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漢詩初学者講座 伊藤竹外
吟詠家に漢詩のすすめ−(四十八)
伊藤竹外先生プロフィール
愛媛漢詩連盟会長
(18吟社、会員200名、毎月指導、添削)
六六庵吟詠会総本部会長(吟歴61年)
財団公認愛媛県吟剣詩舞道総連盟会長
財団法人日本吟剣詩舞振興会理事
平成5年 文部大臣地域文化功労賞
平成8年 財団吟剣詩舞大賞功労賞
著書 豫州漢詩集(編著)
南海風雅集(編著)(2版)
漢詩入門の手引き(10版)他。
 
一、孤掌鳴り難し(こしょうなりがたし)
 今、愛媛県の各吟社の例月作品に加え、(財)「吟剣詩舞」誌の投稿詩と併せ約三百篇、その添削に四苦八苦していますが、時には次の如き謝辞を受けるとこれまでの苦労が報われた気がします。
「ご添削を頂いて眼からうろこの落ちる思いがしました。」
「添削の詩を何度も読み返し、正に漢詩は芸術だと感心しました。」
「添削の詩を家族団欒の前で吟じましたら、孫からおばあちゃんはすごく勉強しているんだなと褒められました」。等々。
 何事もよき指導者、よき協力者が必要です。片掌(かたて)をいくら振り廻しても音を発しない如く両手を打ち合わして始めて響きを生ずるように、孤り(ひとり)では物事は成就しないでしょう。
 昨年、愛媛漢詩連盟の音頭で四国漢詩連盟が発足し、今年は石川忠久先生、窪寺貫道先生などによって全国漢詩連盟結成への準備がすすめられています。
 (財)日本吟剣詩舞振興会の組織ができて三十五年、今日の吟界、剣詩舞界の飛躍、発展ぶりは目ざましくひとしく感謝するところですが、漢詩界の組織づくりこそ奎運を挽回する絶好の機会と存じ、大いに期待するところであります。
 
二、課題詩「春日○○吟遊雑詩」について
 ○○は各位が吟遊した場所を固有名詞をつけ加え、雑詩とは多く作った詩の中の一首を選んで投稿頂く内容です。
 北海道から九州に至る(中国もあり)私なども全く知らない各地の名所、旧蹟の情景と感懐を述べた多くの詩が寄せられ楽しませてくれました。
 唯、どこにもある風景や、観念的に従来の詩語集から寄せ集めたものは取るに足りません。その他独得の特徴を活かした表現こそ本題の期待するところです。
 尚、最初の「春日」の語がその詩を更に引き立て彩りを添えるものです。どのように工夫し創作するかは作詩家の手腕にかかっていますが、これ又案外容易ではないようです。
 
三、時季のあわない詩語
 
四、よめない送り假名
 
五、同類の字を重ねないこと
 
六、つきすぎる表現
この句中対は巧みな表現のようですが、香と馥、又、籬畔と園とは内容がつきすぎる感があります。
 
七、逃げ口上は避けること
これらは皆観念語で実景を味わうことができません。結句は必ず景を最後に据えて餘情に託すこと。







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