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2003/04/04 産経新聞朝刊
【主張】イラク戦争 やはり軸足変えた仏外交
 
 米英によるイラク攻撃に最後まで反対したフランスが、ここへきて軸足を少しずつ移しつつあるように見える。徐々に米英寄りになってきたようなのだ。イラク戦争後をにらんだフランス外交のしたたかさと感心する思いだが、どこか釈然としないものも残る。
 フランスは湾岸戦争のときは、イラクへの武力行使にずっと反対しながら最後には賛成に回り、多国籍軍に参加して大いに存在感を残した。だから、こんども最後の最後には米英側につくと多くの人が読んでいた。
 しかし、そうはならなかった。その間の理由については、超大国・米国への対抗心、国内に多いアラブ圏出身者の存在、イラクでの利権がらみなど多くの指摘がなされたが、結果的に米欧同盟や国連安保理の歴史的分裂をもたらした。
 ところがである。ブッシュ米大統領が先月、イラクへの「最後通告」を発した日に、フランスのレビット駐米大使が、「イラクが生物・化学兵器を使用したら、フランスは態度を変えるだろう」と言いだした。そして、こんどは、ドビルパン外相が一日夜の国内民放テレビで、「(フランスは)この戦争ではわれわれの同盟国、米英側にある」と述べたというのだ。
 もちろん、フランスは、シラク大統領がこれまでも「フランスは反米でも平和主義でもない」と繰り返し、イラクへの武力行使そのものに反対なのではなく、時期、方法が異なるのだとの立場を主張していた。
 だから戦争が始まった以上、「同盟国」の側につくのは当然というのだろうが、フランスのおかげで開戦時期が遅れ、いま四〇度を超す灼熱(しゃくねつ)の砂漠で困難な戦争を強いられているという思いがある米英側のフランスへのわだかまりは簡単には消えまい。
 「国際社会では永遠の敵も永遠の友もいない」とよく言われ、国益に立脚したしたたかな外交は大いに学ぶべきだろう。だが、それにしても、「武士に二言はない」という価値観に親しむ日本にあっては、今回のフランスの動きは、その名高いファッションほどには美しく見えない。フランスの姿勢を歓迎した「反戦・平和・反米」陣営も「欧州情勢は複雑怪奇」と思っていることだろう。
 
 
 
 
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