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2003/03/23 読売新聞朝刊
[社説]EU首脳会議 いまだ見えない亀裂克服の芽
 
 予想通りと言うべきか、深刻な亀裂の修復に手をつけるどころではなかったようだ。欧州連合(EU)首脳会議の声明は、EUが置かれた苦境を如実に物語る。
 首脳たちは、イラク戦争の是非をめぐる論議に踏み込むことをせず、声明でもその評価を避けた。
 戦争に参加しているイギリスや、攻撃を支持するスペインなどと、これに反対するフランス、ドイツとの間の不一致をこれ以上増幅させたくない、との意識が働いたためだ。
 各国首脳は、対イラク人道支援にEUが積極的にかかわることで合意するなど、各国に異論のない、最低限のテーマに絞って論議を進めた。「一つの声」で語るという、EUの共通外交・安保政策の確立がいかに難しいかが、改めて確認された、と言っていい。
 会議は、EUの牽引(けんいん)役を自任する独仏両国にとって、対イラク戦をめぐって生じたもう一つの亀裂である対米関係改善を目指す場でもあった。
 声明は、「戦略的に重要な関係を強化する必要がある」と、修復への意欲を示したが、単なるお題目に過ぎないと見られても仕方がない。国連安保理で噴き出した、米と独仏の離反には、何ら改善の兆しも見られなかった。
 イラク戦争の行方は依然予断を許さない。しかし、戦後復興支援に関しては、国際社会が一体となった、速やかな協力が必要であることは明白だ。双方は、一刻も早く亀裂を克服し、協調の道を探るべきだろう。
 EU首脳会議は、戦後処理をにらみ、国連が中心的役割を果たすべきだ、という点でも一致した。
 しかし、だれが復興を主導するのか、という問題をめぐって、各国の思惑にはずれがある。
 ブレア英首相は、国連安保理決議を採択した上で国際統治にあたる、と提案した。これに対し、シラク仏大統領は「米英による統治を容認し、戦争を正当化することになる」と述べ、あくまで国連が主導権を握るべきだとして、反対の意向を表明した。
 米国には、戦後復興の核として、イラク戦争における「有志国連合」を据えたい、との考えもあるとされる。
 このままでは、イラク復興を前に、国際社会の足並みがそろわないことになりかねない。
 日米欧という、重要な役割を担わなければならないどの極が欠けても、復興は不完全で、長引くことになるだろう。その愚は避けなければならない。
 
 
 
 
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