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第30回全国少壮吟詠家審査コンクール決選大会
大半の吟詠家の発音が良くなった大会。
少壮吟士候補は二名誕生
時■平成十四年三月三日(日) 場所■笹川記念会館国際ホール 主催■財団法人日本吟剣詩舞振興会
 
 財団主催事業の中でも、厳しい審査で知られる全国少壮吟詠家審査コンクール決選大会が、三月三日(日)笹川記念会館国際ホールで開催されました。今回で三十回を迎えた今大会は、全国から百四十名の少壮吟士を目指す吟詠家が集まり、持てる力を出し切っての白熱した競吟を展開しました。
 
コンクールのクライマックス、壇上に審査員諸氏が控え、入選者氏名を発表する河田神泉副会長
 
表彰式に臨んだ入選者の皆さん
 
 吟界のリーダーたる少壮吟士候補が誕生する全国少壮吟詠家審査コンクール決選大会は、三十回という節目を迎え、笹川記念会館国際ホールに多くの人を集めて、華やかに開催されました。午前九時、鈴木吟亮専務理事の開会の辞でその幕が開き、国歌斉唱、財団会詩合吟のあと、河田神泉副会長が財団を代表して挨拶に立ちました。「少壮吟士は吟界のリーダーとして多くの方からの羨望の的です。日頃の精進を遺憾なく発揮され、少壮吟士を目指してがんばってください」と出場者を励まされていました。つづいて、競吟実施要項が説明され、審査員が紹介されると、人々の注目する中、競吟が開始されました。
 このコンクールが極めて厳しいといわれる理由は、その審査基準にあります。声の美しさ、発声の自然さ、声量の豊かさ、声の明瞭さ、節回しのよさなどが審査されるだけではなく、音程が合っているか、伴奏テープと調和しているか、アクセントや鼻濁音が正確に表現されているか、さらには舞台マナー、吟詠マナー、社会人としてのエチケットが備わっているかなど、人間性までもその審査対象となるからです。しかも、合計三回審査を通過しなければ少壮吟士にはなれません。それだけに挑戦する方には大きなプレッシャーがかかり、普段は指導者として、しっかりした吟詠をなさっている方でも、絶句や誤読などをしてしまいます。しかし、そうしたプレッシャーに打ち勝つことも、少壮吟士として必要な要素であり、まさに自分との戦いでもあるのが、このコンクールだと感じます。
 出場する吟詠家は北海道から九州まで、都道府県大会、地区大会を勝ち抜いてきた精鋭百四十名でした。コンクールは整然と進み、それぞれが日頃の研鑚を舞台にぶつけ、白熱した競吟が行なわれました。今回は発音の良い人が多いなと感じましたが、講評でもそのことが述べられていました。笹川鎮江会長も日頃から言われている発音がこのように向上してきたことは、吟界の発展にとっても大変良いことであり、音楽性、芸術性の高い吟詠を提唱する財団の意図が着実に浸透していることの証でもありましょう。
 すべての吟詠が終了すると、河田神泉副会長が講評に立ち、内容は次のようなものでした。
発音に関しては大変良い(ミスなし)、少しだけ不安定とあわせると八十三名、良いの三十三名とあわせると、発音の良い人が全体の六十三パーセントになった。
ただ、発音は良いが、詩文の最初、一拍目の言葉がハッキリしない人もおり、誤読になることもあるので気をつけて欲しい。
笹川鎮江会長が言われている母音を正確に発音して欲しい。母音を美しく表現できないのは、指導者クラスの大会としては致命傷になる。
 
開会の辞を述べる鈴木吟亮専務理事
 
閉会の辞を述べる入倉昭星常任理事
 
少壮吟士候補になった喜びの声
自分の勉強が認められた日でした
大木津多代さん(兵庫)
「今まで勉強してきたことが認めてもらえ、大変嬉しいです。今日はアクセントなど失敗したと思える箇所もありましたので、余計に嬉しさを感じます。気をつけた点は、力まず、音楽に乗って、吟じることでした。これからが勉強だと思いますので、一生懸命がんばりたいと思います」
 
子供の手紙をお守りに精一杯吟じました
米本敬子さん(岡山)
「今日は子供の手紙をお守りにしてがんばりました。これが私の力になりました。また、宗家、宗範、応援してくださった諸先生の皆さん、家族にお礼を申し上げます。少壮吟士という名に重みを感じますので、これからはもっとお勉強を積んで、先輩たちを見習い、少壮吟士にふさわしいといわれるようにがんばります」
 
 河田神泉副会長の言葉に、出場者ばかりではなく、会場に詰め掛けた愛吟家の方々も真剣な面持ちで聞き入っていました。
 そして結果が発表され、プログラム番号と名前が呼ばれるたびに、出吟者とその関係者の一喜一憂する姿が印象的でした。今回見事に少壮吟士候補になられたのは二名で、出吟番号七十番の大木津多代さん(兵庫)と、百三十二番の米本敬子さん(岡山)でした。今秋の武道館大会で正式に少壮吟士としてスタートすることになるお二人ですが、少壮吟士の名にふさわしい技量と人格の形成を目指して、これからより一層の精進を期待したいものです。
 入選者一人ひとりに表彰状が手渡され、入倉昭星常任理事が閉会の辞を告げると、三十回目の全国少壮吟詠家審査コンクール決選大会に幕が下ろされました。感動をあたえてくれた今大会ですが、来年も吟界をリードする少壮吟士の誕生を楽しみにしたいものです。







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