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表紙説明
名詩の周辺
桶狭間を過ぐ(大田錦城)
愛知・桶狭間古戦場
 NHKの大河ドラマ「利家とまつ」が好評のようです。残念ながら、この詩の舞台である桶狭間の戦いはすでに放映されましたが、織田信長が自軍(約3千)より10倍も多い4万5千の今川義元の軍勢に奇襲をかけたのが、永禄3年(1560)5月19日。これ以後、信長、秀吉によって天下統一が成されるのですから、この戦いはまさに日本の歴史を変える戦いでもあった訳です。
 桶狭間は、現在の愛知県豊明市にあり、周辺一帯は自然公園となっています。公園内には桶狭間古戦場の石碑や今川義元の墓、戦記を記した弔古碑や戦いの様子を伝える案内板などがあり、また今川義元の本陣跡にある寺・高徳院には桶狭間古戦場史料館等も開かれていて、当時の戦いをイキイキと知ることができます。
 この詩は作者が桶狭間の古戦場を通ってその感慨を述べたもので、暴風雨の中、信長勢が義元目ざして駆け降りていくさまが、あたかも眼前に繰りひろげられたかのように、迫力ある筆致で描かれています。吟詠としてもなじみ深いものの一つで、古戦場を弔う詩の傑作といわれているのもうなずける名詩です。
 
ホームページアドレス 〈財団〉http://www.ginken.or.jp 〈本誌〉http://www.ginken.or.jp/monthly
 
水六訓
一、 あらゆる生物に生命力を与えるは水なり。
   
一、 常に自己の進路を求めてやまざるは水なり。
   
一、 如何なる障害をも克服する勇猛心と、よく方円の器に従う和合性とを兼ね備えるは水なり。
   
一、 自から清く他の汚れを洗い清濁併せ容るの糧あるは水なり。
   
一、 動力となり光となり、生産と生活に無限の奉仕を行い何等報いを求めざるは水なり。
   
一、 大洋を充し、発しては蒸気となり、雲となり、雨となり、雪と変じ、霰と化してもその性を失わざるは水なり。
 
水を心とすることが平和と健康と長寿の妙薬であります。
 
笹川良一
 
OPINION
明日への提言
NHK朝の連続テレビ小説「ほんまもん」で王維の「元二(げんじ)の安西(あんせい)に使いするを送る」の一節が吟じられました
 
笹川鎮江
 半年間続いたNHK朝の連続テレビ小説「ほんまもん」は三月末で終了しました。この時間帯は毎日というわけにはいきませんが見ておりましたところ、三月十六日(土)の放送で漢詩が吟じられるシーンを見ることができました。
 送別会のシーンでしたが、ご年配の男性が王維の「元二(げんじ)の安西(あんせい)に使いするを送る」の一節を情感込めて吟じておられました。
 吟じられたところは後半の「君に勧(すす)む更に尽くせ一杯の酒を、西のかた陽関(ようかん)を出ずれば故人(こじん)無からん」の部分であったと思います。その場の雰囲気にも合っていて、ひと昔前の送別会でしたら、よく見かけた光景とたいへん懐かしく思いました。
 吟剣詩舞の大会やコンクールで吟詠が聞かれるのは当然のことですが、最近は結婚披露宴でお祝いの吟詠を聞くことも少なくなったようです。かつては祝賀会、お葬式でも吟じられたものです。
 送別会の席での演目といえば「渭城(いじょう)の朝雨(ちょうう)」の吟じ出しで始まる王維の「元二(げんじ)の安西(あんせい)に使いするを送る」の詩に決まっていたようです。吟詠をされる方は機会があれば大いに吟じていただきたいと思います。
 おめでたい席などで、現代風の若い人が、大方の予想に反し、漢詩を吟じて、その場の雰囲気を盛り上げるなど、素晴しいことではないでしょうか。







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