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2003/03/24 読売新聞朝刊
[社説]イラク戦争 「国際テロ」への警戒を怠るな
 
 フセイン大統領は「戦争は世界中の空、陸、海に拡大するだろう」と米国をけん制した。
 脅しを真に受ける必要はないが、戦争を機に、イスラム過激派などによる報復テロの危険が高まったことは否定できない。
 小泉首相は、同盟国である米国への支持を繰り返し表明している。国内には米軍基地もある。
 米国の目がイラクに集中しているスキを突いて、北朝鮮が挑発テロ行動に出る可能性も無視できない。
 日本はテロとは無縁、などと甘い考えでいると、かえって狙われかねない。イラク戦争に便乗した国内の過激派などの動向を含め、十分な警戒が必要だ。
 政府は、全閣僚による「イラク問題対策本部」を設置し、緊急に取り組む対応策を決定した。
 警戒警備の具体策では、出入国管理の強化や生物・化学兵器対策、ハイジャック防止策の徹底などが盛り込まれた。
 国際テロ組織につけこまれないためには、まず第一に、水際で入国を防がなければならない。法務省は、偽造旅券を見分ける最新の鑑識機導入などにより、入国審査を一段と強化する方針だ。
 そうした措置と併せて、重要なことはテロの動向を事前につかみ、被害を未然に防ぐことである。情報の収集・分析が危機管理の基本だ。
 この点で日本はまだまだ不十分だ。とくに国際テロ組織に関する情報収集は、極めて心もとない。情報収集態勢を強化すると同時に、米国など各国の情報機関との連携を強める必要がある。
 日本に「スパイ防止法」がないことが外国から情報提供を受ける際の障害になっている、との指摘もある。そうであれば、その種の法制の検討も必要だ。
 漏洩(ろうえい)を恐れて情報を他省庁に伝えないといったセクショナリズムの弊害も、かねて指摘されている。警察、防衛など関係機関は一層、緊密に連携すべきだ。
 一昨年の米同時テロのあと、米国はもとより英仏独など主要国は、テロ防止に関する新たな法制を整備した。しかし、日本は、そうした措置をとってこなかった。人権侵害などと批判されることを政府が懸念したためだ。
 もちろん不当な人権制約は認められない。だが、必要な法制を先送りしては、国民の安全は守れない。
 東京ディズニーランドや大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは、入場者の手荷物検査を始めた。テロ対策が強まれば、多少、窮屈になるが、受け入れざるを得まい。テロから社会を守るのは国民一人ひとりの責務でもある。
 
 
 
 
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