○里親制度の拡充と新たな児童福祉の展開(厚生労働省)
厚生労働省は表題について本年10月に省令・告示を公布し、各都道府県・指定都市への通知を示す予定。7月26日に厚生労働省において「全国里親制度担当者説明会議」が開かれた。
1. 里親認定等に関する省令
里親の種類を(1)養育里親(2)親族里親(3)短期里親(4)専門里親として、それぞれの里親の定義、要件、認定、登録などを定めている。
2. 里親の行う養育に関する最低基準
養育にあたっての最低基準を定め、児童福祉の一層の推進を求めている。
3 厚生労働大臣が定める専門里親研修・告示
研修機関、科目、研修の方法等淀めている。
4. 「里親の認定等に関する省令」及び「里親の行う養育に関する最低基準」についての厚生労働省事務次官通知
上記の「省令」及び「最低基準」について、制定の趣旨、里親の認定等に関する省令、里親の行う養育に関する最低基準それぞれについて指示している。
5. 「里親制度の運営について」厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知
里親制度の趣旨、制度の運営、里親の認定等、里親への委託、里親が行う児童の養育、里親への指導、支援、研修、制度の普及などについて指示している。
6.「専門里親研修制度等の運営について」「養子制度等の運用について」「里親支援事業の実施について」「里親の一時的な休息のための援助の実施について」並びに「措置費(運営費)支弁台帳について」雇用均等・児童家庭局長通知、が出される。
全国里親制度担当者説明会会議資料
(厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課)
里親制度の拡充と新たな児童福祉の展開
1. 地域児童福祉施策と里親制度の拡充
(1)地域において子育て支援セーフティネットの整備を進める
児童をめぐる環境が厳しさを増している。虐待、非行、不登校、ひきこもり等の問題が深刻化している。
こうした問題の発生予防、早期発見、早期対応そして適切なケアのためには、地域における子育て支援セーフティネットの整備を図ることが緊喫の課題となっている。新たな児童福祉行政の展開が問われており、なかでも施設と里親に新たな機能が求められている。
施設か里親かという二者択一的なとらえ方ではなく、両者がそれぞれの役割を果たしながら、パートナーとして相互に連携をとり、協働して「児童の最善の利益」を目指した子育て支援が極めて有効であるという認識のもと、それぞれの機能の拡充を図ることとする。
(2)児童福祉施設に新たな機能の発揮を求めていく
入所施設は、入所児童のケアに大きな役割を果たしてきている。今後は、地域の中で児童福祉推進の中核的な機能を発揮する組織として、これまで培ってきた子育てのノウハウやサービスを地域社会に還元していくものとする。このため、生活施設としての機能に加え、住民に対する相談・援助活動、子育て支援短期利用事業、施設から家庭復帰した子どもやその家族へのフォローアップ、里親に対する支援など、地域の子育ての支援の拠点施設としての機能を充実していくこととする。
(3)里親制度を充実し、改めて本制度を積極的に活用していく
我が国の里親制度は、児童福祉法の施行により昭和23年に発足した。同法に基づく登録里親はその後逐年増加したが、昭和37年をピークに以後は漸減の一途をたどっている。現在我が国においては、要保護児童の約6%が里親のもとで養育されているが、施設におけるケアにウエートがかかっている状況にある。
欧米、特にアメリカ、イギリス、フランスなどにおいては、要保護児童の過半が里親によってケアされている。また、諸外国においては、親族による里親ケアや虐待を受けた児童をケアする専門里親が普及している。
児童の発達においては、乳幼児期の愛着関係の形成が極めて重要である。できる限り家庭的環境の中で養育されることが大切だ。この意味で、虐待など家庭での養育に欠ける児童を、温かい愛情と正しい理解を持った家庭の中で養育する里親制度は、極めて有意義な制度であり、その活用のため大幅な制度改善を図ることとする。
2. 具体的な対策
(1)新しく専門里親及び親族里親を創設する
(1) |
専門里親の創設
