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吟剣詩舞の若人に聞く 第45回
長坂理絵さん(十五歳)●愛知県岡崎市在住
(平成十三年度全国剣詩舞コンクール決勝大会詩舞少年の部優勝)
姉:長坂紗織さん
祖母:長坂ハナエさん
師(宗範):杉浦英容さん
分家家元:杉浦容楓さん(北辰神明流分家剣詩舞)
 
長坂理絵さん
壁を乗り越えた時、そこに広がる無限の可能性
 これまで地道に確実に、力をつけてきた長坂理絵さん。その努力が花開き、平成十三年度全国剣詩舞コンクール決勝大会詩舞少年の部で優勝。名実共に一人の剣詩舞家として歩み始めた彼女に、ご家族、師、分家家元を交えてお話をうかがいました。
 
いくつの頃から詩舞をしているの?
理絵「たぶん三歳位からです」
ハナエ「二歳の終わりから三歳になった時だと思います」
容楓「生まれて何日も経たないうちから、お稽古場に来ているものですから、いつからというのはね」(笑)
おばあ様も詩舞をしていますね?
ハナエ「はい」
長坂家の剣詩舞の始まりは、おばあ様からですか?
ハナエ「そういうことになりますね」(笑)
一昨年、お姉様が青年の部で優勝されましたが、武道館でお姉様の優勝インタビューを聞いていて、どんな感じだった?
理絵「私にも、そんなインタビューが来るといいなと思いました」(笑)
実際にそうなって、どうですか?
理絵「嬉しいです」(笑)
お姉様は妹さんの優勝についていかがですか?
紗織「名前を呼ばれた時は、とっても嬉しかったです。でも私が出るときより、この子の出るほうが、私自身緊張して、おばあちゃんの気持ちがわかりました」(笑)
理絵さんには、かなり厳しく指導されたのですか?
紗織「厳しいと言われるかもしれませんね。どうしても力が入ってしまうので」
お姉様と理絵さんとは違いますか?
英容「ぜんぜん違います、外見も中身も全て(笑)。大きく言えばお姉さんは本番に強い、理絵ちゃんは本番に弱いとこでしょうか。お稽古場では理絵ちゃんが上手くて逆、お姉さんのほうが下手ですね(笑)。だから、コンクールと言えばお姉さんが強いのでしょう」(笑)
理絵さんの最初の挑戦は?
理絵「幼年の部から出ていますが、全て愛知で落ちてしまいました(笑)。でも一回だけ、剣舞で中部まで行きましたが、結局、落ちてしまいました」(笑)
容楓「一昨年は全国大会に出させていただきましたが、全国で落ちました」(笑)
理絵「四位ですよ」(大笑)
初めての優勝の感想は?
理絵「ビックリしました。名前を呼ばれた時は信じられない気持ちでした」
優勝するために何か努力した?
理絵「今回はお扇子を回すところが多く、それが難しくて、とにかく練習しました」
理絵さんに対する指導はどのようなものですか?
英容「指導と言いますか、小さい時からコツコツと積み上げてきてはいるのですが、本番で発揮できない状態が続いてきました。それで、とにかくお稽古を積めば、それが自信につながるからと、精神的なことを言い聞かせてきました。また、数年前に群舞の一員として優勝しまして、それが大きな自信になったように思いますし、今回の結果は自信を身に付けたことによるものではないでしょうか」
群舞で自信が出てきたの?
理絵「群舞で優勝して、踊ることが好きになり、たしかに自信のようなものがつきました」
それまでは嫌いだったの?
理絵「はい、嫌いでした(笑)。辞めたいと家でも言っていましたから」(笑)
嫌だと思った原因は?
理絵「おばあちゃんに、よく怒られましたから」(笑)
どんなことで怒られるの?
紗織「二人とも、練習をサボったりすると、皆が見ていようが引きずり回されて怒られましたね」(笑)
 
インタビューを受ける左より祖母の長坂ハナエさん、師の杉浦英容宗範、長坂理絵さん、杉浦容楓分家家元、姉の長坂紗織さん
 
好きになったことで、踊りが変わりましたか?
英容「表現する面白みが少しつかめてきたようで、表情も良くなってきましたし、群舞の中に入れることは迷いましたが、本人もがんばってくれるだろうと思い、入れたことが結果的に良かったです」
お姉様から見て妹さんの様子は変わりましたか。
紗織「お稽古を自分からするようになりましたね。やれといっても、やらない子でしたから」(笑)
 
