VIII 貨物運送取扱事業の現況
貨物運送取扱事業法は、従来、鉄道、航空等各輸送機関ごとの事業法令に基づき、それぞれの運送を補完する事業として位置付けられていた貨物運送取扱事業を、各輸送機関にまたがり、独立した機能を果たす事業として位置付けるとともに、事業規制の簡素・合理化を図ることを目的として、平成2年12月1日制定された。
なお、事業者の創意工夫を活かした多様なサービスの創出や迅速な事業展開を可能にするための規制緩和の措置により、物流全体の多様化・効率化・物流市場の活性化を図ることを目的として、平成14年6月に同法を一部改正し、平成15年4月に施行予定である。
(1)事業者数の推移
九州管内における貨物運送取扱事業者数は、貨物運送取扱事業法施行時、利用する運送機関ごとの合計で7,836事業者(事業者の重複を含む)であったものが、平成14年3月末には8.3%増の8,485社となっており、毎年わずかながら増加している。
新規参入は、そのほとんどが自動車運送に係る第一種利用運送事業であったが、地球温暖化問題や環境問題等への認識の高まりを受け、鉄道運送に係る第二種利用運送事業への参入が増加傾向にある。
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資料: |
九州運輸局自動車交通部貨物課 |
(注) |
1. |
山口県は、宇部市、小野田市、厚狭郡、下関市、長門市、大津郡及び豊浦郡を対象とし、海運のみを計上。 |
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2. |
その他の欄は、主たる事務所(本社)の所在地が九州運輸局管内に所在するものを計上。 |
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3. |
航空欄の( )書は、国際航空事業者数で内数。 |
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資料: |
九州運輸局自動車交通部貨物課 |
(注) |
鉄道の欄の( )書は、貨物運送取扱事業法附則第10条の規定による確認事業者で内数。 |
鉄道貨物の輸送量は、バブル崩壊に伴う不況の影響、阪神淡路大震災等の自然災害の影響もあり、平成2年度以降毎年減少傾向にあったが、平成12年度に10年ぶりに前年度実績を上回った。
日本貨物鉄道(株)(昭和62年4月発足)では、平成9年度から5ヶ年計画による経営改善策「新フレート21」策定等の増送増収策を講じ、経営努力をした結果、最終年度の平成13年度には9年ぶりの経常黒字となったが、更に平成14年度からの3ヶ年で完全民営化に向けた経営基盤の確立を目指した新しい中期計画「ニューチャレンジ21」を策定した。本計画では輸送の安全確保を第一とし、高品質で安定した輸送サービスを提供することは勿論のこと、高性能列車の導入等によるリードタイムの短縮、大型コンテナを含む新規格コンテナの輸送体制・輸送機材の整備、列車の長大編成化、E&S方式着発線荷役駅の拡大等の輸送効率向上策で利用者のニーズに応えて行くこととしている。
九州管内においても、平成14年3月には約20haの敷地に24両編成貨物列車の着発線6線、コンテナ荷役ホーム3面(うち2面は着発線荷役方式を採用したホームで、もう1面は大型コンテナ及び海上コンテナ等トップリフターによる荷役を可能としている)等の近代的な施設を有した北九州貨物ターミナル駅が開業したことに伴い、コンテナ貨物輸送の更なる効率化が期待されている。
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資料: |
九州運輸局自動車交通部貨物課 |
(注)1. |
通運実績及び鉄道取扱実績の、( )書は、コンテナ扱いで内数。 |
2. |
鉄道取扱事業収入には、鉄道運賃を含む。 |
【平成13年度】
(単位:トン) |
順位 |
駅名 |
発送 |
到着 |
計 |
1 |
福岡貨物ターミナル |
731,020 (731,020) |
1,938,626 (1,938,626) |
2,669,646 (2,669,646) |
2 |
浜小倉 |
382,146 (381,636) |
579,615 (575,821) |
961,761 (957,457) |
3 |
熊本 |
160,966 (160,966) |
219,652 (219,652) |
380,618 (380,618) |
4 |
鍋島 |
194,113 (194,113) |
84,878 (84,878) |
278,991 (278,991) |
5 |
鳥栖 |
46,711 (46,711) |
211,731 (211,731) |
