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漢詩初学者講座
吟詠家に漢詩のすすめ(53)
四国漢詩連盟会長
愛媛県吟剣詩舞道総連盟会長
伊藤竹外
一、書き下し文を正確に
 来る鳥取全国漢詩大会の投稿詩一、〇四十餘篇のコピーが送られ、その審査に超多忙の中で苦辛しています。その投稿詩は上に白文(返り点、送り假名のない原文)と下に振り假名をつけた「書き下し文」の指定があります。これがあまり経験が無いのか間違いが山の如くあります。(今後の参考のため例を挙げます)
(一)書き下し文(日本の文法に従う)
(漢詩の振り假名はひらがなを原則とす)
(二)送り假名は熟語の下へ
(三)詩文に句讀点(くとうてん)を打たない
(四)勝手な解説的な讀みをつけない
(五)字間の開け方
(イ)老来 瀬惰 晴旻を憾み
(ロ)新樹 幽庭 子規を聞く
(特に一字画分全角開ける場合もある)
 尚、起承、転結の二行書のときは起句及び承句の後、転句の後を全角開ける。
 又、熟語の後に助詞(テニヲハ)助動詞(シテタルなど)がつくときは間隔を開けない。
 本稿の秀作欄を参照のこと。尚、書き下し文は常用漢学を可とする。
(六)熟語は音訓み  夕陽(ゆうひ)→夕陽(せきよう) 他
 その他、白文に返り假名の時は旧假名、書き下し文は新假名使いとする。
 
二、課題「山寺観楓」について
 この内容は当然、山上の寺院に賽して浄境を彩る紅楓の景を詠むもので「誰にもできる・・・呂山詩語集」にもあり常識的な課題です。ところが次の如く右題に全く関係のない結句を据えて内容にそぐわない場合が多いようです。
 その他題詠の賦し方が分かっていない人が多いようです。
 
三、初学者のために
四、使ってならない詩語
 拙著の「入門の手引き76頁」に「選んでならない詩語」の例を多く挙げているが、投稿詩の中には随分とこの詩語が出てきます。
 その他、陶然、恍然、幽賞など。
 以上挙げたものは観念的で内容が漠然としている上に、余情を打ち消すことになることを知ること。呂山先生も『詩を作る人ですぐに「万感生」とか「感無窮」などと利用する人がある。それも初心者でない人である。初めて作る人はそれでよい。詩歴五年もの経験者ならそれらしい詩語を見つけてほしい』ものと書いています。







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