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(2)北部九州の航空需要に対応する機能分担
 北部九州における航空需要は、今後、福岡都市圏を核として増大することが予想されているが、現在の需要に一極集中化して対応している福岡空港は、年間の離着陸回数が14万回を超えており、処理能力からみて限界と言われている。
 長崎県としては、今後、増大が予想されているこの航空需要に対処するためには、北部九州三県における四空港(長崎、福岡、新北九州、佐賀)が機能分担をしていくことが最も合理的かつ効率的であると考えている。
 長崎空港は、前述のとおり、大型航空機の離発着に有利な3000mの滑走路を有していることに加え、騒音問題や気象障害が少ない信頼性と安全性に優れた、24時間運用の可能性を持った海上空港である。
 また、高速道路へのアクセスも10分足らずと好条件に位置すると共に、国際定期路線があることからCIQ機関の体制も整っており、特別にインフラ整備をすることなく、福岡空港の補完空港としての役割を果たすことが可能である。
 本県としては、中国、韓国を含めた東アジア地域との交流の歴史と豊富な観光資源を活かしながら、現在の国際定期路線の増便や機材の大型化の実現を要望していくと共に、九州・西中国・四国を周遊エリアとした広域観光ルートの構築による地域間連携の強化を図り、長崎空港を起点又は終点とした定期旅客航空路線の誘致を推進する。
 
 このような観光を機軸とした形で、アジア地域を中心とした諸外国と西日本地域との交流拡大、活性化が実現できれば、九州全体の経済と産業振興に貢献できるものと考えられる。
 
(3)離島航空路対策
◆県内の離島及び離島航空路線の状況
 離島の中には、「壱岐島」、「対馬」、「五島列島」の3つの大型離島があり、この3島で長崎県の離島の人口の約9割を占めている。
 このように多くの離島を抱える本県において、離島航空路線は住民の生活の足であり、地域の振興に必要不可欠な交通手段でもある。
 これら県内の離島には、五島列島に福江空港、上五島空港、小値賀空港、壱岐に壱岐空港、対馬に対馬空港がそれぞれ整備され、各空港から長崎及び福岡を結ぶ航空路線が運航しており、本県離島航空路線は、現在12路線25往復である。
 これらの路線を、エアーニッポンのB737及びオリエンタルエアブリッジのアイランダーとダッシュエイトが運航している。
 
◆県内の離島航空路線維持の取り組み
 平成10年度頃から、国内航空分野における需給調整規制の廃止の動きに伴い、その動きを先取りする形で航空会社における不採算路線からの撤退の動きが、本県においても始まった。
 具体的には、平成10年9月に対馬〜関空線が休止。同じく平成10年12月に福江〜関空線が廃止され、その後夏季のみの運航となった。更に平成11年2月に壱岐〜福岡線が廃止された。
 
北部九州における主要空港位置図
(拡大画面:98KB)
 
 一方、9人乗りの小型機のみの運航を行っていたオリエンタルエアブリッジの路線についても、小型機のため天候による欠航が多いこと、運航距離が短く需要規模も小さいため経営効率が悪いこと、海上交通が発達したこと等により路線の維持が困難な状況にあった。
 このような状況の中、県においても、離島における航空路線の維持・存続を図るための何らかの手段を講じることが必要な状況となり、平成10年9月に「長崎県離島航空路線存続協議会」が立ち上がった。
 これは、離島航空路線に関する情報の公開や規制緩和に対応した路線存続方策を検討することを目的として、県、エアーニッポン、離島航空路線に関する市や町、金融機関や商工団体、航空団体のほか、ガス事業や建設業の地業種の経営者も含む民間経済団体をメンバーとする協議会で、全国でも初めての試みであった。
 この協議会においては、離島航空路線の存続方策について論議が重ねられ、県に対し答申がなされた。これを受け、県として平成11年7月に離島航空路線の存続方策を決定した。
 県の存続方策の基本的な考え方は、オリエンタルエアブリッジを経営健全化した上で、需要に適合した中型機を2機導入し、路線展開を図るというもの。また、黒字化が困難なアイランダーで運航せざるを得ない路線については、徹底した合理化をした上で、なお生じる運航赤字を一定のルールの下100%補填することとした。
 この方針に則り、オリエンタルエアブリッジが中型機ダッシュエイト(39人乗り)を2機購入し、平成13年7月より、壱岐〜長崎、壱岐〜福岡、及び長崎〜鹿児島路線を就航し、更に平成14年4月より長崎〜福江、福江〜伊丹路線の就航を開始した。
 今後の離島航空路線対策は、この中型機事業を中核として、安定的な維持を図っていくこととなる。
 
(3)海上交通について
(1)港湾の概況
 長崎県には、重要港湾5港、地方港湾78港があり、重要港湾である佐世保を除き、すべて長崎県が港湾管理者である。
 このほかに56条港湾(港湾区域の定めのない港湾で、予定する港湾区域を公告されている港湾)25港がある。
 
(2)旅客輸送
 本県の一般旅客定期航路の内訳は、平成14年4月現在で
・県本土と離島(準離島及び過疎地を含む)及び離島間を結ぶ航路が33航路
 (内、国庫補助航路指定は23航路、県単独補助航路4航路)
・長崎空港への航路が3航路
・長崎港内を結ぶ航路が1航路、周遊が1航路
・大村湾内を結ぶ航路が3航路、周遊が2航路
・九十九島周遊が1航路
・福岡県と長崎県の離島を結ぶ航路が3航路(内、国庫補助航路指定は2航路)
・佐賀県と長崎県の離島を結ぶ航路が3航路(内、県単独補助航路1航路)
・長崎県と熊本県を結ぶ航路が7航路
・長崎県と鹿児島県を結ぶ航路が1航路
の58航路となっている。
 平成13年度の実績は、航路全体(一部新規参入業者については未集計)で輸送人員が約8401千人、自動車航送台数が約1295千台である。
 離島にあっては、過疎化や少子化の進行に伴い、旅客数・自動車航送台数共に横ばいか減少傾向にある。
 しかしながら、離島航路は生活航路として重要な公共交通機関であり、その維持は長崎県の最重要課題のひとつであると認識している。
 このような状況の中で、島の人々の長年の念願である高速化については、
・平成2年4月
 五島〜長崎航路にジェットフォイルが就航
・平成3年4月
 壱岐〜博多航路にジェットフォイルが就航
・平成3年12月
 対馬〜博多航路にジェットフォイルが就航
・平成5年4月
 上五島〜佐世保航路に高速船が就航
・平成9年3月
 五島〜長崎航路に2隻目のジェットフォイルが就航
・平成10年1月
 鯛之浦〜長崎航路に高速船が就航
・平成12年4月
 対馬〜壱岐〜博多航路に2隻目のジェットフォイルが就航
・平成13年11月
 厳原から比田勝ヘジェットフォイルを延長
など、年々航路改善が図られ利便性が向上している。
 
航路輸送人員・自動車航送台数の推移
(単位:人、台)
  H9 H10 H11 H12 H13
輸送人員
内、補助航路
9,864,185
2,979,680
10,116,134
3,137,061
9,161,506
2,718,203
8,428,387
2,628,207
8,401,387
2,629,997
自動車航送台数
内、補助航路
1,665,114
178,263
1,694,579
175,628
1,548,561
179,221
1,264,626
169,155
1,295,084
172,070
 
 平成12年10月に改正海上運送法が施行され規制緩和が実施されたが、平成14年5月14日、全国で初めて、補助航路への新規参入が本県の有川〜佐世保航路においてなされた。
 今後、民間事業者間によるサービス向上など、利用者の利便性の向上が図られるものと期待している。
 また、本県の対馬においては、韓国の海運業者である(株)大亜高速海運により、平成11年7月から厳原〜釜山間で、平成13年4月からは比田勝〜釜山間でそれぞれ国際航路の運航がなされ、年間約2万人の利用があっている。
 さらに、本年7月には、厳原町に韓国資本((株)大亜高速海運の子会社)によるホテルがオープンする予定であり、今後、韓国との交流を通して地域振興の発展が期待される。







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