全国規模の大きなコンクールに出て、どんな感じ?
理絵「緊張して、手に汗をかきます(笑)。でも今回は、緊張はしましたが、袖にいる時間が長かったのか、ドキドキする感じが和らいだので良かったです」
昨年のコンクールで注意された点は?
英容「少年の部は昨年から年齢の区分が変わり、背の高い子とか大人びた子がいますが、その中で理絵ちゃんは幼く見えてしまいます。しかし、それを逆手にとって、理絵ちゃんのキャラクターを活かした題材、子供らしさを表現した演舞で行こうと思いました。見せ場には、この子自体はお扇子の技が高いので、それを活かした振りを考えました」
これから先は、それだけでは行けませんね?
英容「ひとつのキャラクターだけで押すのではだめでしょう。これからは徐々に大人の芸が身に付くように指導していきたいと思っています」
こんど高校受験だよね?
理絵「はい、受験勉強は大変ですが、勉強より踊りのほうが楽しいです」
さっき、踊りは嫌だって言ったでしょ?
理絵「ええ・・・」
優勝すると好きになるのだ?
理絵「はい」(大笑)
お孫さん二人が優勝していかがですか?
ハナエ「もちろん嬉しいですが、特に優勝は意識していませんでした。それより、自分がやると言ったからには、途中で挫折して辞めるようなことはさせたくありませんでしたから、それが気がかりでした」
 
長坂理絵さん(中)を演技指導する杉浦容楓分家家元(右)と師の杉浦英容宗範
 
今後の挑戦は青年の部になるの?
理絵「いえ、剣舞で少年の部に出るつもりです。まずは、中部の群舞があり、それに出させていただくので、今がんばっているところです」
剣舞の見通しはどうなの?
理絵「どうでしょうか」(笑)
容楓「狙いは二位だね、一位はお姉さんに譲って」(笑)
紗織「打倒、お姉ちゃんかな」(笑)
姉妹で競うのですか?
容楓「どちらも同じ演題ですから」
やりにくくないの?
紗織「特にありませんし、踊らない人に見てもらったら、どっちもどっちだと言われました」(笑)
理絵「少し意識しますね、やはり上の人のほうが上手いのかなって」(笑)
詩舞と剣舞ではどちらが好き?
理絵「どちらかと言うと、詩舞のほうが好きですね。剣舞は刀を振るのが苦手で」(笑)
これからの目標はあるの?
理絵「目標は、詩舞で優勝したので、今度は剣舞で優勝したいと思います。でも、上手い人が多いので、コツコツとやります」(笑)
今コツコツやっている実感はある?
理絵「あまりないです」(大笑)
皆さんから理絵さんに対するアドバイスなどがありましたらお願いします。
容楓「今日まで着実に歩んできたと思いますが、これからもコツコツやった成果が、あらゆる角度で出てくれればと願っています。この子に、お姉さんのようにやれと言っても負担になるだけで、地味ではあるけれども、しっかりお稽古すれば必ず芽が出ると信じ、やっていって欲しいです。寒梅の精神ですね」
英容「理絵ちゃんにとって、お姉さんは大きな存在で、どうしても比べられてしまいます。でも、理絵ちゃんの個性を大切に、理絵ちゃんらしくやって欲しいですね。まだ十五歳ですから、これからビックリするような化け方をするかもしれませんから、着実にやっていってください」
ハナエ「自分の力で、着実に成長して欲しいと思います」
紗織「自分のほうが負けそうで怖いのですが、姉妹だからできること、例えば、お互いの良いところ悪いところを見合ったりできるような姉妹になっていきたいです」
最後に理絵さんから、何か言うことはありませんか?
理絵「え・・・、そうですね、これからも、剣詩舞にがんばります」(笑)
今日はインタビューにお答えいただきありがとうございます。今後のご活躍を期待しております。
 
(このインタビューは、昨年11月23日に行なわれたものです。その後二月三日に行なわれた全国剣詩舞群舞コンクール決勝大会剣舞の部で、既報のとおり紗織さんのチームが優勝、理絵さんのチームは三位に入賞しています)
 
長坂理絵さん
 
杉浦容楓分家家元(右)と師の杉浦英容宗範(左)から演技指導を受ける長坂理絵さん(中)







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