児童の養育経験のある里親、子どもの教育・福祉・保健・医療等に従事した経験があり、かつ専門的訓練を受けた者を専門里親とし、以下の専門的ケアに見合う手当を支給する。家庭での親密な援助関係を必要とする被虐待児等に対し、父性、母性に満ちた家庭的な援助を提供(原則として2年以内)する。これにより、家庭復帰の障害となっている問題の改善や治療を図り、自立を支援する。 |
(2) |
親族里親の創設
三親等内の親族に対して、児童の生活費等を支弁することにより、親族による養育を保障する。これにより保護者のいない児童ができるだけ親族の温かい関係の中で養育されるような環境を整備する。 |
(2)短期里親制度の運用を弾力化し、活用を図る
短期里親の委託期間の弾力化を図り、夏休み等の期間に広域的にホームステイのような形で、養育を必要とする児童を1ヶ月以内で養育する、あるいは月に1〜2回程度週末に委託された児童を養育する場合においても短期里親として活用する。
従来の短期里親は、保護者の疾病(長期入院治療が必要な場合に限る)、拘禁などの理由により、おおむね1ヶ月から1ヶ年の期間、児童を養育し、自立を支援する里親として認定されていた。
(3)研修などを通じ里親を強力に支援する
専門里親希望者及び養育里親に対し、以下の支援事業を実施する。
(1) |
研修
・ |
基礎研修(2・3日間)
登録後に里親制度や子どもの養育についての基礎的な知識等の習得のための研修 |
・ |
応用研修(おおむね3ヶ月間)
条件を満たした専門里親を希望する者に対する専門的な研修。(通信教育(8教科)、
スクーリング(4教科)及び実習(7日間) |
|
(2) |
相談
児童相談所等に里親対応専門の職員(非常勤)を配置し、里親家庭に対し委託児童や里親自身に関する相談事業を実施する。 |
(3) |
一時的休息のための援助(レスパイト・ケア)
里親家庭が種々の理由により委託児童の養育を一時的休息のための援助(レスパイト・ケア)を行う事業を、他の施設や里親を活用して実施する。 |
(4)児童相談所等の体制を整備する
(1) |
里親担当職員の配置
児童相談所に、里親担当の児童福祉司や非常勤職員を配置する。 |
(2) |
児童福祉司等の意識変革
児童福祉司等の児童相談所職員に、里親に関する研修を実施して意識変革を図り、里親委託を促進する。 |
(3) |
児童委員の活用
児童相談所との連携のもと、里親希望者の調査や委託後の里親家庭のアフターケアを行う。児童委員が里親に関心を持ち、里親支援の組織として活動できるよう、また自らが里親登録を検討できるよう、児童委員の研修において、里親に関する情報を提供する。 |
(4) |
市町村による協力体制
市町村が主体となって、児童委員や子ども家庭支援員(家庭訪問支援事業)等を活用して里親の支援を図り、児童相談所の業務に協力する。 |
(5)里親希望者及び里親制度支援者へ積極的に情報提供を行う
里親希望者やNPO等の里親制度支援者に対して、ポスター、リーフレットなどによる情報提供や子育てネット等を媒体にした情報提供を実施し、里親制度に対する広報啓発によって広く里親希望者や里親制度を支援してくれる方々の開発を図る。
3. 専門里親について
(1)目的
特に家庭での親密な援助関係を必要とする被虐待児等に対し、施設では提供できない家庭的な援助を提供することにより、家庭復帰を前提として問題性の改善や治療を図り、自立を支援することを目的とした専門里親制度を創設する。
(2)対象児童
被虐待経験等から心理的外傷を受け、又は問題行動があり、保護者に監護させることが不適当で、専門的ケアが必要であると診断された児童(2人以内)を対象とし、原則として2年以内の期間で委託する。
また、保護者が委託することに十分に納得しており、委託後に保護者による強引な引取り等の問題が発生しないことが予測されるケースとする。
(3)専門里親の認定及び登録
(1) |
専門里親とは、以下の基本要件のいずれかを満たし専門里親を希望する者であって、都道府県が行う研修を修了し、かつ都道府県知事が、申請に基づき必要な調査を行い、都道府県児童福祉審議会の意見を聞き、専門里親として認定した者。
i |
現に里親である者であって児童の養育に3年以上の経験を有する者。 |
ii |
保育士、児童指導員、児童福祉司、医師、看護師、保健師、教員その他児童の福祉、保健・医療、教育、矯正等に関連する資格を有する者であって、3年以上児童福祉施設等において児童の養育、相談援助等の業務に従事した経験を有する者。 |
