イラク戦争は、緒戦のイラク首脳部を狙った限定的攻撃から、予定された全面的攻撃へと移行し、地上戦も始まった。小泉純一郎首相は、ブッシュ米大統領の開戦宣言直後に記者会見し、米国によるイラクへの武力行使を「理解し支持する」と表明した。日本の国益の観点から下した−という首相の決断を支持すると同時に、米英軍がすみやかに戦略目的を達成することを望む。
抑止力が効かない独裁国家の生物・化学兵器とそれを運搬するミサイルの存在は、人類がこれまで経験したことのない脅威であり、その脅威の深刻さは日本国民も二十人以上が犠牲となった米中枢同時テロで予見させられた。その脅威に対し、何もしないことは国として重大な不作為責任を問われることになる。
小泉首相は、「米国は『日本への攻撃は米国への攻撃とみなす』とはっきり言っているただ一つの国だ」とも言った。他のどの国も、そのように言う国はない。日米同盟が直接的脅威に直面する日本にとって死活的重要性をもつゆえんである。
日本政府がイラク問題の平和的解決のために、アラブ諸国への働きかけなど努力を重ねてきたことは認めるべきだ。戦争の悲惨さはもとより、経済への影響などを考慮すれば、武力解決は可能なら避けたいという気持ちは、小泉首相にも強かったはずだ。
首相に助言する立場の岡本行夫・内閣官房参与は、一月二十四日付の本紙「正論」欄で「米国はイラクを武力攻撃すべきでない」と主張したが、二十日付の『小泉内閣メールマガジン第87号』では、小泉首相の信念と決断に「感銘を受けた」として支持する考えを示しつつ、「みんなが悩んだ」末の選択だったと述懐している。
首相も言うように、同盟関係は何よりも信頼関係が重要だ。日本政府の決然とした対米支持が米政府、国民の対日信頼を急増させている。米英では議会でも世論調査でも政府支持が高まっている。信頼関係を一層高めるために日本は米英の真の多数派と歩調を合わせていくときである。
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