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吟剣詩舞の若人に聞く 第49回
西田和樹くん(九歳)●山口県下関市在住
(平成十四年度全国吟詠コンクール決勝大会幼年の部優勝)
妹:西田伽湖さん
母:西田美和さん
祖父(師):高下青道さん(下関朗吟会)
祖母:高下青峯さん
宗家:山本誠岳さん
東京へ行きたい、という信念でつかんだ優勝
西田和樹くん
 
平成十四年九月十五日(敬老の日)、笹川記念会館国際ホールで行なわれた全国吟詠コンクール決勝大会幼年の部に優勝した西田和樹くんに、優勝直後インタビューしました。優勝の声を交えながら、吟詠のことなどをご家族と共にお聞きしました。
 
−優勝おめでとうございます。今の気持ちから聞かせてください。
和樹「兄(西田陵くん、平成十二年度全国吟詠コンクール決勝大会幼年の部優勝)が小学校五年で優勝しましたが、僕は四年で優勝したので、兄より早く優勝できて嬉しいです」
−お兄さんが優勝したときは、僕も賞を取るという気持ちになりましたか?
和樹「はい、ぜひ東京に行ってみたいと思いました」(笑)
−吟詠はいつから始めたの?
和樹「小学校一年からです」
−和樹くんの資質というのはいかがですか?
青道「兄と比べると、非常にメリハリがあり、体格も良いので、声に伸びがありました。兄と同様、和樹にも期待しておりました。今回の出来としては、まあまあかなと思っていたので、優勝できて大変嬉しく思っています」
−優勝するとは思っていませんでした?
青道「入賞はするかもしれないなと思っていましたが、まさか優勝するとは全然思っていませんでした。優勝した時はびっくりしました。それだけに大変嬉しいです」
−今回の舞台を見て、お母さんはいかがですか?
美和「度胸がついてきたというのか、ひとつひとつ舞台に立つことによって、全てに自信がついたみたいな印象を受けました」
−お兄さんと比べて性格の違いはありますか?
美和「次男ですから見ての通り元気いっぱいで、詩吟をやっている以外は、この辺でも寝転がるような元気のいい子供です。詩吟をやるときにも、二分間だけは熱心に打ち込んでくれますが・・・」(笑)
−お孫さんの優勝に関してはいかがですか?
青峯「本人がどうしても優勝したいという気持ちがあったようなので、優勝できて良かったと思います。山口に帰って下関朗吟会の会長さんや副会長さんに優勝の報告ができることを大変喜んでおります」
−今回はずいぶん練習した?大変だった?
和樹「はい、大変でした。音が下がったり上がったりしたら減点になるので、音が下がったら、もう一回はじめから練習しました」
−普段はどのように稽古をつけているのですか?
青道「県大会が終わって、中国大会で優勝して全国大会に出場できるようになってからは、ほとんど毎日練習しました。日頃よりも少し厳しく指導しましたが、でも本人の気が乗らない時は、なかなか練習しないので困りました(笑)。ですから、気分が乗っている時はみっちりやって、気分が乗ってない時はあまり練習しないという風に指導しました。でも、ポイントだけはしっかりと教えたつもりです」
−ポイントとは音程の上がり下がりですか?
青道「そうです。音程が少し高くなると、自然に音が下がるので、音程が狂わないようにするのに一生懸命練習しました。音程と言葉は詩吟にとって一番大切なものなので、音程を間違えたら全然詩吟になりません。発音と発声、それに加えて音程は充分に指導したつもりです」
 
インタビューに答える、左より母の西田美和さん、師で祖父の高下青道さん、西田和樹くん、妹の西田伽湖さん、祖母の高下青峯さん
 
−今回、自分ではどう思う、よくできた?
和樹「百点満点でいうと六十点。」
−四十点はどこにいったの?
和樹「音程が下がってしまったような気がするからです」
−お母さんはお兄ちゃんの時も一緒にいらっしゃいましたよね。どうですか、聞いていて、和樹くんの時は落ち着いて見ていられましたか?
美和「兄の陵の時も緊張して見ていましたが、この子の方が、ずいぶん緊張しました(笑)。学年もひとつ下ですし、大丈夫かなという気持ちで見守っていました」
優勝した時はいかがでしたか?
美和「まさか、という思いでした。周りの方を聞いていて今年も凄いなと思っていましたから、無理かもしれないなという気持ちもありましたので、まさか優勝するとは思いもしませんでした」
−お兄ちゃんといつも一緒に練習しているのですか?
青道「はい、そうです。やはり、同じ吟題でしたら、聞いて覚えて、いいところと悪いところを自分で判断できますので、それだけ上達するのが早いのです。別々に教えると、それぞれが違った面を持っていますのでなかなか難しいものがあります。ですから、教えるときにはお兄ちゃんも含めて同じ吟を教え、三人でいいところを取り合うように指導しています」
−やっぱり三人三様みたいなところがありますか?
青道「そうですね、個性が違いますから、それぞれ表現力、詩の感じ、吟じ方が違います。やはりお兄ちゃんの方が年長だけあって、詩の解釈や声の強弱に関しては一日の長があります」
 
表彰式の後で。西田和樹くんを囲んで優勝を喜ぶご家族の皆様。(後列右端は師で祖父の高下青道さん)
 
−和樹くんはどうですか?
青道「和樹も教えれば、そのようにやります。非常に力を入れて熱心に練習しますし、感受性もありますから、表現力も向上してきました」
和樹くん、東京は初めて?
和樹「はい、東京に来たのは初めてです」(笑)
−東京の印象はどうだった?
和樹「すごい建物がいっぱいありました」(大笑)
−優勝のお祝いをしてもらうの?
和樹「明日、どこかに連れて行ってもらいます」(笑)
−ディズニーランド?
青道「どこか連れていってあげないとね。みんなでお祝いをしないと」(笑)
−ご兄弟での連続優勝というのは初めてですね?
青道「山口県ではお兄ちゃんの優勝が初めてでした。それまで全国優勝はありませんでしたから。また今年、和樹が優勝できて驚きです」
−いい跡継ぎをもたれましたね?
青道「はははは・・・」(笑)
青峯「本人は、みんな上手だったから、一位は無理と言っていましたが、でも、内心けっこう自信があったようです」(笑)
青道「二人とも、全国大会に出場でき、優勝したのですから幸せです」
青峯「はい、みなさんのおかげです。多くのひとにお世話になりました」
−和樹くん、詩吟は面白い?
和樹「面白いです。声をお腹から出して、精一杯やったらすっきりします」(笑)
−昨日、美味しいもの食べた?
青峯「さっきも食べたね」
−何を食べたの?
和樹「牛丼屋さんに行きました」(笑)
青峯「日頃は食べさせてもらえないから」(笑)
−お母さん、喜んでますね(笑)
美和「五杯食べるつもりで東京に来ましたが、結局、二杯食べて終わりましたから」(大笑)
−牛丼が好きなの?
和樹「肉が好きです」
−牛丼二杯も食べて平気?
和樹「お腹一杯になりました」(大笑)
−指導者として今後の和樹くんへ何かありますか?
青道「詩吟を通して素直な気持ちで、何事も苦労に耐え抜く根性を持ってもらいたいな、と思っています」
−和樹くん、最後に一言お願いします。
和樹「・・・がんばります・・・」(笑)
本日はインタビューにお答えいただき、どうもありがとうございました。これからのご活躍をお祈りいたします。
 
西田和樹くん
 
表彰式直後、喜びにあふれる西田和樹くんとご家族の皆様







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