発刊にあたって
本書は、本協会が日本財団から助成を受けて平成12年度から3年にわたり取り組んできた、SST事業の総まとめにあたるものである。
現在101の更生保護施設のうち、約4割がSSTをすでに実施、あるいは実施準備にとりかかっている。平成14年に行われた更生保護事業法等の一部改正を受けて、更生保護の措置に関する規則も改正されたが、同規則の運用通達で、更生保護施設の補導について、自立及び協調の精神を会得させ、社会生活上必要な態度、習慣及び能力を養わせるための指導を行うための方法として、SSTが例示されたこととも相俟って、今やSSTは更生保護施設において重要な処遇技法の一つとなっているといえる。
しかし、これだけ積極的に実施されているSSTだが、更生保護施設でSSTを取り上げること自体が初めてであったため、更生保護施設からは「更生保護施設に適する課題とは何か」「更生保護施設のためのテキストが欲しい」との声が聞かれていた。今回、こうした声を反映し、本テキストを作成するに至ったのだが、さらにSSTに対する困っていることや疑問点などを更生保護施設職員にアンケート調査することによって、より更生保護施設の処遇の実態に即した形となるよう配慮した。これからの更生保護施設の処遇において、ぜひ本書を参考にしていただきたい。
最後に、ルーテル学院大学大学院の前田ケイ教授におかれては、これまでにもビデオ作成や研修講師など、数々の場面で更生保護施設のSSTに御指導いただいてきたところであるが、本書の執筆に当たっても全面的な御協力をいただいた。ここで改めて感謝の意を表したい。
平成15年3月
更生保護法人 日本更生保護協会
この小冊子はソーシャル・スキルズ・トレーニング(SST)のやり方について説明しています。更生保護の現場で、ご苦労なさっている職員の方々に少しでもお役に立つようにと具体的な資料や教材もたくさん入れてみました。それぞれの施設で、寮生の状態に合わせて教材に工夫を加え、使って頂ければ幸いです。
SSTは対人行動の学習を援助する方法として、多くの先進国で試みられ、実績をあげています。日本でもいま、精神科の専門治療法として全国各地で実施されているばかりでなく、福祉や学校教育の分野にも広がっています。
矯正教育や保護観察の仕事にSSTが本格的に取り入れられるようになってから、まだ10年あまりしかたっていませんが、その間、SSTの研究、実施、普及、研修プログラムの運営など、いろいろな立場で多くの方々が、開拓者として努力されてきました。この小冊子を私がまとめることができたのは、そのような皆様のおかげです。敬和園施設長の高橋和雄氏、北海道地方更生保護委員会の佐々木孝一氏には教材について貴重なご意見を頂きました。特にお礼を申し上げたいと思います。
SSTは一見簡単のようですが、実に奥が深い方法です。みんなで良いSSTをしていくために、ぜひ、この小冊子をお読み下さった方がたのご意見をお待ちしております。
ルーテル学院大学大学院教授
前田 ケイ
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