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3.3 システムのマッチング検討
 3.1節で導出した評価式を用いて計算を行い、システムマッチング時の性能を算出した。
 筒内最高温度Td=1900℃とし、筒内最高圧力はPc=16MPa、20MPa、25MPaとした。図.3.3.1 に計算結果を示す。
 代表性能として、Td=1900℃、Pc=25MPaを選択したときの出力、効率の改善幅他を表.3.3.1 、3.3.2 に示す。ここでの結果は理論検討によるものである。実機目標性能値として各種ロス分を50%考慮し値を設定した。
 
表.3.3.1 計算条件
項目 記号 単位
筒内最高温度 Td 1900
筒内最高圧力 Pc MPa 25.0
回収蒸気の投入量 30.0
 
表.3.3.2 性能目標値
項目 記号 理論検討目論見値 実機目標性能値
効率増大率 α∞fin/α 1.14 1.07
出力増大率 α/α 1.3以上 1.15以上
燃料増加率 1+k’γβ 1.32
噴射水量(対空気比) ms∞/fuel 0.06
噴射水量(対燃料比) ms∞/ma 1.86
単位はいずれも無次元
 
 
 
図.3.3.1 性能計算結果(Pc=25、20、16MPa)
 
3.4 システムの構成品検討
 排熱回収系および高温高圧水噴射弁について検討し主要目の諸元を決めた。本システムの具体的なシステム構成図を図.3.4.1 に示す。
 8000kWクラスのエンジンを対象としたときの、廃熱回収系と水噴射弁の仕様を表.3.4.1 に示す。各部の留意点もあわせてまとめて示す。
 
図3.4.1 システム構成図
 
表.3.4.1 機器の仕様と留意点
  機器仕様 問題点
(1)純水装置 純水装置ユニット:
塩素除去装置
イオン交換塔
再生装置
供給水:市水
(電気伝導度200μS/cm、シリカ20mg/L)
処理水質:JISB8223
流量:3.0m3N/h
・給水の処理レベルをどうするか。
・貫流ボイラのJIS基準でも溶存酸素の処理有り/無しの2種類有り。選択に検討を要する。
(1)ヒドラジンで脱酸素処理(溶存酸素7μg/L)
・ヒドラジンの分解反応のおそれ
(2)酸素濃度0.2ppm程度残す ヒドラジンの注入量の調整必要
・ヒドラジン注入量の制御装置導入が必要
・電気伝導率は更に厳しくなる。
(2)高圧給水ポンプ 形式:プランジャポンプ
最高圧力:30MPa
最大流量:3.0m3N/h
主要部品:SUS304/316 パッキン:ラミロン、布入NBR
スリーブ:BC
・メンテナンス時間5000H以上の長寿命化が必要。
・水質と関係して、磨耗、エロージョンの防止対策要、補助ポンプの必要性
(3)排ガス熱交換器 (1)熱交換器(高温側) 流量:600000kg/h(ガス側) 3000kg/h(水側)
圧力:30MPa
チューブ:SUS316LTBS
フィン:SS400
ヘッダー:SUS316LTPS
フレーム:SS400
・熱交換量の確保
・熱交換器圧損と機関性能(背圧)のとりあい。臨界点近傍における下記現象に要注意。
(1)臨界点直下で腐食が増加する
(2)熱交チューブ内の遷移領域(2相流的挙動?)で腐食発生の危険性が高まる。
→特にこの領域はガス温度(負荷)変化、圧力変動などにより運転中に領域が移動し、複雑な挙動となることが予想されるので充分な注意が必要。 腐食を防止するためには
(1)脱ガスを充分行う。
(2)弱アルカリサイドにpHコントロールする。
(4)噴射弁 針弁まわり:SKH5l、SCM435
噴射ノズル:SUH31
弁座/作動油ケーシング:S25C
・燃焼室冷却系と無駄な熱交換を避ける。
・過大な熱応力を生じさせない構造。
・噴射弁の水蒸気酸化(450℃以上で発生しやすい)、噴口のエロージョン防止→ステライト合金、タングステン炭化物系のサーメット合金など適正材料選定
○その他(配管) 真空断熱方式
配管関連:SUS316LTP
・基本的に熱交換器チューブ内側と同様
・機器配置によっては保温の問題もあり。
○全体に関して   ・安全設計(噴破した場合の吹き出し方向)
・始動、停止、負荷変化時の制御方式を検討
・メンテナンス
 
4. 調査研究の成果
4.1 成果
 出力数MW〜十数MWクラスの舶用内燃機プラントを対象として、「排熱回収エネルギー筒内帰還型内燃機関」のF/Sに取り組んだ。得られた成果を下記にまとめて示す。
(1) システムのモデルを構築し、性能改善幅の評価手法を確立した。
(2) 噴射水が燃焼へ与える物理的効果、及び化学的効果を評価した。
(3) 本研究で対象とするシステムの最高到達性能を明らかにした。
(4) 排熱回収系および水噴射弁の課題を抽出し、実機想定の場合の要目を決めた。
 
4.2 今後の課題
 本研究により、本システムが従来システムに対し、革新的な性能改善が得られること確認した。今後は、性能改善幅を実際のシステムで確認すること、また高温高圧水を利用することの信頼性の検証が課題である。







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