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平成14年度 運輸国際協力セミナー
第3回(平成15年1月31日)
 
【男竹理事】 時間になりましたので、ただいまから第3回運輸国際協力セミナーを始めたいと思います。
 本日はお忙しい中、また、寒いところ多数お集まりいただきまして、ありがとうございます。私は本日の司会進行役の男竹でございます。よろしくお願いします。
 さて、本日の講師は、平成13年3月から在ミャンマー日本大使館でご活躍中の照屋さんをお招きいたしまして、ミャンマーの運輸事情とODA再開の動向といいますか、見通しなどを含めて、いろいろと最新の情報をお話を伺えればと思っております。
 それでは、照屋さんをご紹介します。よろしくお願いします。
【照屋講師】 よろしくお願いします。皆様、お寒い中お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。ミャンマー大使館に平成13年の3月11日から勤務しております照屋と申します。本日は帰国休暇中でございまして、きちんとデータをまとめた資料等を持参して来なかったものですから、でき合いの資料でほんとうに申しわけないとは思いましたが、皆様のお手元に「ミャンマー経済の現状」、その後ろには、最近の情勢、現在の連邦国家機構図等をつけた資料。あとは、「ミャンマーの運輸事情と国際協力の動向」と書いた3枚のペーパー、この2枚目以降は「最近の対ミャンマーODA実績」ということを書いたペーパー。時間がありましたら、12月の25日から30日までミャンマーの南部地域のほうにたまたま出張に行ったものですから、なかなかご紹介する機会がないと思いますので、その辺をちらっとご紹介させていただきたいと思っております。
 多分、1年とちょっと前に、私の前任者であります西尾書記官のほうから、きちんとしたミャンマーの運輸事情という資料に基づいて、1回セミナーが開かれていると思います。私がふできなものできちんとデータを更新していなくて、今回持ってきておりませんので、むしろ今回は、最近の運輸事情と申しましても、最近のトピックスについてご紹介をしながらお話をさせていただきたいと思っております。
 最近のミャンマーでございますが、運輸事情、第1番目として、地方空港の拡充というのを、この1年半ぐらいミャンマー政府は一生懸命やってきております。その背景にあるのは、ミャンマーの国家元首でありますタン・シュエ議長、この人が空港の案件が大好きです。その関係もあって、彼の出身地のマンダレー郊外に4,000メーターを超える滑走路を持っているマンダレー・インターナショナル・エアポートというのをつくったという経緯もあります。今彼の命令のもとで、運輸省の航空局のほうが地方空港の拡充等を今一生懸命やっています。
 具体的には、地方南部のミエイの空港だとか、マグエ、ヘーホー、新たにパコック、4つぐらいの都市で空港の新設及び拡充というのをやっております。ただし、滑走路を長くしたり、幅を広くしたりしてはいますが、ご存じの方もおられると思いますけれども、あくまでも地方空港なので、今現在2,000メーターを必要とするような飛行機が飛んでいるという背景は全くないんです。ないんですけれども、一生懸命整備をしているということが挙げられます。
 もう一つ、ミャンマーの航空事情の中で彼らが非常に熱望しているのは、2000年に全日空さんのダイレクト便がサスペンドになったということもありまして、日本のダイレクト便を飛ばしたいと。これは私が行ったときからずっとお話が出ていまして、国土交通省の航空局さんと航空協定等についていまだに調整をやっていると聞いております。
 彼らは全日空がダイレクト便を飛ばしていたときには、ヤンゴン−関西空港ということだったんですけれども、ご存じのように、あの国は6月から10月まで5カ月間雨季ということで、その期間に大体ヤンゴンでも2,000ミリから3,000ミリぐらいの雨、1年間のほとんどすべての雨がその時期に降ってしまうと。デルタ地域、あとはもっと雨が降るところでは、年間5,000ミリぐらいの雨がその5カ月間に降ってしまうということもあって、観光でいうと完全にオフシーズンになってしまいます。
