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2002/11/09 読売新聞朝刊
対イラク決議、安保理全会一致で採択 7日以内受諾迫る 米武力行使に道
 
 【ニューヨーク8日=勝田誠】国連安全保障理事会は八日午前十時(日本時間九日午前零時)過ぎから公式協議を開き、イラクに大量破壊兵器査察を全面的に受け入れるよう迫る決議案を賛成十五の全会一致で採択した。採択された決議は、イラクに対する四年ぶりの国連査察を来月下旬までに再開することを明記したほか、イラク側に非協力的な姿勢が認められたときは、「さらなる重大な違反」と位置づけ、安保理に対応を求めており、結果的に米国による武力行使に道を開く内容だ。採択を受けてブッシュ米大統領はホワイトハウスで演説し、「これは国連がイラクに課す最後のテストだ」とした上で、「イラクは最も深刻な結果に向き合うことになる」と最後通牒(つうちょう)を突きつけた。<決議全文11面、関連記事2・3・4・6・7・9面>
 採択された「決議1441」は国連査察再開の道筋を規定。<1>イラクは三十日以内にすべての大量破壊兵器の開発計画を申告<2>国連査察団は四十五日以内に活動再開、その六十日後に安保理に報告<3>安保理は報告を受けて必要な措置を検討する――など具体的な日程を定め、七日以内の受諾を迫っている。
 また、イラクが妨害行為や非協力的な姿勢を見せた場合は、これが「さらなる重大な違反」に相当すると明記しており、米国はこれだけで武力行使の根拠となるとの立場だ。
 決議では、フランスの主張を取り入れて、安保理の役割強化が盛られ、イラク側に違反があった場合は、いったん安保理で協議することになっている。ただしこの時点で武力行使が可能か否かは、解釈に幅を持たせている。ブッシュ大統領はこの日の演説で、「イラク政権が全面的に協力しなければ武装解除はできない」と強調。安保理が懲罰的行動を速やかに決められない場合には、米国は独自判断で攻撃に踏み切る構え。対イラク戦争への準備は一段と加速しよう。
 アナン国連事務総長は決議案採択後、「イラクが国際社会の強いシグナルとして受け取ることを望む」と述べ、イラクに全面的な査察協力を促した。
 採決をめぐっては、慎重姿勢を続けてきたフランスが、七日の非公式協議で、決議案に安保理の役割が明記されたことを評価して賛成に転換。フランスと共同歩調だったロシア、さらに中国も支持に回った。
 直前まで棄権が予想されたアラブ最強硬派のシリアも賛成に転じ、国際社会のイラク包囲網が築かれた。
 
<対イラク安保理決議の骨子>
一、 イラクは安保理決議への「重大な違反」を続けている
一、 イラクに武装解除の義務を遂行する「最後の機会」を与える
一、 イラクは決議採択から三十日以内にすべての大量破壊兵器の開発計画を申告する
一、 申告に虚偽、遺漏があれば、また、イラクが決議履行を拒否すれば「さらなる重大な違反」として安保理に報告する
一、 国連査察団は決議採択後四十五日以内に活動を再開、その六十日後に安保理に報告する
一、 イラクは決議採択から七日以内に決議の完全履行意思を確認する
一、 イラクの義務不履行の報告を受けた場合、安保理は即座に協議、関連全決議の完全履行の必要性を検討する
 
写真=8日開かれた国連安保理で対イラク決議案に賛成する米英両国連大使(ニューヨークの国連本部で)=今利幸撮影
 
 
 
 
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