まずどのプロジェクトを持ってこようかと悩んだんですが、やはりバタンガスしかないのかなと思いまして、まずバタンガスのご説明をさせていただければと思います。もう皆さんほんとうによくご承知だとは思いますけれども、このプロジェクトはいろんな要素を持っていまして、まず用地取得の問題。インフラ系のプロジェクトをやろうとすると、どうしてもこの用地取得があります。それから住民移転。必ず空き地には住民が張りついていますので、リロケーションの問題がある。ということは、再定住地をどこかに確保しないといけない。
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それから、ここにありますけれどもNGOというものがあります。この中にNGOから来られている方がおられるかどうかわかりませんけれども、このNGOの活動というのがこのあたりから非常に強くなってくるというのがありまして、現在でもフィリピンではNGOの活動を無視しては何らできないという状況になりつつあります。用地取得のフェイズ1のときですけれどもいろいろ問題がありまして、最終的にデモリションということで撤去したんですが、一部住民とのいざこざがありまして、銃撃等がありまして、けが人も出たということで、支援が停止されたわけです。それで最終的には住民移転に関しておおむね解決ということで、全部は当然解決してないんでしょうけれども、フェイズ1が動いていったということであります。
フェイズ1というのは、貨物船も一部ありましたがフェリーがメインのところなんですが、フェイズ2、今度はこれはコンテナの埠頭をつくるところなんですけれども、ここでも同じような問題が出てきています。このフェイズ2に関してはNGOとかそういうものはあまり極端には関係しておりませんけれども、今度は用地取得の問題で大きな問題を抱えてしまった。結局裁判で決着を図らざるを得ないということなんです。
どういうことかといいますと、フィリピンのいろんな姿だとは思うんですけれども、裁判官といえども人の子という感じのところがあるんです。例えば用地の値段をつけるときに、非常に不当な値段が裁判で降りる場合があるようです。ただ、この場合がどうかはわかりませんけれども、例えば1平米数百ペソで、1ペソは2.5円ぐらいですけれども、数百ペソで買えるような土地なんですが、裁判の結果は1平米5,500ペソという値段が出まして、それではプロジェクトはできませんねということで頓挫していたんですが、上のほうの裁判に持っていって、ようやくそれも落ち着きそうでありますが、まだ最終的には終わっていません。ただし、一応供託金ということでプロジェクト実施派がお金を積んでいますので、そういう意味でフェイズ2というのは動いているんです。
それからここに入札問題とありますけれども、これはいかなるプロジェクトを実施しようとしても入札問題は切って離せないという問題です。民間の方はほんとうによくご承知だと思うんですけれども。
それからフィリピンの鉄道ということで、鉄道もこれはまた広くて一口では言えないんですが、極端な話、計画というのはほぼできております。要するに後はやるかやらないかというところでありまして、その中で2号線のプロジェクトというのがあります。
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これが図面ですけれども、これがマニラの首都圏、メトロマニラと言われている地域ですけれども、これはいわゆるマニラベイです。これがラグーナ湖という湖で、太平洋はこちらの側にあります。非常に幅の狭いエリアにマニラ首都圏がありますけれども、このあたりが大体中心地でありまして、先ほどのEDSA通りというのはこういう形で通っております。旧国鉄がこのあたりからずっと通って下のほうへ行く。それから1号線というのが、ここにカロウカン市というのがありますけれども、このカロウカンからパサイと書いてありますこのあたりまでずっと来ております。
それから今現在動いているものとして3号線というのがございまして、これは住商さんと三菱重工さんがやったやつですけれども、まだ完全にはつながっておりませんけれどもこのEDSA通りをほぼカバーするような形で3号線がある。従って1号線、3号線、PNR(国鉄)ということで、この3本が今通っているわけなんです。2号線というのは、ここをマニラ市の真ん中からずっと来て、こちら側のベッドタウンにつなげるという路線です。
これは3号線の車両です。軽量ですので、幅は標準機ですけれども車両としては小さめになっている。チェコから来たやつです。
これが1号線の車両です。それからちょっと見にくいかもしれませんが、これがPNRなんですが、ここが駅でないようなんですけれども、実はここはタイマンの駅なんです。ホームはありませんけれども。こちら側にちょっと見えるビルが本来ですと一番大きなヘッドクォーターであり、番のセントラルステーションになるわけなんですが、まだ使われてないということです。
これが引っ張るやつ、ロコです。ここにちょっと客車が見えますけれども、これをくっつけて動いていくということです。
