|
SR246「船殻ブロックのデジタル生産技術の基礎研究」
要約
Practical Application of Digital Production Technologies for Ship
Hull Blocks
Summary
In order for Japan to effectively compete internationally in the shipbuilding industry, digital production technology driven by numerical information processing must be introduced in shipyards, thus ensuring new and advanced shipbuilding capabilities and production technologies. The following digital production technologies have been developed in the context of SR246.
1) Establishment of heating deformation estimation technology and heating deformation control technology for ship hull materials and blocks, to be used in high precision forming and assembly.
2) Establishment of digital conversion technology for the creation of theory and simple numerical/formulaic methods from the process-related knowledge possessed by skilled workers.
3) Development of 3D measurement technology to substitute for the eyes of skilled workers, to be used to ascertain the dimensions and shapes of materials at each manufacturing step.
4) Development of numerical information processing technology for the fusion of the technologies described in items 1) 〜 3) above.
The following results can be expected from the introduction into shipyards of the foregoing digital production technologies.
(1) Consistent high precision and high efficiency block production, from plate bending through to construction in dry dock.
(2) Substantial reduction in non-value-added work (readjustment, re-marking, etc.)
(3) Reduced lead time, enabling shorter construction/delivery time and increased annual volume of construction.
本研究の目的は、我が国の造船業が厳しい国際競争に打ち勝つために、次に示す要件を満たす造船工場を構築することにある。
(1)現状の工場においてさらなる生産性の向上
(2)製造コストの低減を図り、高品質生産の維持を指向
(3)高精度生産技術を工場全体に定着させ「むり、むら、むだ」を徹底排除
これらを実現するためには、数値情報処理技術を駆使したデジタル生産技術を造船現場に投入し、従来にない造船の高精度生産技術を確立する必要がある。これにより、溶接付帯作業を低減し、「むり、むら、むだ」を徹底排除した造船工場に変革することで生産性の一層の向上を図ると共に、熟練工の減少と高齢化への対処とすることである。
造船現場にデジタル生産技術を投入するため、次の技術目標を設定した。
(1)高精度な加工及び組立のための、船殻部材及びブロックの加熱変形推定技術と加熱変形制御技術の確立
(2)熟練技能者の作業知識の理論化または簡便な数値化及び数式化によるデジタル変換技術の確立
(3)各製造段階における部材の寸法形状を把握するための、熟練技能者の目に変わる三次元計測技術の開発
(4)上記1)〜3)項の技術を融合した数値情報処理技術の開発
造船現場にデジタル生産技術を適用するため次の技術開発を行った。
(1)ナレッジとデジタル化
板曲げ加工、ロンジ曲げ加工及び中組立作業の暗黙知である熟練技能をシミュレーション技術やモデル化により形式知化し、デジタル化を試みた。
