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2003/01/30 産経新聞朝刊
【主張】米一般教書 支持できる決意と冷静さ
 
 ブッシュ米大統領の一般教書演説は、国内経済の足元を固めながらイラクをたたく決意と周到な配慮に満ちていた。特に、敵の邪悪な政権には容赦せず、自由を志向するその国民には支持を表明するという妥当な内容だった。
 ブッシュ政権と米国民が置かれている緊迫した精神状況は、米中枢同時テロ以来、少しも変わっていない。米本土がテロの標的になり、抑止力の効かない敵対国が大量破壊兵器で脅しをかけてくれば、政府には国民の生命と財産を守る義務が出てくる。
 従って、同時テロを受けた前回の一般教書で大統領は、イラク、イラン、北朝鮮を「悪の枢軸」と定義して、テロを支援する敵の姿を国民に明示した。しかし今回は一転して、国内の経済不安やフランス、ロシア、中国の攻撃慎重論に配慮して、政治レトリックを慎重に排除しながら「なぜいまイラク攻撃か」の説明に力点をおいた。
 政治目標はあくまで、米国と文明社会の脅威となる独裁者サダム・フセイン大統領の打倒であり、倒すためには内外の反対因子を取り除かなくてはならないとの判断からであろう。
 大統領はまず、父親のブッシュ元大統領が湾岸戦争に勝利しながら経済の低迷に足をすくわれた経験を踏まえ、先に発表した総合経済対策に詳細に言及して「戦争傾斜」批判をかわしている。対外政策についても、「星条旗が力や国益以上のものを意味している」として、人間の尊厳のためにアフリカでのエイズ対策など米国人ボランティアの奉仕を期待し、ブッシュ政権が発足した際に掲げた「思いやりのある保守主義」を再現していた。
 その上で演説は、情報機関の現地情報や通信傍受によりフセイン政権がテロリストをかくまい、兵器開発を手助けしているとし、対イラク戦争の「攻撃正当化の根拠が希薄」との疑問にこたえようと試みた。「なぜいまか」の説明が十分でなくとも、その第一弾として姿勢は評価できる。
 この演説で大統領は、米国民は他者の自由のために「犠牲を払う」と述べ、唯一の超大国としての責務を明確にした。演説は北朝鮮に対しても、秘密の核開発計画で「世界をだました」と厳しく非難しており、北朝鮮は心して耳を傾けるべきである。
 
 
 
 
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