258,442 (258,442) |
6 |
鹿児島 |
94,634 (94,634) |
161,533 (161,533) |
256,167 (256,167) |
7 |
大牟田 |
91,383 (89,344) |
164,310 (41,327) |
255,693 (130,671) |
8 |
久留米 |
95,326 (94,737) |
135,076 (135,076) |
230,402 (229,813) |
9 |
西大分 |
122,373 (120,243) |
80,034 (79,991) |
202,407 (200,234) |
10 |
川内 |
142,760 (142,760) |
12,876 (12,876) |
155,636 (155,636) |
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資料:九州運輸局自動車交通部貨物課 |
※ |
1.取扱数量の多いものから10駅を記載 2.( )書は、コンテナ扱いで内数。 |
(1)モーダルシフトの推進
トラック輸送は、我が国の貨物輸送の中で、モーダルシフト対象貨物(注1参照)の全輸送機関に占めるシェアはトンベースで90%、トンキロベースで50%を超えており、国内貨物輸送の重要な役割を担っている。
しかしながら、近年、地球温暖化問題、環境問題、若年齢労働者不足、道路混雑等の制約要因が顕在化している。国土交通省においても、平成13年7月に閣議決定された「新総合物流施策大綱」に基づき、有効な解決策の一つとして幹線における貨物輸送をトラックからより効率的な大量輸送機関である鉄道又は海運へ転換する、いわゆるモーダルシフト施策を推進しており、その具体的な方策として鉄道コンテナの輸送力の増強、一貫パレチゼーションの推進等の各種施策を実施し、2010年までに、長距離雑貨輸送分野のモーダルシフト化率(全輸送機関に占める鉄道・内航海運の利用率)を50%に向上させることを目標としている。
九州運輸局では、モーダルシフトのより層の推進と物流効率化に対する社会的要請の高まりに対処していくためには、全ての輸送モードを視野に入れた総合的な取り組みが不可欠であるとの認識の下に、平成7年12月、「九州モーダルシフト推進協議会」を発足させ、下部組織として、鉄道、海運の輸送モード毎に部会を設置し、輸送モードの特性に応じた、専門的な検討を行っている。
また、平成10年度から各部会においてはワーキンググループを発足させ、より具体的な検討を行っている。
注1. モーダルシフト対象貨物とは産業基盤物資以外の雑貨貨物で、輸送距離が500km以上におよぶもので、九州では阪神以遠を対象としている。
(1)総合物流化・3PL化
物流事業においては、陸海空一貫輸送の推進や物流の一括請負のニーズ拡大等により、個別の事業法の範囲を超えた総合物流業への指向が進展しており、利用運送事業者は総合物流業への最短位置に位置する事業者の一つである。また、物流最適化の観点から、従来の物流に加え製品設計や在庫管理、グループ戦略等も含む総合的な企画・提案を顧客に行う3PL事業者が増加し、中核業務以外の外注によるコスト削減と効率化を図る企業も採用を加速している。
近年の情報技術(IT)の急激な進歩により、全産業でITを利用した商品の革新と事業活動の効率化が進み、事業者レベルと産業レベルでの対応が急務となっている。特に利用運送事業は固定投資の必要性が少なくIT活用による新サービスと事業活動の効率化の余地は大きい。一方、荷主や実運送事業者の検索コスト低下から、単なる中継ではなく情報化に対応した高付加価値サービスヘの需要が増加している。
経済社会のグローバル化に伴い外国企業との取引や日本企業の海外進出が急激に進展した結果、物流の分野においても国際化が急速に進展している。特に利用運送事業は、内外一貫輸送のニーズ・拡大や海外物流事業者の利用機会増大等市場の拡大に加え、荷主や実事業者の検索コスト低下から、単なる中継ではなく国際化に対応した高付加価値サービスヘの需要が増加している。
国土交通省においては、前述の新しい潮流に対し、第一種利用運送事業の参入を登録制に緩和し最低限の要件のみ審査し、かつ利用モードや事業者等の選択については最小限の確認に留める規制緩和を進めることとなっている。また、情報化への対応としては、業界標準化支援、行政情報や申請の電子化による情報化インセンティブの付与、制約要因の改廃等を図ることとし、国際化への対応としては、各種制度等の共通化、平準化推進や、途上国等の市場開放や制度合理化への協力、制度や市場に関する官民の情報交換等を支援して行くこととなっている。
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