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漢詩初学者講座
吟詠家に漢詩のすすめ(58)
四国漢詩連盟会長
愛媛県吟剣詩舞道総連盟会長
伊藤竹外
 
一、構成吟舞は現代漢詩家を待つ
 はからずも去る十一月十日、日本武道館に於いて開催された財団本部三十五周年記念全国吟剣詩舞道大会の企画構成番組「明治維新に学ぶ」の中に、この講座に投稿されていた「詠先賢古哲」(11・5月号)及び「詠勤皇志士」(12・6月号)の作品の中から水城辰美、小泉慶治、河合岳彬、岡田嘉崇、福岡賀秀泉、末本次夫氏などの優秀作が選ばれた他、昨年の鳥取国民文化祭吟詠剣詩舞道祭の構成吟にも、岡林粹憲、米森澄羽、清水敏夫、小倉照男氏等の優秀作品が選ばれて上演されました。
 正に画期的なことであり、本人達の喜びと栄誉はもとより現代漢詩界にとっても洵に意義深く、吟剣詩舞界との今後の提携、協力が更に期待される所であります。
 尚、昨年十月、弊会六六庵吟詠界五十五周年大会には「憂国詩人の生涯」(小原六六庵作)「虹よりも皎(あき)らかに」(拙作)の構成吟舞の他、賀詩九十八首、県外諸先生賦呈詩四十五篇など「現代を吟じ現代を舞う」の念願を徹底したプログラムでした。
 又、年々開催の中四国剣詩舞大会での愛媛県の企画番組は一貫して現代漢詩家の作品ばかりを取り上げています。
 今、四国漢詩連盟が発足し、今年第二回目の四国漢詩大会を香川で開催するべく企画中でありますが、更に多くの作詩家が育成されることを期待しています。
 
二、おれはまだ学ぶぞ
 先般或る新聞記事を見て感動しました。スペインの有名画家ゴヤの晩年(八十歳)の自画像と思える二本の杖をついている白髪の老人のデッサンが発見されましたが、その画面の上に「おれはまだ学ぶぞ」のタイトルが書かれていました。「おれはまだ頑張るぞ」ではなく已に名声遍き彼が八十歳にして「おれはまだ学ぶぞ」の意気込みや人生観はすごいと思います。
 今や吟界は八十歳隠退説が唱えられ漢詩界も老齢化を嘆く声を聞くところですが、我々も百七十年前の画伯の意欲を学びたいものです。
 
三、課題「觀梅」(看梅、探梅、雪中探梅何れも可)について
「觀」は観月の如く見物する、「看」はのぞき見るの如く新字源の同訓異義欄には「みる」の違いを十四字も列記していますが、要は二十四気節の第一番たる梅花を日本人はこよなく愛し親しんでいる素材であり、「だれにもできる漢詩の作り方」にも詩語集成があり初学者にも容易に手掛けることのできる課題です。
 ところが投稿詩を見ると案外むつかしいものであることが解りました。
 先ず第一に詩語集の模倣が安易で常識的、平凡で新奇に乏しく、第二には詩語集を餘りにも多くの人が使いすぎて俗になっているものが多く、又技巧が伴わないためにこれをこなしていない作品が多く、やむなく添削を余儀なくせられました。例えば次の如く。
 
(一)題に合っていない
 
(二)二字二字三字が脈絡してない
 
(三)下三字が据っていない
 
四、添削実例
(一)観梅
 
(二)探梅
 
(三)探梅







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