(2)加熱変形データベースと変形シミュレーション技術
板曲げ加工、ロンジ曲げ加工の加工指示書を設計段階で作成するために必要な、加熱変形データベースとシミュレーション技術の基盤を固めた。
(3)三次元計測技術
熟練技能者の目に代わる最新の三次元計測技術を、造船現場の各ステージ(板曲げ加工、ロンジ曲げ加工、中組立作業)毎に適合性を調査した。更に、これら三次元計測技術を適用する場合に必要な造船現場特有の自重、拘束、温度影響をキャンセルする手法について検討した。
(4)実証実験
上記ナレッジの分析から得られた新しい板曲げ加工、ロンジ曲げ加工の手法を提案した。本手法の妥当性を現場での実用化を想定した実証実験により検証した。
本研究の成果を現場の実用化という観点から下記にまとめる。
(1)板曲げ加工については、従来の現場板曲げ加工ステージで熟練作業者に依存していた加工要領が、本研究で開発した“曲面理論を適用した加熱位置決定手法”と“加熱変形推定技術を利用した加熱量の決定手法”を用いて「加熱位置自動決定プログラム」を実行することで、設計段階の現図展開時に加熱位置を事前に検討し加熱要領として加工指示をすることが可能になる。また、形状計測を板曲げ加工ステージでインライン化することができれば加熱加工毎に計測し、計測結果を曲面解析して次の加熱位置を決定することが可能になると共に自動装置化することも可能になる。また、板曲げ加工の上流工程になる設計作業の現図展開を含めて考察すると、原理的には展開時の伸ばし量が板曲げ加工時の収縮量になるので、展開誤差のない現図展開手法を応用展開すれば更に高精度に設計〜加工までの一貫システムの構築が可能になる。
(2)ロンジ曲げ加工についても、板曲げ加工と同様に従来の現場ロンジ曲げ加工ステージで熟練作業者に依存していた加工要領が、本研究で開発した“目標のネジレ量に対する加熱時の拘束変形量の推定技術”を用いて「加熱加工要領出力リスト」ソフトをExcelなどを使って構築することで、設計段階の現図展開時に加熱位置を事前に検討し、加熱要領として加工指示をすることが可能になる。但し、本研究では弾性域(線形)における拘束影響を利用した純捻れ加工方法を対象としているため、塑性域(非線形)まで拘束影響を考慮した、即ち、熱弾塑性FEM計算を駆使して加熱時の拘束変形量の推定を行って加工要領を出力できるように応用展開を図ることが望まれる。
(3)加熱変形推定技術のために必要なガスバーナー加熱時の入熱量の定量化が図られ、従来は現場での入熱量は大、中、小と定性的な指示だったものが、本研究成果を活用することで入熱量のダイナミックスな時間変動まで考慮可能な推定技術化が可能となり、現場での定量的に入熱量を指示することが可能となる。更に、本成果を加熱変形推定技術との連結を図ることにより、通常、推定計算条件としてガス入熱時の温度分布を実験的に求める必要があったが、推定計算のみでガストーチの移動まで考慮した温度分布の時系列変化までダイナミックスに高精度に推定することが可能となる。更にモデリングや計算時間の簡素化が図れるものと期待できる。
(4)デジタル生産技術に不可欠であると思われる三次元形状計測技術については、従来の巻尺、金尺、水ホース等の計測ツールを用いた計測から、計測データのデジタル値を入手することによって工作精度管理技術に活用できると考えられる。しかしながら、最新の三次元形状計測装置によって高精度に計測が可能となるが、その実現のためには計測対象に応じた治具、場所、基準となる計測ポイントなどが必要である。これらの設備の選択及び使い込むには熟練を要するため、予め計測対象に応じた設備が整備された計測ステージを設けることにより熟練レスでだれでも簡便に形状計測が可能となるものと考えられる。応用展開としての実用面では計測ステージの構想も必要になると思われる。
(5)また、三次元計測技術については、造船に必要な精度以上に高精度に計測が出来ても元々剛性が低い状態では、設置状況、気温、その他の条件で部材が変形してしまう。このため設計情報と工作情報を単純に比較出来ず、計測結果から部材の必要な精度を管理するには経験と勘に基づく熟練を要していた。本研究で開発した“計測対象の自重、拘束、温度影響キャンセル技術”を用いることで単純に設計情報であるCAD値と計測値を比較することが可能になると考えられる。また、特にブロック製作時の精度管理項目であり、捻れなどの要因を捉えるのに有効なガース長さの計算も管理ソフトとして利用することで計測データを入力するだけで簡便に把握することが出来るようになると考えられる。更に応用展開を図るには、(4)の計測ステージの整備と同様に計測対象に応じた評価ソフトの整備を図る必要がある。
(6)中組立工作精度管理としては、従来は経験と勘に基づく工作精度管理ブロックを設定していたが、本研究の成果を活用することにより板曲げ、ロンジ曲げでの部材精度管理のみで中組ブロックの高精度な生産が可能なブロック形状はどのようなものなのかといったことを定量化することが出来る。更に、この技術の応用展開として、ブロック分割の合理的な設計手法の開発に応用出来るものと考えられる。
