくなり、何度繰り返しても同じ、どうしようもなく、誰かに助けを求めようと、手を振ったり大声で叫んだりしたが、一向に通じず、船は流されるばかり、慌てて錨を出そうとしたが、平素は牡蠣筏に付けて釣るので、ロープが15メートル位しか付いていなく、海底に届かず効き目無し、時間にして25分位で2キロ位流された頃、タオルを振っていたのに気が付いた船が来てくれ、「どうしたんかいのー」と聞いてくれたので「スターターが動かん」と説明したが、ブースターが無いので「どこか近くの港までなら牽引してやる」とのこと。「お願いします」と云いながら、何となくキイを回した途端にエンジンが起動した。手助けしてくれた年配の人が「こりゃーバッテリーの接触不良だ」と教えてくれ、「よく研いできっちり締めておかんとよくある事だ」と教えてくれた(相手の人は当然バッテリー周りを点検したと思ったとのことだったが、気が動転して何もしていなかった)。
 その後、性懲りもなく牡蠣筏に移動するも当たりは今一つ、突然スピーカーで「この筏に船を付けてはいけない、すぐ離れてくれ」と言われ、散々な一日であった。
 
【私の反省】
 私は、仲間の誘いと少しは安全第一の気持ちもあり、ルールとマナーを守って楽しい海洋レジャーを目指すという小安協の趣旨に賛同して会員になり、「お守りと思って会費を払うか」と会員を継続している者ですが、家内や家族の心配にも気を配らず、講習会などにも行かず、今まで数多くひやりとしたことはあったが「俺だけは絶対に事故を起こさない」と自負し、安全には殆ど関心がなく当然救命胴衣も着用せず、鍵をかけて保管していました(会員仲間を見ても私のような人も多く、会員以外の一部には、ルール・マナーも守らない憤りを通り越して悲しくなる人もいる)。
 しかし、家族への思いやりが大切なこと、又海では一つ間違えば大きな事故になると改めて知ることができました。これからは、家内に喜んで送り出してもらうよう小安協が何時も言っている安全十則を守り、他人を乗せた時はその人の家族のことを思って安全運航に努め、講習会にも参加して沢山の仲間と出会いたいと思っています。
 
【小安協への注文】
1 救命胴衣は何時も着用すべきだとは思うが、さくらマークは着用しづらい面もある。今年の夏頃から着用が厳しくなるとの話もあるので、小安協で統一した色で着易い救命胴衣を会員皆で着用する運動を起こして欲しい。「小安協のステッカーを付けている船はみんな救命胴衣を着ている。安全意識がやっぱり違う」と言われ、小安協のワッペンを付け、着易い救命胴衣でそのまま居酒屋で飲めるのが夢である。
2 今回の機関故障で、小さな事故でも如何に不安に襲われるかが体験できた。流され座礁などを考えれば、付近の船に早く、確実に連絡がつけば安心できる。小安協は海難防止を呼び掛けるだけでなく、海で事故にあった時、付近の船に連絡できる手段を考えて欲しい。
3 筏は許可を受けて設置されているのでしょうが、海は皆のもの、まして筏が有るのは魚釣りに一番良い場所です。小安協で牡蠣屋さんと旨く調整して筏で魚が釣れるようにして頂けないでしょうか。
4 小安協は、海上保安部の指導で全国規模の安全啓発・啓蒙活動を展開していると聞いているが、その活動はボートを持っている人達にも知られていないのではないかと思う。会員に救命胴衣を何時も着ることを強力に薦め、「さすが」と思ってもらうことや、海の上で頼りになる連絡手段を考えるなど、注目される努力をすれば、もっと多くの人に知られ会員も増えると思う。
 
【最後に】
 「せとかぜ」には、会員の本音の意見や提案がほとんど見当たらない。私の駄文が会員の本音を語り合うきっかけになれば幸いです。
 
*当協会への厳しいおしかりや注文ありがとうございました。個人や特定の団体に対する中傷・誹謗でない限り、会員の皆様の声を載せたいと思います。投稿をお待ちしています。(事務局)
 
海中転落海難に遭遇して
広島地区小型船安全協会会員 塚本 弘志
 
 私とN君は安芸郡江田島町小用沖の牡蠣筏でハギ釣りをするため、朝8時半頃、広島市船越の船溜りを出航した。9時頃目的地に到着、早速釣りを開始した。ハギは餌盗り名人の異名を持ち実に巧みに餌をかじり取ってしまう。二人は当然頭に血がのぼる。手を代え品を代えて夢中になり、昼も過ぎある程度ハギも釣れた頃、N君を見ると少し船酔いをしたらしい。陸に揚げようか、それとも帰ろうかと思案、N君はもう少し頑張ってみるとの返事なるも寒さも増してきたので2時半頃に納竿し、帰路についた平成14年12月1日、私たちが海難事故に遭遇した日であった。
 私等二人の船が坂町鯛尾沖に差し掛かった3時半頃、海中転落者に遭遇した。遭難者の「助けてー」の一声が耳に入って来た。即座に船を低速として横付けする。遭難者は2名である。一人は頭より鮮血が流れている。その方より引き揚げようとしたところ、「私は大丈夫、父の方を先に願います」との事。N君が若く元気なことから遭難者の頭の方を、私が足を持ち懸命に引き揚げようとするも、寒い時期で多くの着衣に海水が滲みこみ非常に重い。私とN君が力を合わせ引き揚げた。次に息子さんを引き揚げ、「大丈夫か」の問い掛けにも頭を上下するだけ。これは重体だと判断、早速、N君に携帯電話での海上保安部への通報と救急車の手配をお願いし、救急車到着の最短地に移送した。
 翌日、遭難者である本人が奥様と来宅され、遭難の様子を次ぎのように話された。
 「私達は釣りを楽しむため前日より計画を立て、救命胴衣も購入し、当日も着用して金輪島沖にて釣りを楽しみ、帰路についた途中、牡蠣船と衝突、投げ出された。」と話され、次の事を力説されました。
 「重傷を負った身ながら命が助かったのは、救命胴衣を着用していたからで、着用していなければ、命は無かっただろう。」
 そこで、日頃から余り着用していなかった私自身の反省も含め、小型安全協会会員の皆様は勿論、小型船ユーザーの皆様に救命胴衣の着用を必ず守って頂き「ストップ・ザ・プレジャーボート海難」に心がけて頂くように願う者です。
 私がここで口説く云う事ではありませんが、常に注意を怠らず、操船の基本やルールをしっかり守って航行することが、即ち、「防ごう・プレジャーボート海難」に繋がるのではないでしょうか。
 最後に今度の海難事故により重傷を受けられた方に心よりお見舞い申しあげると共に、一日も早く全快される事をお祈りいたします。
 
*塚本様と同乗されていた中本健次様は、このほど人命救助の功績により、広島海上保安部長表彰をうけられました。
 
向かって左側が塚本様、右側が中本様です







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