日本財団 図書館


(2)助成事業で購入した備品とその用途について
a)水質測定装置一式
 水温、塩分、溶存酸素を水深30mの深さまで詳細に測定することを目的として購入した。水質測定装置(アレック電子・ADO−105P)とポータブル電源(ERV−713)で構成される。
b)接写用写真撮影装置一式
 各海域に垂下したカキ類の稚貝の成長を接写で撮影して記録するために購入した。
 
(3)調査研究項目
 調査した項目それぞれについて方法と結果を述べる。
a. 水質分析
【方法】
 水質調査は、舞根湾3ヶ所と女川湾竹ノ浦において7月から12月にかけて毎月1回実施した。項目は、水温、塩分、溶存酸素、栄養塩(ケイ酸態ケイ素、リン酸態リン、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素)、クロロフィルa、フェオフィチンの6項目である。
 水温、塩分、溶存酸素について.は水質測定装置(アレック電子・ADO−105P)を使用し、各水域の表層から海底上まで水深1m間隔で測定した。栄養塩(ケイ酸態ケイ素、リン酸態リン、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素)とクロロフィルa、フェオフィチンの分析には、バンドン採水器を使用して各水域の水深5mで採取した海水を使用した。栄養塩分析用の海水は、採水後直ちにろ過して−20℃で冷凍保存し、オートアナライザー(ALPKEM社・Mode13590)を使用して分析した。クロロフィルa、フェオフィチンは、採水後にろ過したフィルターを90%アセトンで抽出し、蛍光光度計(TURNER DESIGNS・TD−700型)を使用して測定した。クロロフィルa、フェオフィチンの分析方法は、沿岸環境調査マニュアルII(水質・微生物篇)(日本海洋学会編、1990)に従った。
 