 全日空さんの話を聞いても、その5カ月間は完全に赤字だと。皆さんもご存じのとおり、大体6割ぐらい乗客が乗らないと、飛行機としてはメリットはないと。その5カ月間を取り戻すために残りの7カ月でそれがとれるかというと、とれないということから、全日空はサスベンドにしたというふうに聞いております。
 ただ、ミャンマー政府としては、やはり日本のダイレクト便が欲しいと。彼らは今、ミャンマー・エアウェイズ・インターナショナルという国営のインターナショナル、国際線の会社を持っていますが、これはシンガポールのリージョン・エアという飛行機のレンタル会社からパイロット込みで借りてきている機材です。しかも、その機材がボーイング737、1機と。その中で関空ではシェアがとれないということで、成田に乗り入れを希望していました。実際は調整がつかなくて、いまだにミャンマー政府と国土交通省の中でやりとりが行われていると聞いています。
 これに加えて、ミャンマー政府は国際線の誘致活動もいろいろとやっております。今現在、国際線はこの1年間で若干増えてきました。例えば6月ぐらいからは、雲南省の昆明からマンダレーに週3便飛行機が飛んで来るようになりましたし、ほかに、8月にはヨーロッパのラウダ航空のほうからボーイング767が週1回、ミラノから飛んできています。この飛行機は週1回なので、ミラノ、ヤンゴン、プーケット、プーケットからミラノに帰るという運航形態をしていて、おそらく、今までチャーターだったんですけれども、4月からは定期運航すると聞
いています。
 そのほかにも、タイの会社でプーケット・エアという会社がプーケット−マンダレーというのを飛ばしています。あと、これはまだ決まったことではないんですが、同じようにプーケット・エアがプーケットから南部の国境の町コータウン、コータウンからミエイ、ミエイからヤンゴン、帰りは逆に帰っていくというのを、今ミャンマー政府側と交渉していると聞いています。
 空港は国際空港が2つ、地方空港が65ございまして、うち23の空港が定期便が飛んでいます。それ以外の空港については定期使用、もしくは季節によって飛行機がおりられない空港だと聞いています。
 あと、次に水運、港湾と内陸水運についてでございます。この1月4日にミャンマー・インダストリアルポートというのの第1フェーズが完成しまして、この国のナンバー3、行政のトップでもありますキン・ニュンさんという方が来て、完成式をやりました。これでミャンマー国内、ヤンゴン港の中では港湾公社が管理しているボーワンジョウというところにありますコンテナ・ターミナル。あとは、ヤンゴンから若干車で40分ぐらい行ったところにあるテイラワというところ、シンガポールの資本でつくったコンテナ・ターミナルがあります。合わせて、インダストリアルポートと、その隣にあるアジア・ワールドポートということで、4つのコンテナ・ターミナルが正式にオープンした形になりました。
 あとは、ミャンマーには港湾の関係で言いますと、ヤンゴン港以外に、港として港湾公社が管理している港が8港ございます。その中で、いろいろな港で大水深港をつくるという計画が昔からあるんですけれども、徐々に機運が高まってきているということが最近の風潮としてあります。
 1つは、南部のダウェイという町。ここは、またどこかで時間があればご紹介したいと思いますが、ミャンマー、タニンダリー管区の根本のほうにある町です。ちょうどこれがダウェイからタイのカンジャナブリーまで高速道路を引く計画がございます。そうすると、カンジャナブリーからタイのバンコクまで1時間、カンジャナブリーからダウェイまで1時間、約2時間でバンコクまで行けると。こういうことから、大水深港をつくったらいいのではないかという計画がございまして、ミャンマー政府の中でももう一回フィージビリティー・スタディーをやりたいということを聞いています。
 それ以外でも、西側のほうに行きますとチャウピュー、海軍の基地があるところですけれども、そこにも西からインド、バングラから貨物が入ってくるので、そこに大水深港をつくったらどうかと。
 同じように、東西回廊のミャンマー側の終点になりますモウラミャインという町にも大水深港をつくったらどうかという、いろいろな計画が今のところ輻輳しています。ただ、資金繰り等の面もあるので、今のところはまだ決まっていないという現状でございます。
 イラワジ川の回廊、ランカン−メコン商業協定、これは内陸水運にかかわる話でございます。ご存じのとおり、ミャンマーという国は縦に大きな河川が4つほど流れておりまして、その中で一番大きな河川が通称イラワジ川と言っています。これを中国がお金を出して新設し、ミャンマーと中国との国境沿いの町、バモーというところにコンテナ・ターミナルをつくって、大体ドライゾーンでも500トンぐらいの船が航行可能にして、交易をしたいと。これは3年ぐらい前から中国側からオファーがありまして、ミャンマー政府といろいろともめた結果、当初、ミャンマー側は拒んでいた計画なんですが、ここに来て大筋合意に達しております。
 ただし、中国側が最初から目的としていた途中の町で交易したいということについては、認めないと。あくまでもミャンマー国内の川を通過して、ミャンマーのほうへトランジットさせる貨物のみ認めるということになっています。これはおそらく、今まででしたら、私がちょうど赴任して6月ぐらいにミャンマー政府のほうに聞きに行ったときには、中国がアンダマン海に抜ける道を確保するということは、インドという国自体がすごく危惧をしているという、インドに対して気遣いを見せていたことと、ミャンマー政府は中国を信用していないという発言も実はオフレコでありました。だから、なかなか多分これは実現しないだろうということを言っていました。
 それが、昨年の夏以降、中国の江沢民主席が来緬されまして、いろいろな援助をしていったという関係もありまして、そこからだんだんとトーンが変わってきていて、おそらくこれは今後実現するんだろうと思われます。また、ミャンマーに帰りましたら、この辺のことは調べてみたいと思っています。
 もう一つは、メコン川です。中国に入るとメコン川とランカン川ということもあって、ランカン−メコン商業協定というのが、通過をする国、ラオス、ミャンマー、中国、タイの4カ国で協定を結びまして、今まで通過をするごとに航行料を取られていたり、税金の受け取り方がばらばらだったというのを統一して、交易をしようと。当然、途中に岬とかがあるものですから、それは中国側がお金を出して浚渫をする。最近、これの工事は今年の夏ぐらいから始まっていまして、これによってタイの下流部とか、カンボジアで洪水が発生するのではないかということが新聞等々に出ていますので、ご存じの方もおられるかと思います。
 これについては、大体商業協定の中で14ぐらいの港を対象にいろいろな統一協定を結びましたが、ミャンマー国内としては、タイの国境近く、タチレクの近くにワンポン港というのが1つ、あとはマインダという町の近くにサプレ港という、2つだけしかミャンマーにはなくて、ミャンマー側にとってはあまり魅力のある話ではないということを聞いています。
 いずれにしても、イラワジ川回廊にしても、ランカン−メコン商業協定にしても、中国の経済圏をどうやって南下させていくかというところに焦点があって、果たしてそれがいいことなのか、悪いことなのか、若干疑問の残るところだと思います。
 続きまして、最近の話題として鉄道の分野でいいますと、シンガポール〜昆明レールリンク計画というのがあります。これは、GMS、グレート・メコン・サブリージョンの中の1つの計画というふうに位置づけられているもので、シンガポールから各国を通って昆明に至る鉄道を建設しましょうと。新たに鉄道を引くのではなくて、いろいろな企画がチャレンジしたそれをリンクすることによって、ものを実現させましょうというもので、プロジェクトの名前もレールリンクプロジェクトと言っています。
 これが5月と12月にヤンゴンでワークショップをやりまして、大使館からオブザーバーとしてお話を聞いてきました。特に5月のときには、フィージビリティー・スタディー等もありますから、資金面をどうやってこれを実現に持っていくかというのが1つの条件だったので、ゲストとしてアジ銀が呼ばれていました。アジ銀のほうからは、逆にフィージビリティー・スタディーが非常に弱くて実現性がないというのを会議の席ではっきり述べておられました。また、逆に、これは会議が終わってからですけれども、フィリピンのADBのオフィサーが私に、ADBはミャンマーに決して援助はしないということを話しておられました。