2号線なんですけれども、1号線:LRT、3号線:LRT、2号線は何かというとヘビーレールなんです。こういう計画ものは私がとやかく言う話ではありませんけれども、そういう意味でどうだったのかなというところもございます。それから今後人口増加で非常に乗降客数が見込めるところなんですけれども、車両数としては非常に限界があるということで、どうするのかなという。ちょっと私自身も今後わかりませんが、ただ、そうはいってもできれば非常に大動脈になりますので、使われることは間違いないです。
ここでも発注問題がありまして、あまり発注の話をするつもりはございませんけれども、2号線プロジェクトということで、このときにはフェイズ1からフェイズ4、パッケージ4と言っていますけれども、4つに分かれていたんですが、やはり車両物の発注というのは大きいんです。そうするとどうしてもそこにいろんな人が絡んでくるということで、ここだけの話ですけれども、結局は内部のリークからちょっとこれはおかしいんじゃないのということで文句を言い始めて、最終的にそれなりのところに落ち着いたというところで、当初2社、2グループ、2コンソーシアムしか公開されていませんでしたけれども、最終的に6コンソーシアムがクオリファイされて最終的に残った社が車両物のところを受注したということで、現在丸紅さんが一生懸命やられていますけれども、これは重機、ヘビーなんですけれども、1つの車両の価格が1億を切っているんです。9,000万ぐらいと言っていましたけれども、そういう意味では非常に安い買い物が結果的にできたと。ただ、受注側としてはほんとうにそれでもうけが出るのか、私自身にはよくわかりませんけれども、発注側としてはよかったんじゃないのかなという気がいたします。
それからPNRというのは先ほどもありましたけれども、いろんな問題を抱えていまして、困っちゃったなというところがございまして、一時期、いわゆる軌道の補修を借款でやったんですけれども、部分的にやって全線をやりませんでした。結果的に全線やらなかったがために、やらなかったところはもうくたくた状態でだめになっちゃってるような状況で、今後どうするのか、自分たちは予算がないし、車両もだめになっていて、ほんとうにめどが立たないところがございます。
例えばJR東日本が、そんなことじゃいけないでしょうということで、JR東日本の好意のもとに車両を30両ほど寄贈したわけなんですけれども、寄贈した当初は、立派なものが多少の変更で走ったからよかったんですが、結局そのうちパーツがないとわかる、事故にあったとかでどんどん使えなくなってきてしまって、今何車両動いている状態かわかりませんけれども、今後どうするのか。また元に戻ってしまったというところがありまして、PNRは非常に頭が痛いです。ただし、路線としては非常にいいところを通っておりますので、これはやはりもうちょっと国のほうが何とかしなきゃいけないのかなと思いますが、これは先ほどのスクウォッターの問題もありまして、頭を悩ましぎみです。
それから、North Railとありますけれども、これはここのカロウカンというのがありますが、ここにEDSAがあって、ここに1号線が通っているわけなんですけれども、上のほうからずっと伸ばしてきてマニラに入れましょうというプロジェクトです。プロジェクトの思想としては何ら問題ないし、例えば上のクラークとかがありますけれども、最終的にはクラークあたりからも視野に入れながら上からコミューターを連れてこよう。あるいはコミューターだけじゃなくて、いろんな乗降客を集めてマニラにもってこようというプロジェクトなんです。目的としては問題ないんですが、移転問題がありまして、これを今後どういうふうに解決するか。悩ましい話なんですが、フィリピン政府としてはやっていかなきゃいけないんじゃないのかなということだと思います。
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それから、具体的な業務をするフィリピン紹介ということで、観光ということなんですが、やはりフィリピンは観光をもっと頑張らなきゃいけないんじゃないかということです。ある面においては観光分野のODAがもっとあってもいいのかなと思いますけれども、観光というキーワードで切って具体的に何が出てくるのかというと、ちょっと頭が痛いところもあるんですが、あるいは観光分野の専門家を派遣してもいいんじゃないかという意見もあります。そういう意味でフィリピンはもっと頑張らなきゃいけないということですが、例えば我が国ですと、ご存じのように約4時間で成田から着いちゃうわけなんですけれども、日本からフィリピンは約40万人弱。多分38万人ぐらいだと思いますけれども、米国についで2位に位置しています。ただ、米国も例のテロ事件があって以来、非常に急激に落ちていますので、今日本と米国はあまり差がないんじゃないかと思いますけれども、このような状況です。
逆にフィリピンから日本にどれだけ行っているかという話なんですけれども、8万人ぐらいだと思いました。ただし、要ビザということで、ビザを取らないと日本には行けないものですから、当然そこに1個ハードルがあるわけなんですけれども、これだけの差がありますということで、このあたりに関しても日本のほうをもうちょっと考えないといけないんじゃないかと思います。例えばビザというのはほんとうに悩ましい問題なんです。当然ビザを取る人はいろんな種類の方がおられまして、こちらに働きに来る方もおられますので、6カ月ビザで働いて帰るという方がほとんどです。ただ、そうはいっても純粋にビジネスで来られる方も大多数おられますので、そういう方に対してビザが適切に配布されないというのは大きな問題でありました。