iii |
前各要件に掲げる者と同等以上の力を有すると認められる者であって都道府県知事が適当と認めた者。 |
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(2) |
専門里親の登録の有効期限は、原則として2年間とし、2年を経過した専門里親については、毎年実施されている研修会への参加及びその家庭の状況等を調査のうえ、都道府県知事が再認定を行う。 |
(4)専門里親における養育
(1) |
専門里親は、児童の権利条約の趣旨を十分に尊重し、できるだけ早期の家庭復帰を目指すことに配慮すること。 |
(2) |
専門里親は、児童の養育に関し、定期的に児童相談所に報告するとともに、指導担当者とのケースカンファレンスを通してスーパービジョンや自立支援計画の見直しを必要に応じて行わなければならないこと。 |
(3) |
専門里親は、児童の行動観察記録をつけること。 |
(4) |
専門里親は、社会福祉法や児童福祉施設最低基準の趣旨に基づき、適切な情報提供、自主評価、苦情解決等による児童の利益の保護やサービスの質の向上に努めること。 |
(5)認定研修(おおむね3ヶ月間)
条件を満たした専門里親を希望する者に対する専門的な研修。通信教育(8教科)やスクーリング(4教科)及び実習(7日問)等を行う。
(6)専門里親に対する措置費の支弁
専門里親手当(90,200円)+事業費(一般生活費48,210円、教育費、医療費)
4. 親族里親について
(1)目的
児童の健全育成の観点から、保護者がいない場合親族によって養育されるべきであり、今般、三親等以内の親族に対して、委託された児童の養育費を支弁することによって、児童と親族との永続的なかかわりの保障や児童に対して親族による家庭的養育を保障し、児童相談所や児童委員との連携に基づき、児童の自立を支援することを目的とする。
(2)対象児童
現に監護する保護者が行方不明・死亡・疾病・拘禁のため、可能であれば三親等内の親族によって養育されるべき児童。
(3)親族里親の認定及び登録
(1) |
親族里親とは、家族や親族の状況が以下の基本要件をすべて満たし、親族里親を希望する者であって、都道府県知事がその申請に基づき家族状況等必要な調査を行い、都道府県児童福祉審議会の意見を聞き、親族里親として認定した者。
i |
現に監護する保護者が行方不明等の状態にあり、児童を養育する者がいない状態にあること。(養育拒否や虐待などの場合は除く) |
ii |
申請者は三親等以内の親族(祖父母、伯父伯母、兄弟)とする。 |
iii |
児童の養育について理解と熱意及び豊かな愛情を有すること。 |
iv |
申請者の家族の家庭生活が、精神的に健全に営まれており、虐待等の養育上の問題がこれまでになかったこと。 |
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(2)
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委託が解除になった場合、親族里親の認定は取り消されることとする。 |
(4)親族里親への委託期間
(1) |
行方不明や疾病等の状態にあった保護者の状況が改善・回復し児童との生活が可能になるまでの間 |
(2) |
親族里親の経済的理由が解消されるまでの間 |
(3) |
本人が18歳に到達するまでの間 |
(5)親族里親における養育
(1) |
親族里親は、児童の権利条約の趣旨を十分に尊重し、児童の権利擁護に配慮し、最大限の発達を保障できるように努めること。 |
(2) |
親族里親は、児童の養育に関し、定期的に児童相談所に報告するとともに、指導担当者の助言・指導を受けることとすること。 |
(3) |
親族里親は、児童との永続的な関係を確立するよう努めること。 |
(6)基本研修(2・3日間間)
里親家庭と同じように基本研修を受けなければならない。
(7)親族里親に対する措置費の支弁等
(1) |
親族里親については、事業費のみを支弁すること。 |
(2) |
児童福祉法56条により、収入に応じて徴収金を徴収する。 |
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