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四、日舞の振付と詩心表現研究
日本舞踊家 藤間章作先生
<講師紹介>
大正十五年二月生まれ。東京大学文学部卒業。昭和二十九年、藤間流の名取りとなり、現在「藤の会」会員。日本舞踊家の中でも第一線で活躍する理論派として知られ、謙虚な人柄と役作りのうまさで舞踊界から嘱望されている。平成三年、「藤間章作素踊りの会」で文化庁芸術祭優秀賞受賞。平成四年、文化庁芸術選奨文部大臣賞受賞。平成六年、紫綬褒章受章。平成十四年、東京新聞制定舞踊芸術賞受賞。
 
曲江(きょくこう) 杜甫(とほ) 〈吟〉若原 峰洲(わかはらほうしゅう) 忽那 琥龍(くつなこりゅう) 横山 寿城(よこやまじゅじょう)
語釈 
*曲江・・・池の名で曲江池(ち)ともいう。漢の武帝が長安の東南隅に宜春苑(ぎしゅんえん)を造り、水を「之」の字形に曲げて流したところからこの名がある。唐の開元(かいげん)年間(七一三〜七四一)に改修した。池のほとりには紫雲桜(しうんろう)・芙蓉苑(ふようえん)・杏園(きょうえん)・慈恩寺(じおんじ)・楽遊園(らくゆうえん)などあり景勝の地である。現在はこの池はない。 *朝回・・・朝廷から帰る。 *典・・・質に入れる。 *江頭・・・曲江のほとり。 *酒債・・・酒屋の借金。 *尋常・・・普通。あたりまえ。 *人生七十古来稀・・・人が七十まで生きられるのはごく少ないこと。七十を「古稀(こき)」というのはこの句による。 *穿花・・・花の咲いている中に入ること。 *蝶・・・あげはのちょう。 *深深・・・奥深くかすかなこと。ちょうがたくさんの花の中を見え隠れに飛んで蜜を吸うさま。 *点水・・・水面に尾をつけること。 *蜻蜒・・・とんぼ。 *款款・・・緩緩(かんかん)に同じ。ゆっくりと。 *伝語・・・風光に伝える。備考参照。 *流転・・・移り変わる。
通釈
毎日朝廷より退出すると春着を質に入れて金を得(え)、それで酒を買い、曲江のほとりで酔うまで飲んで家に帰って来る。酒家の借金などはあたりまえでいたるところにあるものだ。人間七十まで生きるのはごく稀でもあるから、この時節をのがさずおおいに飲むべきである。見ると、ちょうはたくさんの花の中を見えつ隠れつしており、とんぼは水面に尾をつけては飛んでいる。まことにのどかで美しい風景である。春の風光よ、わたしとともに流れていこう。しばらくの間、このすばらしい眺めを賞美(しょうび)してこの機会をにがすことのないようにしよう。
(財団漢詩集〔律詩・古詩編〕より)
 
五、剣詩舞の演技研究
(1)和歌・返らじと(楠木正行)
「剣舞」振付説明 財団評議員 早淵鯉操
演者 八九番 坂上鯉盛(兵庫)
 
和歌・返らじ(かえらじ)と
楠木正行(くすのきまさつら)〈朗詠〉河田泉(かわたろうせん)
 
(2)赤壁(杜牧)
「剣舞」振付説明 財団参与 田村天聖月
演者 五九番 長瀬天帆(石川)
 
赤 壁(せきへき)
杜牧(とぼく) 〈吟〉佐々木一景(ささきいっけい)
 
(3)隈川雑詠 その二(広瀬淡窓)
「詩舞」振付説明 財団評議員 杉浦容楓
演者 四三番 中根淑容(愛知)
 
隈川雑詠(くまがわざつえい) その(二)
広瀬淡窓(ひろせたんそう) <吟>藤原光伶子(ふじわらこうれいし)
 
(4)和歌・春の夜の(藤原定家)
「詩舞」振付説明 財団評議員 多田正稔
演者 八一番 寺田千頌(大阪)
 
和歌・春(はる)の夜(よ)の
藤原定家(ふじわらのさだいえ) 〈朗詠〉横山寿城(よこやまじゅじょう)







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