【結果】
 水質分析の結果は図3〜図32に示した。
 水温、塩分、溶存酸素についての図は、y軸に水深(m)を示し、温度や塩分などの鉛直方向の変化を表したグラフである。調査した各水域について、水質項目別に7月から12月までの各月の水質状況を示した。
 図3、図4は舞根湾のSt.1における水温の鉛直的な変化である。表層の水温は、8月に最高26.6℃と舞根湾の調査水域の中で最も高い値を示し、9月には22.7℃に低下した。表層以外(水深2mから10m)では、水温は9月まで上昇を続け、10月以降に低下した。St.1の水温の特徴は、8月の鉛直的な水温変化が非常に大きいことである。表層は26.6℃であるのに対し、水深7m以下では約16℃と、温度差が約10℃であった。9月にはこの温度差は約3℃になり、10月以降はほとんどなくなった。
 図5、図6は舞根湾のSt.2における水温の鉛直的な変化である。表層の水温は8月に最高24.1℃を示し、9月には低下した。水深2mから24mの間では9月に最高となり、10月に低下した。水深25m以下では10月に最高となり、11月に低下した。水深が深いほど温度の上昇が遅かった。St.2では、8月に表層から水深5mの間で温度差が6.6℃あり、5m以下では緩やかな温度変化であった。表層から海底上までの温度は10月以降にほぼ一定となった。
 図7、図8は舞根湾のSt.3における水温の鉛直的な変化である。表層水温は8月に最高23.4℃を示し、9月には低下した。水深2mから24mの間では9月に最高となり、10月に低下した。水深25m以下では10月に最高となり、11月に低下した。St.3では8月に表層から水深5mの間で温度差が5.5℃あったが、水深5m以下では緩やかな温度変化であった。表層から海底上までの温度は10月以降にほぼ一定となった。
 図9、図10は女川湾竹ノ浦における水温の鉛直的な変化である。表層水温は、9月に最高23.4℃を示し、10月以降に低下した。表層から海底上までの水温も同様に9月に最高を示し、10月には低下した。竹ノ浦では、舞根湾で認められたような鉛直的な温度変化はほとんどなかった。
 図11、12は舞根湾St.1における塩分の鉛直的な変化である。7月の塩分は、表層で25.2と舞根湾の調査水域の中で最も低くなった。8月、9月も表層では水深2m以下よりも約2低かったが、10月以降は表層から海底上までほぼ一定であった。St.1の塩分は表層以外では常に約33を保っていた。
 図13、図14は舞根湾St.2における塩分の鉛直的な変化を示している。7月、8月には、表層で塩分が低下したものの、水深5m以下では海底上までほぼ一定で、常に約33であった。
 図15、図16は舞根湾St.3における塩分の鉛直的な変化を示している。7月から8月にかけて表層で若干塩分の低下が見られたが、水深5m以下では海底上までほぼ一定で、常に約33であった。
 図17、図18は女川湾竹ノ浦における塩分の鉛直的な変化を示している。7月には表層から水深5m付近まで、10月、12月には表層から水深2m付近まで若干塩分が低下した。しかし、それ以外では海底上までほぼ一定で、常に約33であった。
 図19から図26は各水域の溶存酸素の状況を示したものである。グラフ内の太い点線は水産用水基準に定められている基準値(6mg/l以上)を示している。この基準を満たさなかった月のグラフは二重線で囲った。
 図19、図20は舞根湾St.1における溶存酸素の鉛直的な変化を示している。St.1では8月に水深8m以下で、10月に水深6m以下で溶存酸素が水産用水基準値を下回った。最も低い値は、8月の海底上の4.5mg/lであった。
 図21、図22は舞根湾St.2における溶存酸素の鉛直的な変化を示している。St.2では9月に水深21m以下で、10月には水深29m以下で溶存酸素が水産用水基準値を下回った。9月には、水深20mから21mにかけて、急激に溶存酸素が低下し、水深21mで最も低い4.81mg/lとなった。
 図23、図24は、舞根湾St.3における溶存酸素の鉛直的な変化を示している。St.3では、9月に水深23m以下で溶存酸素が水産用水基準値を下回り、海底上(25.4m)で最低値の5.24mg/lであった。
 図25、図26は女川湾竹ノ浦における溶存酸素の鉛直的な変化を示している。竹ノ浦では、7月から12月まで常に表層から海底上まで溶存酸素は十分であった。
 図27から図30は水深5mで採水した海水の栄養塩分析の結果である。分析項目別に、調査水域4ヶ所の7月から12月までの栄養塩の傾向を示した。図27はケイ酸態ケイ素濃度の変化を示したグラフである。どの水域でも9月にケイ酸態ケイ素濃度が低下して最低値の0.3〜1.9μmol/lを示し、10月に急激に6.7〜11.2μmol/lまで増加した。
 図28はリン酸態リン濃度の変化を示したグラフである。どの水域でも同様の傾向を示し、最低の0.06〜0.13μmol/lを示した8月から10月には0.2〜0.4μmol/lまでリン酸態リン濃度は増加した。
 図29は硝酸態窒素濃度の変化を示したグラフである。7月から9月にかけては0.07〜0.15μmol/lと低めに推移して10月以降に増加し、12月には4.0〜5.0μmol/lと硝酸態窒素濃度は増加した。
 図30は亜硝酸態窒素濃度の変化を示したグラフである。亜硝酸態窒素は7月から12月まで大きな変化はなく、0.1〜1.6μmol/lの間を推移した。
 図31はクロロフィルa量の変化を示したグラフである。舞根のSt.2、St.3は7月から12月までほぼ同じ傾向を示した。舞根のSt.1でも、10月以外はこれと同様の傾向であった。舞根のSt.1では10月にクロロフィルaが急激に増加し、最高値の11.0μg/lを示した。このとき、St.2、St.3では2.5、2.9μg/lであり、St.1はこの約3〜4倍のクロロフィルa量であった。一方、竹ノ浦では7月から9月まで約3.5μg/lと一定で、10月に5.3μg/lと増加したものの、11月以降に減少した。
 図32はクロロフィルの分解産物であるフェオフィチン量の変化をしめしたグラフである。フェオフィチンは竹ノ浦と舞根のSt.1で10月に1.7、2.0μg/lと若干高くなったが、それ以外ではおよそ0.5〜1.0μg/lであり大きな変化はなかった。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION