今月の詩(2) 平成十五年度全国吟詠コンクール指定吟題から
【幼年・少年・青年の部】(絶句編)(2)
不識庵機山を撃つの図に題す 頼山陽
《大意》不識庵は越後の上杉謙信、機山は甲斐の武田信玄、ともにその法号。川中島の合戦は天文二十二年から永禄四年の間、五回にわたって行なわれた。(上杉軍は)鞭音も立てないようにして、夜のうちに千曲川を渡って(川中島の敵陣に)攻め寄せた。(武田方は)明け方(上杉方の)大軍が大将の旗を中心に守りながら迫ってくるのを見つけた。(信玄を討ち取ることができなかった謙信の心中を察すると)誠に同情にたえない。この十年間、一ふりの剣を磨き(機会を待ったのであるが)うちおろす刀光一閃の下に、ついに強敵信玄をとり逃がしたのは無念至極なことであった。
【一般一部・二部・三部】(絶句編)(2)
太田道灌蓑を借るの図に題す 作者不詳
《大意》作者も時代もはっきりわからない。道潅があるとき供も連れず、一人馬に乗って狩に行ったが、途中ひどい雨にあい、ある藁屋の戸を叩いて蓑を借りようとした。すると、その家の娘が出てきて、八重山吹の一枝をさしだした。娘はそれなり一言も発せず、道潅は花を見ていても、どういう意味かいっこうに判断がつかない。さすが英雄道潅も、このときばかりは心の中が千々に乱れて、まるでもつれてほどけぬ糸のようであった。(解説など詳細は財団発行「吟剣詩舞道漢詩集」をご覧ください)
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