高出力/高過給ディーゼル主機関における過渡時のスモーク・操船性改善
ダイハツディーゼル株式会社
1. 調査研究の目的
近年、ディーゼル機関は、高出力/高過給化しており、大容量の過給機が搭載され且つ、高負荷域での機関性能が優先されている。これに伴い、低負荷域での応答性に問題が生じている。特に、クラッチ嵌入及び急激な主機関加速時に過給機の追随の遅れによるスモーク及び操船性に問題が生じている。本調査研究では、主機関と減速機に電子ガバナーによる全電気制御を組み合わせ、電子ガバナーによる全電気主機制御システムの実用化をはかり、主機システム全体として最適に制御する事により本問題の解決を計る。
2. 実施経過
2−1 実施項目
(1). 電子ガバナーによる全電気主機制御システムの開発
電子ガバナーによる全電気制御システムの構想をまとめ、織り込む制御機能を決定しガバナーメーカーに提示し、制御システムソフトを開発する。
(2). 減速機 油圧回路/機器の改造設計・製造
クラッチ嵌入油圧を電気制御可能な、減速機油圧回路に改造する。
又、減速機クラッチスリップ(半クラッチ)仕様改造も合わせて実施する。
(3). 高過給/高出力機関による実証試験
各制御機能の確認、陸上シミュレーション試験装置により、主機関の起動時、加速時、クラッチ嵌入時、及びクラッシュアスタン(危急後進)時の過渡時におけるスモーク及び操船性の実証試験を行う。
さらに、従来の空気式制御方式と全電気制御方式の比較試験を実施する。
2−2 実施期間
開始:平成13年4月1日
終了:平成14年1月31日
2−3 実施場所
ダイハツディーゼル株式会社 本社および 守山第一工場
3. 実施内容
3−1 電子ガバナーによる新主機システムの開発
3−1−1 電子ガバナーによる全電気制御システムの全体構想
主機関の速度制御、及びクラッチ制御を電子ガバナーで制御し、主機全体を最適に制御するというコンセプトにそって織り込む制御機能をまとめ、新主機システムの概要を決定した。
新主機システムの基本構想
(拡大画面:37KB) |
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3−1−2 電子ガバナーによる主機関制御及びクラッチ制御
新主機システムに織り込む機能をまとめ、ガバナーメーカーと協議し、基本仕様決定しソフトを作成した。
新主機システム電子ガバナー機能
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項目 |
機能 |
備考 |
機
関 |
(1)
燃料制御 |
1 |
起動時2段燃料抑制 |
起動時、燃料ラックを2段階で制限(スモーク抑制) |
2 |
加速時燃料抑制 |
アイドル〜定格間5ポイント・2種類(スモーク抑制) |
3 |
クラッチ嵌入時燃料抑制シフトUP |
クラッチ嵌入時燃料増(回転低下防止) |
(2)
速度制御 |
1 |
速度制御機能(PID制御) |
設定速度に速度制御 |
2 |
増速・減速レート設定 |
設定増速レートに従って回転数が変化(スモーク抑制) |
3 |
スローダウン制御 |
スイッチ選択によるプログラム減速 |
4 |
機関回転ブースト UP機能 |
クラッチ嵌入時作動(回転低下防止) |
減
速
機 |
(3)
クラッチ制御 |
1 |
クラッチ嵌入油圧上昇パターン制御 |
最適パターンに設定可能(嵌入ショック減)(回転低下防止) |
2 |
クラッシュAST(危急後進)時油圧上昇パターン制御 |
最適パターンに設定可能(嵌入ショック減)(回転低下防止) |
3 |
スリッピング速度制御(PID制御) |
スリップ(半クラッチ)によるプロペラ回転制御(操船性向上) |
4 |
エンスト防止機能 |
クラッチ嵌入時の回転低下によるエンストの防止 |
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制御機器外観
操縦盤
電子ガバナー 723DC
ハンドヘルドプログラマ(設定値変更用)
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