日本財団 図書館


3.9 取扱説明ツールの内部仕様
(1)ファイルの種類
 舶用エンジンの取扱説明ツールを構成するファイルは以下のとおりである。
 
表3 ファイル構成
形 式 解 説
DTD XMLの文書構造を定義する定義ファイル
本取扱説明ツールは3つのDTDから構成されている。
(1)diagnosis.dtd(故障探求用DTD)
(2)card.dtd(事例・作業・交換・処置カード用DTD)
(3)parts.dtd(パーツリスト用DTD)
XML XML文書コンテンツ
XSL XML用スタイル
JS Javascriptファイル
HTML フレーム用ファイル
ナビゲーションファイル
CSS HTML用スタイル
XVL 画像ファイル
SVG 画像ファイル
GIF 画像ファイル
JPG 画像ファイル
PDF PDFファイル
BPG MPEGムービーデータ
 
(2)主要ファイルの関連性
図5 主要ファイル間の関連性
 
4 調査研究の成果
 本調査研究で得られた成果の概要を以下に示す。
1)マルチメディア情報コンテンツの拡張
 マルチメディア情報コンテンツについて、平成12年度から静止・動画像の活用は行っているが、現状のネットワーク環境においては、さらに“軽い”コンテンツが求められていた。
 コンテンツのネットワークを介した交換には、視認性の確保と共に、データ容量の低減とデータの作り易さを同時に満たさなくてはいけない。そこで、SVG(2Dデータ)およびXVL(3Dデータ)に着目し、規格開発元の協力も得ながら、それらの有効性の検証を行った。
 具体的には、「概要」に、新潟鐵工の保有するCADデータを基にWeb用に変換したXVLを使用し、舶用エンジンの分解・組み付け・回転による全体像の表現で、訴求効果(情報伝達の正確性、理解スピード等)が向上した。今回に利用したXVLデータはファイルサイズ120KBであり、同レベルの情報伝達効果を他の従来フォーマットに求めた際の1/10程度の“軽さ”が達成できた。
 また、「パーツリスト」のイラストの一部をSVG形式に変更し、イラスト中の部品とリストを関連付ける双方向のホットスポットを作成することで、視認性が向上した。SVG形式の内容はPDFと違ってテキストデータであり、Webとの親和性も高く、ベンダ中立のフォーマットとして有効であった。
2)情報の双方向性、情報共有への対応
 本ツールは、単なる紙マニュアルを電子化するのではなく、船社サイドと舶用メーカ間の情報交換のためのツールとなることを目指している。そのためには、本ツールを介して一方的に常に同じ情報コンテンツの提供を行うのではなく、双方向のコミュニケーションを促すような情報共有の仕組みを持たせることが課題であった。
 本年度は、「異常時の原因と対策」チャートと連携した、図面データ(XVLデータ)表示への誘導の仕組みを取り入れた。互いに取扱説明ツールが表示する同一の図面情報を共有することで、一定のコミュニケーション(コラボレーション)効果が上げられることが確認された。
3)検索機能の拡張
 本ツールの利用者に対する利便性の向上には、検索機能を充実させることが課題であった。既存の「作業カード」、「事例カード」等を対象にして、全文検索機能の追加を行った。
 実装方法として・パブリックドメインの全文検索エンジン「NAMAZU」をベースにXML対応への拡張を施し、全文検索機能が実現できた。これにより、検索性が大いに向上している。
 
5 実用面での今後の検討項目(今後の課題)
 今後検討しなければならない項目を以下に示す。
 
 平成12年度および平成13年度の2ヶ年にわたる本調査研究において、開発に取り組んだ「舶用エンジンの取扱説明ツール」は、予算上の制約があったものの、(1)(概要における)3Dデータ表示、(2)保守点検要領、(3)異常時の原因と対策、(4)パーツリスト、(5)(全文)検索、(6)問合せ、の各機能の実装を行うことができた。
 また、本取扱説明ツールは、舶用エンジンのみならず他の舶用機器に対しても、その考え方(アーキテクチャ等)が広く適用可能なモデルの一つとなり得るものである。
 しかし、依然としてダミーデータが多いなど、コンテンツ等の内容に対する不十分さの指摘も少なくなく、また未実装の機能(機関運転要領、分解組立要領)も残されていることから、本ツールの実運用化を図る上では、より一層の努力が求められている。
 現時点で、今後も引き続き取り組みたいと考える課題は以下のとおりである。
 
1)マルチメディア情報コンテンツの充実化
 現時点の本ツールには多くのダミーデータが含まれているため、実運用化に備えてすべての実データの作成・入力を行う。
 可能な限り、2次元データについてはSVG形式に、3次元データはXVL形式に統一する。
 
2)情報の双方向性(ユーザ情報の識別等)への対応
 本ツールの意図するところは、単なる紙の機器マニュアルをそのままの利用形態で電子化するのではなく、船社サイトと舶用メーカ間の情報交換、しいては高度情報化アフターサービスに繋げるためのツールとなることを目指している。
 そのためには、本ツールを介して一方的に常に同じ情報コンテンツの提供を行うのではなく、そのユーザに適した情報の切り分けや、ユーザからの入力、ユーザカスタマイズを受け付ける双方向性を持つことが不可欠である。引き続き、当該機能についての研究が求められる。
 
3)コンテンツ作成支援機能の追加
 本ツールはユーザ(主として船社サイド)に対して簡易なユーザインタフェースを提供することは当然であるが、一方で舶用メーカサイドについても、情報コンテンツの掲載を簡易にかつ迅速に行える機能をもたせることが必要である。本機能はいわゆる“ビルダー”、“エディタ”的な機能であり、拡張機能として検討を行っていく。
 
以上







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION