日本財団 図書館


(参考)里親制度の現状
 
(1)里親数の推移
 
表1 登録里親数などの推移
  登録里親 児童受託里親 委託児童数
昭和24年10月 4,153 2,909 3,278
25年〃 7,429 4,859 5,488
27年〃 11,310 6,736 7,488
30年〃 16,200 8,283 9,111
昭和35年度末日 19,022 7,751 8,737
40年〃 18,230 6,090 6,909
45年〃 13,621 4,075 4,729
50年〃 10,231 3,225 3,851
55年〃 8,933 2,646 3,188
60年〃 8,659 2,627 3,322
平成3年〃 8,163 2,183 2,671
5年〃 8,090 2,083 2,561
7年〃 8,059 1,940 2,377
9年〃 7,760 1,725 2,155
10年〃 7,490 1,697 2,132
11年〃 7,446 1,687 2,122
12年〃 7,403 1,699 2,157
13年〃 7,372 1,729 2,211
資料:厚生省報告例   
 
 表1のように、登録里親数は、年々漸減している。
 
(2)里親に関する意識
 里親制度が増えない理由について先行する2つの研究に基づき検討した。1つは平成9年度厚生科学研究「里親制度のあり方に関する研究」(主任研究者 網野武博)であり、もう1つは平成11年「里親の意識および養育の現状について」(庄司順一ほか)である。
 
ア 里親制度の普及について
 まず「里親制度のあり方に関する研究」(対象:児童相談所職員)によると、表2をみるとわかるように、我が国の里親制度不振の理由として、「養育里親希望者が少ないなど里親委託をめぐる状況によるところが大きいとするもので、64.4%と、約3分の2近くの児相がこれをあげている。2位以下にランキングされたものは5割を割っているが、血統を重んじる我が国の親子間によるところが大きいとするものが41.2%、施設養護よりも里親制度を振興させる政策誘導がないなど国の政策によるところが大きいとするものが38.1%であった。」という研究結果が出ている。
 
表2 里親制度不振の理由(MA)
順位   件数
1 養育里親希望者が少ない、子どものニーズにふさわしい里親が少ない。実親が里親委託を承諾しにくいなど、里親委託をめぐる状況によるところが大きい。 103 64.4
2 血統を重んじる我が国の親子間によるところが大きい。 66 41.2
3 社会的養育システムとして施設養護よりも里親制度を振興させる政策誘導がないなど、国の施策によるところが大きい。 61 38.1
4 児童相談所の委託、指導体制の不十分さや関係民間機関の未発達など、制度推進体制の不十分さによるところが大きい。 26 16.2
5 宗教を基盤にもつボランティア精神の未確立など国民性によるところが大きい。 25 15.6
6 里親委託が養子縁組の前提とされ試験養育期間と化しているなど、制度運営上の問題に寄るところが大きい。 21 13.1
7 就労形態の多様化、住居、家族構造の変化など、社会状況の変化によるところが大きい。 8 5
  その他 6 3.8
  合計 160 100
調査対象:児童相談所
 
 次に「里親の意識および養育の現状」(調査対象:里親)によると、表3をみるとわかるように、里親が増えない理由として「多い順に「里親制度が知られていない」(75.3%)、「血縁意識が強いなど社会的偏見が強い」(70.3%)、「育児不安など子育てが難しそうに思われている」(59.4%)、「他者のために役立とうとする家庭は少ない」(58.6%)、「共稼ぎの里親に対する支援体制がない」(53.1%)、「近年は女性の就労が増え、子育てをする余裕がない」(52.7%)、「里子より養子の希望者が多い」(52.3%)であった。
 住環境の問題や経済的負担が高いことがよく指摘されるが、里親が増えない理由としては、「そう思わない」がそれぞれ14.6%、13.0%と他の項目よりも「そう思わない」が多くなっていた。」という調査結果が出ている。
 
表3 里親が増えない理由
  そう思う どちらとも そう思わない N.A.
a 里親制度が知られていない 180
75.3%
38
15.9%
14
5.9%
7
2.9%
b 他者のために役立とうとする家庭が少ない 140
58.6%
74
31.0%
19
7.9%
6
2.5%
c 血縁意識が強いなど社会的偏見が強い 168
70.3%
45
18.8%
20
8.4%
6
2.5%
d 行政や児童相談所が積極的でない 109
45.6%
101
42.3%
24
10.0%
5
2.1%
e 里親が里子を選ぶ傾向があり成立しにくい 78
32.6%
112
46.9%
42
17.6%
7
2.9%
f 里子より養子の希望者が多い 125
52.3%
88
36.8%
18
7.5%
8
3.3%
g 住環境の余地がない 103
43.1%
97
40.6%
35
14.6%
4
1.7%
h あずかった後の支援体制不十分 104
43.5%
102
42.7%
25
10.5%
8
33.3%
i 子育ての経済的負担が大きい 113
47.3%
91
38.1%
31
13.0%
4
1.7%
j 女性の就労が増え子育てをする余裕がない 126
52.7%
86
36.0%
19
7.9%
8
3.3%
k 共稼ぎの里親に対する支援体制がない 127
53.1%
84
35.1%
18
7.5%
10
4.2%
l 育児不安など子育てが難しそうに思われている 142
59.4%
73
30.5%
18
7.5%
6
2.5%
m その他 15
6.3%
224
93.7%
調査対象:里親
 