(7)本研究自体の研究開発の手法は、造船の多くの熟練を要すると云われる技能に対して作業ノウハウである作業知識を形式知化、即ち、ナレッジ化するためのアプローチとして有効であると考えられる。従来は各社自前の現場ノウハウであり、更には作業者に依存していた技能であった作業ノウハウを、本研究部会で実施した現状調査、ヒアリング、討論会を通して得た知見を基に、「各社いい所取り」で実用化を進めている。今後は、本研究部会で取得した研究の進め方を参考に、例えば、中組立作業のデジタル化などで、鉄工作業を模擬した部材引き付け影響を考慮した組立変形推定技術の開発などの応用が可能となる。
本成果報告書は、日本財団の助成事業として、日本造船研究協会第246研究部会において、平成12から14年度の3ヵ年計画で実施した「船殻ブロックのデジタル生産技術の基礎研究」の成果を取りまとめたものである。なお、本研究は日本造船工業会から受託して行ったものである。
| 第246研究部会委員名簿 |
| (敬称略、順不同) |
| 部会長 |
野本 敏治(東京大学) |
| 代表幹事 |
河野 隆之(三菱重工業) |
| 委員 |
豊貞 雅宏(九州大学) |
青山 和浩(東京大学) |
| 豊田 政男(大阪大学) |
冨田 康光(大阪大学) |
| 寺崎 俊夫(九州工業大学) |
村川 英一(大阪大学接合科学研究所) |
| 松岡 一祥(海上技術安全研究所) |
井上 好章(三菱重工業) |
| 大澤 守彦(日立造船) |
谷川 雅之(日立造船) |
| 水谷 和時(ユニバーサル造船) |
島本 英史(住友重機械工業) |
| 石山 隆庸(IHIマリンユナイテッド) |
内藤 喜幸(三井造船) |
| 工藤 仁志(川崎造船) |
| 前委員 |
佐竹 博己(川崎重工業) |
稲見 皎(川崎重工業) |
| 第246研究部会幹事会委員名簿 |
| (敬称略、順不同) |
| 主査 |
河野 隆之(三菱重工業) |
| 委員 |
井上 好章(三菱重工業) |
大澤 守彦(日立造船) |
| 水谷 和時(ユニバーサル造船) |
島本 英史(住友重機械工業) |
| 石山 隆庸(IHIマリンユナイテッド) |
内藤 喜幸(三井造船) |
| 工藤 仁志(川崎造船) |
| 前委員 |
佐竹 博己(川崎重工業) |
稲見 皎(川崎重工業) |
| 第246研究部会WG1委員名簿 |
| (敬称略、順不同) |
| 主査 |
豊貞 雅宏(九州大学) |
| 幹事 |
大澤 守彦(日立造船) |
| 委員 |
武市 祥司(東京大学) |
村川 英一(大阪大学接合科学研究所) |
| 大沢 直樹(大阪大学) |
寺崎 俊夫(九州工業大学) |
| 後藤 浩二(九州大学) |
岩田 知明(海上技術安全研究所) |
| 河野 隆之(三菱重工業) |
杉村 忠士(三菱重工業) |
| 谷川 雅之(日立造船) |
谷 和彦(日立造船) |
| 水上 優(ユニバーサル造船) |
小山 清文(ユニバーサル造船) |
| 森川 正夫(ユニバーサル造船) |
尾上 仁久(ユニバーサル造船) |
| 天野 昌祥(住友重機械工業) |
小林 順(IHIマリンユナイテッド) |
| 谷口 清久(川崎造船) |
梅本 浩一朗(川崎造船) |
| 神永 肇(三井造船) |
近藤 学(三井造船) |
| 前委員 |
榎並 靖之(日立造船) |
伊藤 久(日本鋼管) |
| 伊藤 圭司(住友重機械工業) |
| 第246研究部会WG2委員名簿 |
| (敬称略、順不同) |
| 主査 |
野本 敏治(東京大学) |
| 幹事 |
井上 好章(三菱重工業) |
| 委員 |
青山 和浩(東京大学) |
松岡 一祥(海上技術安全研究所) |
| 田中 義照(海上技術安全研究所) |
河野 隆之(三菱重工業) |
| 三浦 正美(三菱重工業) |
中谷 光良(日立造船) |
| 北川 義訓(ユニバーサル造船) |
柳田 博彦(ユニバーサル造船) |
| 河崎 登(ユニバーサル造船) |
宇野 清隆(ユニバーサル造船) |
| 浪越 正至(住友重機械工業) |
石川 太郎(IHIマリンユナイテッド) |
| 清水 英樹(川崎重工業) |
太田 光一(川崎造船) |
| 藤村 英明(三井造船) |
近藤 学(三井造船) |
| 古賀 由秀(三井造船) |
| 前委員 |
松浦 盈雅(日立造船) |
秦 直也(川崎重工業) |
| 笠木 明(三井造船) |
| 討議参加者 |
| (敬称略、順不同) |
|
宮脇 伸賢(住友重機械工業) |
白土 次男(三井造船) |
| 中濱 剛(三菱重工業) |
| 事務局 |
(日本造船研究協会)宮澤 徹、大森 勝、村上 好男 |
| (日本造船工業会)吉識 恒夫 |
注)前委員の事業所名は、会社統合化・分社化前に委員交替されたため、旧事業所名としている。
【平成14年10月1日付 造船会社の統合・分社化】
(1)「日立造船株式会社(造船部門)」と「日本鋼管株式会社」が合併統合され、「ユニバーサル造船株式会社」となる。
(2)石川島播磨重工業株式会社の船舶海洋部門が分社化され、「株式会社IHIマリンユナイテッド」となる。
(3)川崎重工業株式会社の船舶部門が分社化され、「株式会社 川崎造船」となる。
|