日本財団 図書館


漢詩初学者講座
吟詠家に漢詩のすすめ(55)
四国漢詩連盟会長
愛媛県吟剣詩舞道総連盟会長
伊藤竹外
一、吟詠家は漢詩を知らない
 このような題を掲げたら吟詠指導者に叱責されそうですが、先日、全国的な規模で行われている吟詠コンクール大会で四二四名の競吟を終日拝聴した感想をお聴き下さい。
(一)漢詩の法則は二字、二字、三字
 押韻、平仄のことは別としても右の二字、二字、三字の法則の下に吟詠が節付け、息つぎされていることは皆ご存じと思いますが、次の詩の吟じ方は全国到る処で聞く所であり右の原則を無視しています。
 
この詩を選んだ吟者は右の節づけが大半でした。その他にも
 
右の如き吟じ方は漢詩家としては到底承服できない吟じ方です。
 
(二)タイムに捉われて息つぎを無視
春日、山頭を四字棒よみするのは文脈として差しつかえはありませんが、例えば
などはこの詩の「決然」の作者の感情表現があって「国を去って」に続けるのが自然でありますが、起句四字を意味を無視しての吟調は明らかにタイム二分にこだわったものです。又、承句末字の処は一拍半の間が必要ですが、直ぐ転句へ移る者が多く、特に結句末字を読み終るや否やパッと打ち切る吟じ方が大半でした。最後の文字は二十八字全体を支えるもので少なくとも三、四秒の餘韻が必要で詩情表現を全く無視した表現です。
 
(三)息つぎは絶句六息か
右大会の決勝吟詠は律詩になっていて、課題詩集十首が、「吟界出版社」により提供されました。これも随所に間違っています。
右のは休止符の場所を印し、二句三息、四行六息の意だと思いますが、戦前の一分三十秒以下の詩吟時代に休止符をつけたものを踏襲しています。今日では十六回以上も息つぎをしているのと理屈が合いません。 尚、レ点の返り点が次の如く誤っています。
右の如く漢詩文に の息つぎを付すなどあり得ないのみならずレ点の位置が間違ったら最早漢詩になりません。以上、吟詠家に是非とも漢詩を学んで頂きたい所以であります。
 
二、課題「詠先賢○○○○」について
 全国各地から有名な先賢を詠じた作詩が多く寄せられ、漢詩の良さをあらためて認識しました。唯、その表現が特殊な故事や説明文がなければ理解できないものや、名僧を詠んだものが佛語ばかり拉べたものもあり、誰でも耳で聞いて解る漢詩が必要だと思いました。
 吟詠家が選ぶ吟題もむつかしいものは敬遠しています。そういう意味で次の添削は作者の意にそわないかも知れませんが、一般に分り易くしたものです。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION