2003/04/09 読売新聞朝刊
[社説]米英首脳会談 “フセイン後”の復興準備が始まった
イラク戦争の開始から三週間足らずで、米軍はバグダッドの大統領宮殿を制圧し、英軍も南部のバスラを攻略した。
局地的戦闘は続いているが、米英軍の勝利は、ほぼ間違いないだろう。フセイン政権の命運も尽きかけているように見える。
だが、これで終わり、ではない。フセイン政権後のイラクで、平和を構築するという重要な課題が控えている。
戦後の青写真をどう描くか。それがイラクの将来を決定する。戦争を主導した米英はギアを入れ替えて、イラクの安定へ全力を挙げるべきだ。
ブッシュ米大統領とブレア英首相は、英国で会談し、暫定行政機構を早急に発足させる方針を打ち出した。
米英の構想では、イラク人で構成する暫定行政機構は、米英などが派遣する専門家の協力を得ながら、各省庁を指導して行政を担う。約半年後には、イラク人の暫定政権を樹立し、その政権のもとで本格政権誕生への準備を進める。
この間、米英軍は、治安の回復・維持や大量破壊兵器の探索に努める。
両首脳は国連を重視する立場を表明したが、国連の役割は、まだ不透明だ。
米国は、暫定行政機構の発足はイラク戦争に参戦した米英主導で進め、国連の役割は、人道的支援など補助的なものに限定したい考えだ。
武力行使容認の国連決議案に反対した仏露独を戦後処理に介入させたくない、との意図があるのは明らかだ。
これに対し英国は、タリバン政権崩壊後のアフガニスタン復興にならい、国連の役割をより重視する立場だ。国際社会の広範な支持によって暫定行政機構の正統性も確保でき、イラク国民の協力も得られると見る。国連の役割強化を求める欧州諸国への配慮もある。
暫定行政機構で失敗すれば、イラクの安定はおぼつかない。亡命者グループや国内諸勢力の代表をどこまで取り込めるか。イラク国民から支持される政治行政組織を早期に確立する、という観点から暫定行政機構を準備していくべきだ。
米英首脳は、新たな国連決議によって復興支援、領土保全を図る、とした開戦前の方針を再確認した。新決議の行方も安保理の亀裂がどこまで修復されるかにかかっている。
日本も復興支援に協力すべきだ。与野党内には、安保理決議がなければ、自衛隊参加のための新法は難しい、との声もある。しかし、機能不全が指摘される国連の決議がなくとも、復興支援に参加できる道を開くべきである。早急に検討に着手しなければならない。
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