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漢詩初学者講座
吟詠家に漢詩のすすめ(59)
四国漢詩連盟会長
愛媛県吟剣詩舞道総連盟会長
伊藤竹外
 
一、老いに挑戦するは作詩に在り
 今、吟詠家も漢詩界も老齢化による会員の減少を最も憂えています。財団では少壮吟士の上限を六十五歳、吟道大学の入学資格を七十歳、全国名流大会の出演者は七十五歳、役員は八十歳を以って打ち切ろうとしていますが、さてこの後の老齢化対策は如何にあるべきでしょうか。
 前月号にスペインの有名画家ゴヤの八十歳の自画像に書かれていた「おれはまだ学ぶぞ」の記事を紹介しましたが、日本では浮世絵師の歌川豊国さんは九十三歳の時、桃山高校の定時制に入学し九十六歳で近畿大学生となり更に博士論文に挑戦すると言って勉強を続けながら惜しくも九十七歳で長逝しました。
 更には彫刻の無形文化財であった平櫛田中翁は百三歳の時、「今やらねば何時やれる、わしがやらねば誰がやる」と三十年分の彫刻資材の前で昂然と語ったのは今から五十年前でした。
 最近では吟道大学にも講師でご講演を頂いた医学博士の日野原重明先生(九十二歳)は朝日新聞に毎週連載しているエッセイをまとめて「老いから創める(はじめる)」の著書を刊行しています。
 わが財団の創始者の笹川良一先生はいつも六十歳を差し引いて三十の青年の意気込みで率先垂範して来られました。
 これら生涯現役で活躍せられた方々を思えば老齢化を嘆くことなく、特に常に頭を使う機縁を得ている作詩家は更に老いに挑戦し学ぶ努力を積み重ねたいものであります。
 
 この課題については註記として「呂山詩語集の参考詩語は病床に臥した本人自身の感懐を述べたものなれば誤らぬよう」と但し書きしておきましたが、やはりこの誤りが随所に出てきました。病床の人に贈る詩は当然その方々への思いやり、激励の語を述べるもので、もし本人の最もいやがる自らの嘆きを他から言われたらどう思うでしょう。
 「贈る」詩は常に相手へのいたわりの心遣いが必要です。
 
三、病臥の人に言うべからず
 次の詩語は前述の通り甚だ適切を欠き、およそ相手に贈る語ではありません。
 
四、病名は言わざるを可とす
 相手に贈る詩なれば病名は不要なるのみか、時には不快の念を与えかねないから避けるを可とせん。
 
五、同意又主観をさけること
 
六、送り假名に注意のこと
 
七、添削実例
(一)贈臥病人
 
(二)贈臥病人
 
(三)贈臥病人







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