 12月には、逆にADBは呼ばずに、今度はESCAPを呼んでいました。いずれにしても、日本としては、これに資金を出すというのは全く考えていないというのが多分スタンスだと思います。これは、韓国も同じスタンスで、韓国大使館からも人が派遣されていましたので、彼と話をしていくと、やはり同じだと。韓国としても、中国の南下政策に対してお金を出すつもりは全くないと名言していましたので、会議の冒頭でセクレタリーのほうから、日本と韓国に対して資金の援助をお願いしたいという発言があったんですが、我々はオブザーバーであって、これは援助はできないという立場でお話を聞いてまいりました。
 このプロジェクト自体は中国と、はっきり言えばマレーシアのほうがかなり一生懸命だという意気込みは感じられますが、ほかの国は若干追随しているのかなという感じでした。むしろ韓国とも話をしていて非常に感じるのは、各国レール、鉄道というセクターは非常に弱いセクターで、これはもちろん資金面の話も含めてですが、技術レベルも低いと。もちろん、そういうところからほんとうは強化すべきなんだろうというのが、日本と韓国の立場だというふうにご理解いただければと思います。
 あとは、鉄道は83年ぐらいまでに、日本が約200億円程度の有償資金協力を出しましていろいろな援助をしていましたが、88年の動乱以降、援助はとまっていると。その中で、今鉄道だけには限らないんですが、援助をしてくれるところが非常に少ないものですから、中国の援助がかなり入っています。最近で言いますと、ここに書いてありますように中国のローン、もちろんミャンマーのお金も入っていますけれども、中古の機関車を購入しまして、ミャンマーの鉄道省としては新しい機関車が来たということで喜んだと。
 ただ、キャパシティーは非常に低くて、築十何年ぐらい、ちょっと忘れましたが、それぐらいのやつを入れているというふうに聞いています。鉄道はご存じのとおり、どこの国でも弱いセクターなのかもしれませんけれども、ミャンマーの鉄道というのはヤンゴンからマンダレーまで約600キロあります。第2の都市マンダレーまでですが、そこまでダイヤ上は14時間になっていますが、実質は17時間ぐらいかかります。今複線化が終わっているのが約半分の区間で、もう一つがまだ単線のままです。しかも信号処理がないので、たまには正面衝突を避けるために2時間駅で待っているとか、そういったことも実際のところ起こっています。
 そのマンダレーから北、ミッチーナというところまでが大体540キロぐらいですが、そこに至るとすべて単線で、鉄道の線路の状態も悪いものですから、時間でいうと27時間ぐらいかかります。実際にたまたまミッチーナに1人で出張に行きまして、この国は鉄道にかかわらずトランスポーテーションが悪いものですから、いきなり帰りにも飛行機のフライトがなくなりまして、帰れないと。1週間待ったら飛行機が来ると言っていたんですけれども、そこまで大使館を休むわけにもいかないので、急遽レールウェイズに行って、鉄道に乗ってマンダレーまで帰ってきましたが、そのときの経験から言いますと27時間かかりました。
 縦揺れ、横揺れ状況、いろいろな状況があって、私は鉄道の専門家ではないものですから、それがどうして起こるのかというのはわからないんですけれども、非常に楽しい旅行をさせていただきました。おそらくそういった信号、もしくはレールの状態とかをまず直すことから、鉄道というのは始めるのかなと思っています。
 プラス、鉄道自体、ここ5年ぐらいの平均ですけれども、年間に大体500件ぐらいの事故が起こります。1日1.5件ぐらい起こります。死者は若干名としかレールウェイズは教えてくれませんが、実際のところは3桁ぐらいの人が亡くなっている可能性もあります。今の政府になってから、和平協定を94年以降、カチン州、シャン州、いろいろなところで結んだ関係がありまして、そこまでいろいろな鉄道を延ばしていきました。それで、この10年ぐらいで鉄道の延伸というのが約2倍になりました。ただ、事故の数も2倍になったと。
 いろいろなことを聞いたら、レールウェイズのほうで予算を握っているんですけれども、人材育成や技術力を高めるのに使える予算がないと。そういったことがあって、人為的な被害も、事故のうち3分の1から4分の1ぐらいはヒューマン・エラーではないかという感じがいたします。







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