といいますのも、ビジネスマンというのは会社を何個も持っていて、お金もいっぱいあるんですが、自分自身でビザを取りにくるのが嫌なんです。代理人を出すというのがほとんどなんですが、代理人だと結局のところ書類が不備であるとか、内容がだめであるとか、漏れがありまして、なかなか取れない状況が多々あります。あるいはビザの必要書類としてITR(Internal Tax Return)というのがありますけれども、いわゆる税務申告書を出さなきゃいけないんですが、偉い方々は大体この税務申告書をチョンボしているんです。そういうのがございましてかなり引っかかっちゃうというのがあります。それで結局ビザを出せない。何とかしてくれということで、おつき合いのある方々は、ビザを出してくださいと来るわけなんです。それで、大使館の場合にはビザ窓口だけじゃなくて各書記官もビザを扱えます。これは特需と言っていますけれども、各書記官が書類をつくって、ビザセクションに持っていって、ビザを発給することが可能です。ただ、なかなか事務手続きに負担がかかるということで、書記官でもやる書記官とやらない書記官に分かれますけれども、昨今経済活性化と言われて、それはフィリピンも日本も同じなんですが、活性化する場合にはフローがなきゃだめだろうということで、フローを生むためには人が動く、あるいはお金が動く、情報が動くということは非常に重要だと思うので、その1つの積み重ねである人の動きを止めちゃうのはいかがなものかということで、これはどんどん大使館としてもやっていかなきゃいけないことだと思います。
豊富な観光スポットとありますけれども、セブ、エルニド、ボラカイ、多分キーワードは皆さんご存じだと思うんですけれども、このように砂浜がありまして、非常にきれいなところがございます。ただ一方で、ここに勝手に写真を拝借してきちゃいましたけれども、マニラ空港内でこのような方々が来られると別室に案内して、手を見せてください。次に服を脱いでください。こういう手順でチェックが入ります。これで引っかかるとお帰りくださいと帰っていただくことになるわけなんですが、そういう意味でフィリピンでもこの方々の名前は日本語で新聞にでもいろんなところに登場しますので、偏ったイメージをフィリピンに対して与えてしまうというのが今でもあります。
それから、日本の側においても逆にフィリピンに対して、知っている方はもう非常に知っているわけなんですが、知らない方は、あっ、フィリピンかということで、何ら中に入るまでもなく、もう悪いイメージを頭の中にイメージしてしまう。これはフィリピンにとって非常に大きなマイナスだと思いました。事実、私自身もフィリピンに行く前はそういうイメージを持っていましたので、人のことはとやかく言えないんですが、やはりもうちょっとお互いに変えていかなきゃいけないのかなということはあると思います。こういうことが、ひいてはいろんな日比間の交流にもっとつながってくるんだと思います。
それから、この危険度情報というのがございます。これはテロ事件の以前からフィリピンに出ていたわけなんですけれども、外務省が危険度1、2、3、4、その当時は5まであったと思いますが、今はたしか4までになったんです。それで、危険度2以上が出ると、フィリピンに限らずどこでも運輸省通達によってパッケージ旅行はだめですよ、あるいは手配旅行はだめですよということになって、いわゆる個人で来る人以外は行けなくなっちゃう状況が存在しました。これはいいのか悪いのか、一方では当然いいわけなんですが、一方では当然悪い。悪いと言いますのは、そこで流れが止まってしまうというのと過度な危険を流すというところに行き着くのかと思います。何をもって過度というのか非常に難しい判断ですけれども、国の側としては当然事件が起きたら国の責任だ。あるいは何かが起きたらすぐ言われてくるということで、逃げの姿勢に入ってしまうんですが、一方でフィリピンに入ってくる日本人客を扱うインバウンドの旅行会社というのがいっぱいあるわけですけれども、これはほとんど日系というか、日本人がやっている会社なんです。その日本人がやっている会社というのは、危険度2が出た時点でほとんどもう営業するのが困難になるぐらいな状況に陥ってしまうわけなんです。そういう意味では危険度2の出し方というのは、本来もっと考えなきゃいけないんですけれども、逆に国の側、外務省の側、在外大使館の側が情報を持っているかというと必ずしも持っていない。軍とか警察からはどんどん情報が入りますけれども、そういう意味で非常にこの辺は取扱いが難しいなと思いました。出すのは簡単なんですが、こういう情報は1回出しちゃうともう引っ込めることができなくなるというのが非常に大きな問題だと思います。
例えばセブのODAの事業がありましたけれども、ある会社が銃撃を受けてストップしました。ご存じの方もあるかもしれませんけれども、ストップしたのはいいんですが、何をもって再開するかという指標は一切ありませんので、こういう危険に係る情報というのは非常につらいといいますか、扱いが微妙であるということであります。
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