2.新冷媒に対応したヒートポンプ式オールシーズン除湿器の調査研究
昭和ナミレイ(株)
1.目的
先に開発したヒートポンプ式オールシーズン除湿機は、再熱に電気ヒーターを使用せず省エネルギーを重視し、主に、造船ブロック塗装、二重底内塗装、船倉内塗装用に開発されたもので、高温多湿な時期のみならず、冬季のヒーティングによる除湿においても有効な製品として、すでに幅広く使用されている。しかし、上記開発品に使用していたHCFC冷媒はモントリオール議定書で、近年全廃されることが決まった。
このため本調査研究では、取扱が容易で信頼性の高い、新冷媒に対応したヒートポンプ式オールシーズン除湿機の開発を目的に実施する。
2.実施経過
2−1.実施項目
(1)新冷媒の選定調査
HCFC系冷媒に替わる新冷媒を内外の資料をもとに調査・選定する。なお調査選定にあたっては、新冷媒として汎用性のあるHFC系冷媒の中から選定する。
(2)新冷媒用熱交換器の構造検討及び制御機器の選定調査等
選定した新冷媒に最適な熱交換器(蒸発器及び凝縮器)の構造を検討する。また、制御機器(膨張弁、電磁弁等)の調査・選定を行う。
(3)新冷媒HFC系用モデル機の設計等
(1)及び(2)をもとに、新冷媒用モデル機の熱交換器及び全体システムの設計を行う。
(4)HCFC系冷媒用モデル機等の設計
(3)と同仕様(能力及び性能等)で、かつHFC系冷媒での特性を近似させたHCFC系冷媒用モデル機及び全体システムの設計を行う。
(5)HFC系冷媒用モデル機とHCFC系冷媒用モデル機の理論値の比較・解析
(2)及び(4)により、HFC系用モデル機とHCFC系用モデル機の性能比較を行い、(冷媒循環量、冷媒温度、圧力等)関係数値を解析する。
(6)モデル機の試作
(5)の解析結果をもとに、HFC系用モデル機とHCFC系用モデル機を試作する。
(7)モデル機の実機検証
環境試験設備に代わる物とし、昭和ナミレイ(株)本社工場内での運転を行うこととした。運転に当り、最も過酷な運転状況となる冬場の加熱モードでの運転とし、その運転データを収集した。
(8)実機検証結果の分析
実機検証で得られたデータをもとに分析する。また(5)で実施した解析数値とを比較検討し、HFC系用モデル機の設計の妥当性を検証する。
2−2.実施期間
平成14年4月 開始
平成15年1月 終了
2−3.実施場所
昭和ナミレイ株式会杜 本杜工場内
3.実施内容
3−1.冷媒の選定
ヒートポンプ式オールシーズン除湿機試作機にてHCFC冷媒と比較する冷媒を以下の項目を基準として調査・選定した。
1) |
既設のヒートポンプ除湿機で実績のあるHCFC系冷媒と近似した熱的特性であること。 |
2) |
オゾン破壊係数ゼロでフロン規制非該当であり、不燃性、低毒性で化学的、熱的、さらに組成的な安定性を兼ね備えているもの。 |
3) |
汎用性があり、実用化・整備化が見込まれるHFC系冷媒であること |
4) |
既設HCFC−22設備に冷媒を入れ替えるドロップインでの、能力最適化の検証があまりなされていないもの。 |
上記の件を考慮し、今回はHFC系擬似共沸混合冷媒R−404Aを選定した。又、潤滑油はR−404A及びHCFC−22両冷媒に適用できるPOEを採用した。
R−404A、HCFC−22の物質特性を表1、表2に示す。
表1. 冷媒物質特性表
|
R−404A |
HCFC−22 |
成分 |
|
HFC125/143a/134a |
|
混合比率 |
wt% |
44/52/4 |
100 |
分子量 |
|
97.60 |
86.47 |
沸点 |
℃ |
−46.8 |
-40.82 |
臨界温度 |
℃ |
72.0 |
96.15 |
臨界圧力 |
MPa |
3.72 |
4.99 |
臨海密度 |
kg/m3 |
493 |
513 |
飽和液体密度 |
kg/m3 |
1043 |
1191 |
粘度 |
飽和液 |
mPa・s |
0.128 |
0.178 |
|
常圧蒸気 |
mPa・s |
0.0122 |
0.0128 |
比熱 |
飽和液 |
kJ/kg・K |
1.69 |
1.256 |
|
常圧蒸気 |
kJ/kg・K |
0.876 |
0.662 |
蒸発潜熱 |
(沸点) |
kJ/kg |
207.6 |
233.5 |
熱伝導率 |
飽和液 |
W/m・K |
0.0683 |
0.0869 |
|
吊圧蒸気 |
W/m・K |
0.0135 |
0.0113 |
作業環境曝露限界 |
ppm |
1000 |
1000 |
燃焼性※1 |
|
不燃性 |
不燃性 |
オゾン破壊係数 |
CFC11=1 |
0 |
0.055 |
地球温暖化係数※2 |
C02=1 |
3300 |
1700 |
水の飽和溶解度 |
ppm |
700 |
1300 |
|
※1 |
高圧ガス保安法(一般則)ならびにASHRAE34規格に基づく。 |
※2 |
IPCC、1955に基づく積分期間100年値を示す。 |
表2. 理論冷凍サイクル特性
|
R−404A |
HCFC−22 |
蒸発圧力 |
kPa |
204 |
164 |
凝縮圧力 |
kPa |
2044 |
1730 |
温度クライド* |
℃ |
0.3 |
0 |
吐出温度 |
℃ |
83 |
120 |
COP |
|
2.01 |
2.33 |
冷凍能力 |
kJ/m3 |
1009 |
1053 |
|
|
|
|
|
* |
凝縮圧力における露点、沸点温度差 |
|
蒸発温度/凝縮温度=−30℃/45℃ |
|
過熱温度/過冷却温度=30℃/0℃ |
|