 これらの結果が示唆していることは何かといえば、1つは、「我が国の里親制度が、これまで十分な振興をみていない理由に関する結果をみても、我が国においては、プライベートなあるいは親族的、血縁的家族関係を重視する文化や子育て観を基盤としている傾向が重視されている。今日においてもこの傾向は根強く、このことを視野におくことなく、純粋に福祉的観点からの社会的親、心理的親としての里親制度の振興、里親委託・受託の促進を図ることには限界があることを、今日においても重視する必要があることが示された。」という指摘があるように、我が国に文化的背景について今後十分に検討していかなければならないという点である。
 もう1つは、里親制度の普及について「里親制度について知られていないから普及しない」といった結果も出ており、里親制度についてのPR方法について検討していく必要がある。
 「里親の意識および養育の現状について」での里親制度を知った経路についての調査項目に対する回答結果(表4)をみるとわかるように、「「市町村の広報誌など」(28.5%)、「役所などの公的機関」(27.2%)、「新聞などのマスコミ」(17.2%)、「身近に里子や養子を育てている人がいた」(14.6%)であった。」という結果がでている。
 
表4 里親制度をどのようにして知ったか
1. 市町村の広報誌など 68 28.5%
2. 新聞などマスコミ 41 17.2%
3. 産婦人科医院 0 0.0%
4. 役所など公的機関 65 27.2%
5. 民間の相談機関 8 3.3%
6. 身近に里子や養子を育てている人がいた 35 14.6%
7. その他 62 25.9%
 
 また、親族や知人等に里親になることをすすめるかという点について、表5をみると、「「意義のあることだから積極的にすすめている」(10.0%)、「適当な人がいればすすめてみたいと思っている」(67.8%)、「苦労が多くてすすめられない」(11.3%)、「里親であることを知られたくないのですすめない」(2.5%)、「その他」(8.4%)であった。」という結果が出ている。
 
表5 親族・知人に里親をすすめるか
1. 積極的にすすめている 24 10.0%
2. 適当な人がいればすすめたい 162 67.8%
3. 苦労が多くすすめられない 27 11.3%
4. 里親であることを知られたくない 6 2.5%
5. その他 20 8.4%
合計 239 100.0%
 
イ 里親支援の強化
(ア)委託費について
 「里親の意識および養育の現状」によると、表6、表7をみるとわかるように、委託費については、「「現行の金額で十分である」(43.1%)、「現行の金額では少ない」(11.7%)、「その他」(24.7%)となっていた「現行の金額では少ない」場合、どの程度が適当かについては、無回答が28名中8名(28.6%)いたが、10万円〜15万円が多かった。」という調査結果がでている。
 
表6 委託費について
1. 現行の金額で十分 103 43.1%
2. 現行の金額では少ない 28 11.7%
3. その他 59 24.7%
N.A. 49 20.5%
合計 239 100.0%
 
表7 委託費の金額
1. 9万円 1 3.6%
2. 10万円 9 32.1%
3. 12万円 3 10.7%
4. 12万3千円 1 3.6%
5. 15万円 6 21.4%
N.A. 8 28.6%
合計 28 100.0%
 
(イ)研修などについて
 「里親の意識および養育の現状」によると、表8をみるとわかるように、子どもをあずかるまでの研修や説明について「全体として、「よくわかった」頻度は10%〜30%程度にすぎず、逆に「わからなかった」「説明を受けなかった・記憶にない」が10%〜40%以上みられた。」という結果がでており、研修や説明についての検討の必要性を示唆する結果になっている。
 
表8 子どもをあずかるまでの研修や説明でどれくらいわかったか
  よくわかった ある程度 わからなかった 説明を受けなかった N.A.
a 施設で生活している子どもの状況 78
32.6%
118
49.4%
15
6.3%
13
5.4%
15
6.3%
b あずかる対象となる子どもの一般状況 64
26.8%
119
49.8%
25
10.5%
16
6.7%
15
6.3%
c あずかることが可能な子どもの数と状況 51
21.3%
87
36.4%
39
16.3%
40
16.7%
22
9.2%
d 適応の家庭における心理的な問題とその対応 34
14.2%
117
49.0%
31
13.0%
37
15.5%
20
8.4%
e 子どもの実親に対する感情の受けとめ方 30
12.6%
88
36.8%
40
16.7%
60
25.1%
21
8.8%
f 実親やその家族との関わり方 38
15.9%
83
34.7%
40
6.7%
58
24.3%
20
8.4%
g 他の家族や近隣との関係で起こりやすいストレス等 33
13.8%
87
36.4%
43
18.0%
54
22.6%
22
9.2%
h 子どもの発達上の問題 41
17.2%
106
44.4%
38
15.9%
30
12.6%
24
10.0%
i 養子制度とその手続について 60
25.1%
88
36.8%
27
11.3%
40
16.7%
24
10.0%
j 子どもの社会的自立や施設へ返す場合について 39
16.3%
65
27.2%
34
14.2%
77
32.2%
24
10.0%







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION