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2003/05/03 産経新聞朝刊
【主張】戦闘終結宣言 テロとの戦いにも決着を
 
 ブッシュ米大統領はイラク戦争の主要な戦闘が終結したことを宣言し、イラク復興に本格着手する姿勢を示した。しかし、米中枢同時テロをきっかけとした「テロとの戦い」は、なお継続するとの表明に力点があったことに注目したい。すでに、パレスチナ和平から北朝鮮の核開発問題にいたる新たな挑戦が始まっている。
 イラク戦争の戦闘終結は、フセイン政権が一九九〇年八月のクウェート侵略から始まった湾岸戦争に決着をつける意味があった。フセイン政権がその後も、計十七にのぼる国連安保理決議を無視してきたことを考えると、対イラク戦の終結は長い「十二年戦争」の終わりでもある。
 しかし、ブッシュ演説はイラク戦争に対する「勝利」という言葉を慎重に使った。大統領はこの戦争が「テロに対する一つの勝利」なのであって、「最終的な勝利の日は分からない」と述べた。反テロ戦に関しては、長期戦を覚悟していることを改めて米国民に表明したといえる。
 米英軍はバグダッドへの迅速な攻略によってイラク軍を圧倒し、反米論者が揶揄(やゆ)した「泥沼の戦争」という予測を跳ね返した。しかも、精密誘導兵器を多用して民間の被害を少なくし、短期間の終結で世界経済への悪影響を最小限に封じたのは鮮やかだった。
 しかし、宗派と民族が入り組んだイラクの再建は容易な道ではない。イラク反体制派の主導権争いやクルド族の扱いを誤ると、イラク国内の内戦を誘発しかねない。逆に、イラクの復興人道支援を軌道に乗せ、民主化に成功させれば、バグダッド経由でパレスチナ和平へ道を開くことができる。
 米国がパレスチナ紛争の解決を目指す和平への行程表をイスラエルとパレスチナ自治政府に提示したのは、そうした外交戦略の延長線上にある。自治政府の新内閣を率いるアッバス新首相が誕生し、イスラム過激派組織によるテロとの対決姿勢を明確にしたことは、歓迎すべき兆候である。
 米国は北朝鮮の核開発問題とも対峙(たいじ)している。北は一方的に危機状況を作り出し、それを取り下げる代わりに見返りを求める見下げた独裁政権である。米国と国際社会のテロとテロ国家に対する戦いは、なお終わらない。
 
 
 
 
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