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琵琶湖に響き舞う、日本の美、名流吟剣詩舞
五月五日、子供の日。恒例春の大イベントである、平成十四年度全国名流吟剣詩舞道大会が滋賀県大津市のびわ湖ホールにおいて盛大に開かれました。
当代一流の吟剣詩舞道家が一堂に集い、その素晴らしい吟詠、剣詩舞に訪れた人々が酔いしれていました。
 
三笠宮妃総裁・恩賜財団母子愛育会奉賛
【日本人の心をうたう吟詠芸術の祭典】
平成十四年度
全国名流吟剣詩舞道大会
日時:平成十四年五月五日(子供の日)
場所:びわ湖ホール・大ホール
主催:財団法人日本吟剣詩舞振興会
後援:文化庁・滋賀県・大津市・NHK・BBCびわ湖放送・朝日新聞大津支局・読売新聞大阪本社・毎日新聞大津支局・中日新聞社・京都新聞社
 
式典で笹川鎮江会長の挨拶を代読する河田神泉副会長
 
式典で挨拶する山田豊三郎大津市長
 
式典で挨拶する国松善次滋賀県知事
 
四十六名の少年少女が見せた、美しい情景の継承
 当代一流の吟剣詩舞道家が出演し、素晴らしい舞台を見せくれる全国名流吟剣詩舞道大会を一目見ようと、早朝から多くの愛吟家・剣詩舞愛好家が詰め掛けました。会場のびわ湖ホールは、音響効果と設備の良さなど、滋賀県が誇る素晴らしいホールで、観客ばかりではなく、出演者の皆さんもここでの演技を楽しみにしていました。
 定刻通り午前十時に幕が上がり、舞台上に勢ぞろいした出演者、財団役員へ惜しみない拍手が起こる中、河田神泉副会長が開会のことばを高らかに述べられました。
 大会は全四部から構成され、第一部は全国少壮吟詠家審査コンクール入選者の吟詠、第二部は一般の部で、各流宗家・会長・師範が日頃精進した吟詠を披露しました。第三部は子供の日にちなんだ少年少女の吟詠と剣詩舞で、第四部は財団法人日本吟剣詩舞振興会による企画構成番組が行なわれました。
 第一部は吟詠家の中でも頂点となる少壮吟士に挑戦し、厳しい審査を勝ち抜いてきた人たちの吟詠で、登場は一番から十一番までが初入選、十二番、十三番が二回入選、十四番、十五番が晴れて少壮吟士候補になった人たちでした。さすがに厳しい審査を通過した吟詠家たちだけに、心技ともに伸び盛りの素晴らしい吟詠を堪能することができました。
 第二部は、滋賀県吟剣詩舞道総連盟・男子と京都府吟剣詩舞道総連盟・女子の合吟から始まり、四十八番の「琵琶湖上の作」まで、各流宗家・会長・師範、少壮吟士の皆さんの円熟した吟詠を聴くことができました。また、この二部は各流各派が持ち味を活かし、それぞれの節調を味わうことができる、とても楽しい舞台でした。
 第三部は子供の日にちなんだ少年少女による地元企画構成番組「マザーレイク、琵琶湖」が披露されました。この番組は、近江の歴史を振り返ると共に、美しいびわ湖をはじめ、その周辺に数多く残る名所旧跡、また名勝の地を次世代に受け継いで行く、決意表明の舞台ともなっていました。例年になく少年少女の数も多く、四十六名の吟剣詩舞に、その一挙手一投足に、会場は笑顔に包まれ、いつまでも温かな拍手を送り続けていました。そして、登場した少年少女たちが、これからの吟剣詩舞を支え、日本の伝統を継承してくれることを舞台から感じとれました。
 
時の流れの中に見える、人情の機微と心根を表現
 第四部に入る前、式典が厳かな雰囲気に包まれて行なわれました。国歌斉唱に続き、河田神泉副会長が笹川鎮江会長のご挨拶を代読されました。つづいて、恩賜財団母子愛育会の上村一会長が、三笠宮妃殿下のお言葉を代読され、その内容は伝統芸道の復興が日本の素晴らしい未来を創造し、日本人の誠を育成することにつながるという趣旨のものでした。続いて来賓の祝辞として、國松善次滋賀県知事が挨拶され、混迷する日本を乗り越えるためには、人中心、心中心の世紀にしなければならず、そのために吟剣詩舞に寄せる期待は大きなものがあると述べられました。また、山田豊三郎大津市長も、吟剣詩舞道は精神文化の育成に重要な働きをしていると語られました。さらに小泉純一郎内閣総理大臣をはじめ、遠山敦子文部科学大臣、河合隼雄文化庁長官などの祝電が次々と披露されました。
 恩賜財団母子愛育会への奉賛目録贈呈では、河田神泉副会長から上村一会長へ目録が贈呈されました。最後に吟剣詩舞奨励賞が第三部に出演した少年少女たちに贈られ、亀井直弥くんと中村有希さんが代表で賞状を受けていました。式典が滞りなく終了すると、舞台は財団による企画構成番組「湖西路の詩情」へと移りました。
 今回の企画構成番組の内容は、飛鳥の時代と江戸時代初期、この約千年という時の隔たりも、今日に伝わる詩歌の数々から、その時の移ろいを感じさせない、人々の情熱、人情の機微を感じ取ることができ、今日も変わることのない美しい琵琶湖の眺望と共に、約千年の時の中に、この地で起こった出来事と、そこに登場した人々の心根を吟詠と剣詩舞で味わおうというものでした。
 出演者は財団役員をはじめ、少壮吟士の面々、当代一流の剣詩舞道家が、さすが名流の名に恥じない感銘的な吟剣詩舞を披露してくれました。笹川鎮江会長もVTRでご出演し、変わることのない美しい吟詠を披露し、会場を感動で包み込んでいました。そして、すべての舞台が終わり、感動的なフィナーレの中で、滋賀県から次回開催地となる岡山県へ大会旗が移管され、割れんばかりの拍手に包まれ、成功の内に平成十四年度全国名流吟剣詩舞道大会の幕が下りました。
 終了後も、訪れた人たちはロビーで感動や感想を語り合いながら、舞台の余韻をいつまでも楽しんでいました。そして、次の岡山県は果たしてどのような舞台を見せてくれるのか、そんな期待感が家路に着く人たちの胸の中に、すでに沸き起こっていたかもしれません。







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