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資料2
水陸両用客船Miss Majestic号沈没事故
概要(Summary)
 本件は、1999年5月1日水陸両用客船Miss Majesticが、定期周遊ツアーのため、船長1人が乗り組み、船客20人を乗せ、アーカンサス州ホットスプリングス近くのハミルトン湖に入ったところ、その7分後に船体が左舷に傾き、その後急速に船尾から水没を始め、船客1人は沈没前に脱出したが、船長と残余の船客は船体の天蓋(Canopy Roof)に遮られて湖中に引き込まれ、同船長と6人の船客は船体が沈下している間に脱出し、浮上して付近のプレジャーボートに救助されたが、子供3人を含む船客13人は、約18メートルの湖底で死亡した事故である。
 本船は、元はといえば、第2次世界大戦中、米国陸軍が、兵員と物資を輸送するために開発した、DUKW(またはDuck)と称される水陸両用車であるが、21,000台以上製造されたDUKWのうち、戦後過剰となったものが民間に払い下げられ、周遊旅客船に改装され、商業用として再利用されているものである。
 本船の長さ、幅、深さは、それぞれ9.5メートル、2.5メートル、1.2メートルで、1車軸2車輪の前輪が1本の前輪駆動軸(Front-wheel drive shaft)で、また、2車軸4車輪の後輪が2本の後輪駆動軸(Rear-wheel drive shaft)で、それぞれ作動されるようになっている六輪駆動車であるが、各駆動軸は、船体を貫通しているので、Cylindrical Steel Housingによって保護されており、また、同Housingは、Rubber Boot(Shaft Boot Seal)によって水密性が確保されるようになっている。
 そのため、Bootに穴があいたり、これが外れたりすると水が自由に船内へ入ってくることになる。なお、機関は船体前部にあり、プロペラは3翼で船体中央部にある。
 ところで、本件発生前の1999年4月29日、船長は、湖上周遊ツアーが終わりに近付いて湖岸に接近したとき、Bilge SystemのHiggins Pumpが周期的に排水を繰り返し、そのうえ、船体中央部に水が溜まると自動的に発動する前部のElectric Bilge Pumpが連続的に排水しているのに気付き、会社に連絡したところ、Maintenance Mechanicが來船し、Rear Drive shaft HousingのForward Rubber Bootに亀裂を発見したので、これを取り替え、また、同HousingのAft Rubber Bootにも亀裂を発見したので、事故の当日これを中古Bootと取り替えている。
 しかしながら、このWatertight Rubber Bootが適切に固定されていないまま、Miss Majesticは、業務を再開して湖に入ったため、最初Drive shaftとDrive shaft Housingの隙間から浸水し、その後Rubber Bootが脱落して浸水が激しくなったにもかかわらず誰もが浸水に気付かずにいるうち、船長が危険を察知したものの、程なくして沈没した。
 NTSBは、本件発生の推定原因(Probable Cause)を船舶所有者の修理、及び保守の不適切としている。
 
Figure 1. The Miss Majestic. When the DUKW was converted for commercial passenger service, a steel frame was installed around and over the passenger compartment. The Miss Majestic had a vinyl canopy over the frame to protect passengers from the weather.
 
Plan view of the Miss Majestic's drive shaft and chassis assembly. The area indicated by a dotted line includes the drive shaft and its rubber boots, which were designed to provide a waterproof seal for the drive shaft's penetration into the hull.
 
Above is the drive shaft housing and hinge pin assembly as shown in the Army technical manual for DUKWs. The hinge pin assembly, which holds the housing in position relative to the hull, was missing from the Miss Majestic.
 
Figure 2. Top illustration shows the Miss Majestic's assembly and the approximate locations of the Higgins pump and the three electric bilge pumps. Bottom illustration shows a side view of the driveshaft housing and components as designed by the Army.
 
16732
September 29, 1999
 
SINKING OF THE M/V MISS MAJESTIC ON LAKE HAMILTON, HOT SPRINGS, ARKANSAS ON MAY 1, 1999 WITH MULTIPLE LOSS OF LIFF
 
 
A PROPELLER SHAFT HOUSING SEAL F HAND BRAKE
B PROPELLER SHAFT HOUSING G MAIN TRANSFER CASE
C HULL BULK HEADS H WATER PROPELLER TRANSFER CASE
D PILLOW BLOCK I TRANSMISSION
E PROPELLER SHAFT ASSEMBLY J HOUSING DRAIN PLUGS
 
Figure 6. Postaccident view of the rear driveshaft boot.







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