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2003/02/21 産経新聞朝刊
【産経抄】
 
 「しかし、だからといって・・・」というのが、いま日本のマスコミ(とくに多くの新聞)論調の決まり文句になっている。まやかしでへっぴり腰で偽善の常套(じょうとう)句といっていい。もっといえば右顧左眄(うこさべん)用語であり、世論迎合言葉なのである
 ▼たとえば、イラクは大量破壊兵器を隠している疑いがあり、国連査察の目をくらませているふしが強いことは認めている。イラクに非があることを認めていながら、「しかし、だからといって」武力行使をしたり、軍事行動を起こしたりしてよいとはならぬ、というふうに論旨を進める
 ▼またたとえば、北朝鮮が核武装を構想し、北東アジアが重大な事態になっていることは認める。それでいながら「しかし、だからといって」性急な対応は好ましくない、話し合いを進めよというぐあいに議論を落としていく
 ▼そういう新聞はイラクへの制裁や懲罰にわざわざ「イラク戦争」という詐術的表現を用いる。戦争とくれば、けんか両成敗やどっちもどっちという印象を与え、反戦運動が誘導されていく。反戦とくれば、だれもが反対しにくい。反戦デモが起これば待ってましたとばかり大々的に報道するのである
 ▼しかし東西冷戦の谷間で起きた八〇年代の反戦・反核運動の多くは、ソ連が画策した反米運動だったことは常識ではないか。進歩的文化人が総動員され、マスコミは謀略にまんまと乗せられた。その苦い教訓が全く生かされていないのはどうしたわけだろう
 ▼マスコミは世論につれ、世論はマスコミにつれで二人三脚のように合唱し、“反戦の波、地球を回る”などとはしゃいでいる。二人の独裁者がにんまりほくそ笑んでいるのに気がつかない。あるいは気がつかないふりをしているのである。
 
 
 
 
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